イエローの隣で生きていたい。   作:ずんだ味

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本編
vsドードー 旅のはじまり


 

「ふー、やっとついた。ここだ、マサラタウン!」

 

「⋯ん、まずは聞き込みだな。ピカの絵、ちゃんと描けてるか?」

 

 ここはマサラタウン。

 世界で一番、ポケモンが汚されていない場所。

 そんな汚れなき町に、()()の少年を乗せたドードーが足を踏み入れていた。

 一人は大きな麦藁帽を被った、黄色の前髪が特徴的な少年。

 もう一人は、黒と白の混ざったような灰色の髪を持つ少年(存在しないはずの少年)

 彼らは恩人であるレッド、そして彼の連れているピカを探しに来ていた。

 

「うん!…あっ、お~いキミたちぃ〜〜!」

 

「なに~?」「お兄ちゃんたちだれ〜?」

 

「この子、知らないか?探してるんだ」

 

 そう言って灰色の少年は子供たちにスケッチブックに描かれた絵を見せる。

 そこには、いたづらでんきねずみと印された黄色い体に赤い頬を持ったポケモンが描かれていた。

 

 

 

「ここがオーキド博士の研究所、か」

 

「この中にピカがいるんだね、早く入ろう!」

 

 そう話すと、少年たちは研究所の扉を開ける。

 少し古くなっているのか、扉からはギィィ…と音が鳴っていた。

 

「「こんにちは。」」

 

「……?なんじゃお前たちは!?今は立て込んどるんじゃ。悪いが今は帰って…」

 

 そう言う博士を尻目に、少年たちはキョロキョロと何かを探し続ける。

 しばらくして、目当てのモノを見つけたのか顔を明るくし、麦藁帽の少年が声を上げた。

 

「あーっ、いたぁーっ。ここにいたぁー!」

 

「町の入り口で聞いた通り、だな。」

 

「よかったあ、やっぱりマサラタウンに戻ってきてたんだね!」

 

 少年たちは一つのモンスターボールを乗せた回復装置に駆け寄り、そのままボールの中のポケモン──傷ついたピカチュウを出すと、麦藁帽の少年が大事そうに抱え始めた。

 ……気のせいだろうか。少年とピカチュウの間に光が漏れたかと思えば、傷ついていたはずのピカチュウが癒されているように見える。

 

「な…。お、おおおオイ!お前達は誰じゃ!…やっぱりマサラにって…どういうことじゃ!?」

 

「そんな一度に聞かないでよ。ねぇ!ピカ!」

 

 随分と懐いている。

 今この瞬間まで、オーキドはこのような子がピカチュウ(ピカ)といるのを見たことは無かった。

 だというのになぜ、ここまでピカは懐いているのだろう。

 

「さあ!行こう!」

 

「急に押し掛けてごめんな、爺さん」

 

「おいオイオイオーイ!なんのつもりじゃお前達は!いきなりやってきていきなり出ていって…。事情を説明せんか!事情を!!」

 

 当然の疑問である。

 いくら懐いているらしいとはいえ、オーキド博士からすれば彼らは急にピカを連れ出す泥棒のように見える。

 声を荒げるのも、無理はない。

 

「キミ達はレッドの知り合いか?」

 

「「ハイ」」

 

「レッドが行方不明と知ってきたのか?」

 

「「ハイ」」

 

「レッドは今、どこにいるんじゃ!?」

 

「「わかりません」」

 

「どうしてレッドが行方不明になり、こいつ(ピカ)だけがマサラに戻っていると知ったんじゃ!?」

 

「「それは…言えません」」

 

「なら、二人の名は!?」

 

「「それも…言えません」」

 

 だが宜なるかな。

 オーキドの疑問は全くもって解決しない。

 知れたのは精々、やけに少年たちの息が合っていることくらいだ。

 

「えーい、話にならん!いったい、どういうつもり「博士」…で…」

 

「ボクは、この子を連れてこれから行方不明になったレッドさんを探しに行きます!そのためにここにきたんです」

 

「俺はその付き添いにきました。人手は多い方がいいですし」

 

「バカな!まだレッドに何があったのかも分からないんじゃぞ!それに、そんな軽く危ないことに首を突っ込むなんぞ…」

 

「もし、レッドさんが何者かに捕われているというのなら…!」

 

「捕われれているというのなら!?」

 

「「ボクたちが助ける!(俺たちが助ける!)」」

 

 少年たちはそう勇ましく宣言する。

 その意思は固く、簡単には説得できそうにない。

 だが、オーキドにとってレッドは大切な弟子だ。

 ポケモンリーグで優勝さえ果たしたレッドの行方不明という事態を、何も確かめずに見ず知らずの少年たちに託すなど、できるはずがない。

…ゆえに。

 オーキドはポケットからモンスターボールを取り出した。

 そこから現れるは、ことりポケモン『オニスズメ』。

 

「ポケモンリーグ優勝者のレッドはこの二年間でさらに腕を磨いとった!そのレッドが倒されたんじゃぞ!こいつがどんな状態で帰ってきたか知らんのか?いきなり来たお前達に…何が出来ると言うんじゃ!?オニスズメ、“みだれうち”!」

 

 オニスズメのみだれうちが、少年たちを中心とした円状に放たれる。

 レッドを探しに行くなら、逃げずに力を示せと言わんばかりに。

 

「レッドを探しに行くなど…そんな大役、生半可な実力の者に任せられんぞ。実力があるというのなら、このバトル終わらせてみい!」

 

「イエロー、やれそうか?」

 

「うんっ!わかりました。このバトル、すぐに終わらせてみせます。ドドすけ、“ふきとばし’’!」

 

「“オウムがえし”じゃ!」「さらに“ふきとばし”!」

 

 風と風の応酬。

 トドすけ(ドードー)の放つ風をオニスズメが返し、その上から再度風をぶつける。

 しかし、どうにも力が弱い。風が防御となりダメージは避けられているが…。

 もしレッドであれば、“オウムがえし”を貫く程の攻撃を繰り出していたであろう。

 

「お互いの技が相手まで及んでいない状態…。どうした、押すなり引くなりせんのか?」

 

「……。」

 

「どうにもできない…というのが正直なところじゃろう。どこかでレッドのウワサを聞きつけてあんな嘘をついたんじゃろうが、そんな実力ならやめることじゃ!」

 

「……。ドドすけ!」

 

 少年の指示により 、ドドすけがオニスズメの周囲を回り続ける。

 時速100kmで走るとすら言われた速度に、オニスズメは反応できていない。

 間合いを取っているかと思われたが、ドドすけは攻撃することなくひたすらに回り続けている。

 オニスズメはドドすけを目で追いかけ続けるが…目を回してしまい、地面へと落ちていく。

 

「…!ピカ!」

 

 少年の指令により走り出したピカが落下してくるオニスズメを受け止める。

 …危うく地面に激突するところだったオニスズメだが、怪我は無いようだ。

 

「…お疲れ様。爺さんもこれでいいだろ?」

 

「イ…イヤ!両者とも目を回してしまってるではないか!こんなことで()()が決まったとは言えんぞ、わかって…」

 

「ハイ!約束どおりバトルを()()()()ました!」

 

「な!?」

 

「ふう。ポケモンを傷つけないで良かったあ」

 

 …そういえば。

オニスズメは“オウムがえし”を一度使っただけで攻撃を受けてはいない。

 外傷は、一つもない。

 一方、ドードー(ドドすけ)も“ふきとばし”で防御を同時に行い、これまた傷一つ負っていない。

 数分間のバトルとはいえ、互いに一つの傷も負わぬ戦いをする少年…。

 

「ふむ…。キミの実力は分かった。そっちの…あー、灰色の少年、付き添いだと言うのならキミのポケモンも見せて欲しい。キミも行くつもりなんじゃろう?」

 

「ん、おっけー。おいで、ララ!」

 

 灰色の少年が繰り出したのは…ライチュウ。

 平均的な個体の二倍はある巨体に、体中に残る古傷が目立つ。

 かつてのシンオウの地であれば、『おやぶん』と呼ばれていただろう個体。

 それこそ、ジムリーダーにしてロケット団幹部──マチスのライチュウでも、ここまでではなかっただろう。

 

「ちょっと色々あって、あんま長くは戦えないけど…付き添いには十分だろ?」

 

「なるほど…。少々不安はあるが、大丈夫そう、じゃな。よし。キミ達一緒に来なさい」

 

 

 

 

 

「それは…レッドの図鑑だ。置いていきおった。…わが弟子ながらムチャな奴でな。おそらくかなわぬ相手とわかったのに意地になってしまったんじゃろ」「……」

 

「さっき…。麦わら君はそのピカチュウのことを『ピカ』と呼んだね。わしはキミの前で一度もその愛称(ニックネーム)で呼んどらんのにキミは知っとった」

 

「…ハイ」

 

「キミたちは失礼な少年じゃ。いきなり訪ねてきて名乗りもせん。何か事情を知っている様子なのに話そうともせん。じゃが、レッドの知り合いということが嘘ではないことだけはわかった。何よりもこのピカが主人(おや)でもない人間に心を許し、指令を聞いとった。…キミ達のことを、信じよう」

 

 オーキド博士が笑みを浮かべ、図鑑を少年たちへ渡してくる。

 博士に、認められたのだ。

 

「レッドはあれでしぶとい。まさか死んどることはないじゃろ。この図鑑とピカを奴の所へと届けてやってくれ」

「「…ハイ!」」

 

 

 

 麦藁帽の少年が、そしてそれに続くように灰色の少年が走り出す。

 レッドの図鑑、そしてピカを連れた旅が、始まるのだ。

 オーキド博士は彼らの旅出を見送る。

 その旅が、良きものであることを祈りながら…

 

「さあ行くか!グレイ!ピカ!」

 

「ちょっ!?名前っ、声が大きいって!?」

「……あっ」

 

 

「本当に、大丈夫なのかのう…?」

 

 …祈りながら、見送るのだった!

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