黄金のニクスティア   作:Alfia2

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第13話 二人の魔核

 ソフィーはニクスに尋ねる。

 

「さて、何用じゃ?」

「ラピスとスティアについて、相談があります。ただ、どこから話したものか――」

「普通に結論から話せばよいじゃろ。そやつらの中にある"魔核"の話じゃろ?」

 

 ニクスの肩がぴくりと揺れる。

 ラピスから「え」という言葉とともにスティアのほうに視線が向けられた。

 ソフィーは不思議そうに首をかしげた。

 

「なんじゃ、お主ら共有はしておらんのか」

 

 ソフィーはスティアの方に視線をやる。

 

「その割にはお主は動じておらんの」

「……私の体を診てもらった時にラピスにも同じものがあるって聞いてたので」

 

 ラピスから呆然とした声が漏れる。

 

「お兄、その人に魔核って本当……?」

「ああ、本当のようだ。ソフィーさんに相談するときに共有しようと思ってたが……」

「そう、なんだ……」

 

 ニクスはソフィーに振り返る。

 

「ただ、即座に切り込まれてるとは思いませんでしたよ。視えたんですよね?」

 

 ソフィーは肩をすくめる。

 スティアが首をかしげ、問いかけてきた。

 

「えっと、視えたって」

「ソフィーさんは魔眼で体内の魔力を視ることができるんだ。医院で魔核の話を聞いたのは覚えてるか?」

 

 スティアはうなずく。

 

「魔核は魔力経路と密接に繋がっているから、魔力の流れでその収束点含めて把握できる――といった話でしたよね。ソフィーさん」

「うむ、記憶力はほめてやろう」

「ちなみにですが、ラピスのほうは」

「どことも繋がっておらぬな。一点だけ、魔力が集積しておるから、そこが魔核の所在じゃの。ちょうど胸より少し下らへんか?」

 

 場所はともかく、医院での診断結果と相違はない。ダメもとでラピスの魔核をどうにかできるか尋ねてみたが、すぐどうこうできる代物ではないという回答だった。

 ニクスは続けて、スティアのことをソフィーに尋ねた。

 

「……因みにスティアの方はどうでしょうか」

「そやつの魔核の位置は右胸あたりじゃな。魔力経路と密接に絡んでいるだけでなく、魔核から太い線が胸のほぼ中央に向かって伸びておる」

「それは……つまり?」

「そやつの魔核は心臓と繋がっておるように見えるということじゃ。ま、位置的な推察じゃが。」

 

 心臓と繋がっている……? 医院では魔力経路と繋がっているまでしか言われなかった。あの時言ってた言葉を思い出す。

 

 ――もう一つの心臓のように。

 

 抽象的な話だけではなく、実質的に心臓の役割を果たしているということなのか?

 

「ここからはわしの推測じゃが。もしかしたら、魔核の魔力で生かされておるのやもしれぬな」

「え……?」

 

 ニクスは驚いて、スティアを見る。当人は目をじっと閉じた後、開けて、手を挙げた。

 

「あの、医院でも兆候はないって話だったんですけど、今私の体の中に魔核があると何か問題があるのでしょうか」

 

 その疑問にソフィーが答える。

 

「魔核とは"魔物"を表す象徴でしかない。問題があるとすれば、体が異形化し、理性を失う点じゃ。しかし――」

 

 ソフィーは口の端をわずかに上げ、スティアを見据えた。

 

「お主が言った通り、兆候がないどころか、完全に制御できているように見える。ま、今のところ、問題らしい問題はないの。今のところはじゃが」

 

 そして、ソフィーが軽く笑う。

 

「ここまで聞いて、態度が変わらんとは……。胆力が凄まじいのか、もしくは常識知らずなのか。ニクス、そやつ何者じゃ?」

「正直、俺もよく分かってないです。ひとまず、昨日のことから話さないと」

「昨日? あー、もしかして、花畑のほうで何かあったか?」

「そっちも知ってるんですね」

「いや、詳しいことは知らん。昨日、外の鳥どもが騒いでおったからな」

 

 あの黒い鳥か。なら、順を追って説明したほうがいいかもしれない。そして、ニクスは昨日の事件についてソフィーに伝えた。

 ソフィーは聞いているうちに口を間の抜けた形に変えていく。

 

「――以上が昨日起こったことです」

 

 ニクスがそう締めくくると、ソフィーが腕を組んだ。

 

「ニクス……お主、いきなり自分が見た夢の話をしてどうした」

 

 クラウスはあきれたように口を開く。

 

主様(あるじさま)……それはいささか空気が読めておりませんよ」

「いや、だって!」

 

 ソフィーは早口でまくしたてた。

 

「花畑で巨大な何かに飲み込まれて知らない場所で目覚め、ラピスが神とやらに乗っ取られ――」

 

 ソフィーがスティアを指さす。

 

「そやつが奥で眠っておって、いきなり襲われて、体の実体がない人影に力を授けられた――」

 

 そして、ソフィーは大仰に仰いだ。

 

「いや、意味が分からん。どう聞いても荒唐無稽じゃろ!」

 

 六天でもそういう反応になるのか。まあ、そうだよな。

 クラウスが口をはさむ。

 

「ふむ。荒唐無稽は主様もな気がしますが。対象を飲み込んで、別の場所へ移すならできそうですし」

「いや、さすがのわしでも……っていうか、今わしを荒唐無稽と馬鹿にしたか? 不敬じゃ! 不敬!」

「馬鹿にはしていませんよ。率直な感想です」

 

 ソフィーは憤慨したように机をたたきだした。

 

「おやめください。主様、机が壊れてしまいます。……さて、ニクス様。(わたくし)からも一点よろしいでしょうか」

「はい、大丈夫です」

「ありがとうございます。ニクス様に力を授けたという人物。何か気になることは言っていましたか?」

 

 ニクスはあごに手を添える。確か――。

 

「"現実を覆す力。人ではない力。これは元々あなたの力"。だったと思います」

「元々あなたの力、ですか。奇妙な言い回しですね」

「イクリプスとやらが体に吸収された点も含めての」

 

 ソフィーはじっとニクスのほうを見る。

 

「お主の体の魔力は変わっておらぬように視えるしな」

「医院でも異常がないと診断を受けました」

「ふむ……ニクス様、他に気になったことは?」

「そういえば、あの時――」

 

 ニクスはあの時の言葉を思い出す。一度だけだったが、脳裏に焼き付いていた言葉が自然と口から出た。

 

「"我が魂よ。黄金になぞらえし、神の力よ"」

 

 ソフィーの眉がぴくりと動いた。

 

「"我は原初に定められし、神の徒。身を滾らせ、巡らせ、今ここに、神授の契りを結ばん"と言ってたと思います」

「お主、それは……」

 

 ソフィーがいつになく、難しい顔をしていた。

 

「主様、何か気になることが?」

 

 ソフィーがニクスに鋭い視線を飛ばしながら尋ねてきた。

 

「ニクス、お主。神授者(ギフテッド)という名に覚えは?」

 

 ()()()? 聞いた覚えは……いや、その言葉、どこかで……?

 言葉を探る前にまるで自分の中の何かが反応するように視界が揺れた。

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