イエローの隣で生きていたい。   作:ずんだ味

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vsトキワの愉快な仲間たち

 

 イエローと別れた翌朝、新たな仲間を探すべく町を去ろうとするグレイ。

 荷物をまとめ町を出る直前の彼だったが、不意に後ろから話しかけられた。

 

「昨日はよく眠れたか?グレイ」

 

「あなたは…タケシさん?もしかして、見送りに来てくれたんですか?」

 

「あぁ、同じレッドを探す仲間だからな。昨日は随分と疲れていたようだったから、念のため様子を見に来たんだ」

 

「それは…わざわざありがとうございます。俺は一度トキワの森に戻るつもりですけど…タケシさんはオツキミ山に行くんでしたよね?」

 

 話しかけていたのはニビシティのジムリーダー、タケシだった。

 グレイのことを心配していてくれたらしく、様子を見に来てくれていた。

 グレイはオツキミ山へ向かうと話していたタケシへトキワの森に戻ることを告げる。

 

 「そのつもりだ…そういえばグレイ、仲間を探すと言っていたが…今は何匹連れているんだ?」

 

「今まではララだけ連れてたんですけど…森に残っているトモダチがやっとやる気を出してくれまして。そろそろ来る頃なんです。」

 

 そうグレイたちが話していると、何もなかったはずの空間にカゲが浮かぶ。

 どうやら待っていたポケモンが到着したようだ。

 そのポケモンは…“テレポート”を使ってきたのだろう『ケーシィ』だった。

 

「なるほど、そのケーシィが送迎役か。」

 

「ハイ。では、もうみんな()()()()()()でしょうし、いってきますね」

 

「あぁ、またどこかで。…ん?集まっている、とは…?」

 

 疑問を呈すタケシだったが、グレイとケーシィは既にトキワの森へ“テレポート”していた。

 “テレポート”による浮遊感が消えたあと、グレイはその目を開ける。

 …そこに写ったのは、『ニドクイン』や『サンドパン』、『マタドガス』を始めとした、本来トキワの森には生息していないはずのポケモンたち。

 彼らはロケット団により森へ持ち込まれたり、森に住んでいる者の中でも戦闘を好んでいるようなポケモンたちだった。

 グレイはメガホンを取り出し、戦闘欲求を隠しきれずにいる彼らへ号令をかける。

 

「あー、あー…さて、今回集まってもらったのは、旅に同行してくれるメンバーを募集するためだ」

 

「ルールはいつも通り、バトルロワイヤル形式。一位とと二位残った者から外の強者との戦場に連れていく。迷い込んだやつはいないよな?…よし」

 

「では…ここに第三回トキワロワイヤルの開始を宣言する!」

 

 

 

 そうグレイが叫んだ直後、参加したポケモンたちが隣にいる他のポケモンへ攻撃を仕掛ける。

 参加するのは初めてなのか直撃を貰いふらついているポケモンもいたが、慣れている様子のポケモンたちは次の相手を探しにいく。

 戦場はあっという間に乱戦となり、立ちのぼる土煙でポケモンたちの姿は見えなくなった。

 

「相変わらず派手にやるなぁ、みんな」

 

(一年振リノ開催ダカラナ。皆待チワビテイタノダロウ)

 

「うわ、珍しいじゃんケーシィさんが喋るの。やけに張り切ってるね」

 

(四天王トノ戦イヲ見セラレテハナ。力ヲ貸スノモ悪クハナイ)

 

 グレイへ“テレパシー”を飛ばす『ケーシィさん』。

 普段は通常の個体よりも長く睡眠をとる彼だったが、どうやら起きている間に超能力でカンナとの戦闘を覗いていたらしい。

 

(そっか、前回より多いと思ってたけど…ケーシィさん、森のみんなに見せて回ってくれたのか)

 

「でも、普段あんなに寝てるのに大丈夫なのか?手伝ってくれるのは嬉しいけど、あまり無理は…」

 

(問題ナイ。但シ、コノ旅ガ終ワルマデダ。…ソノ後ハ寝ル)

 

「…ありがとう、助かるよ。」(ん…?あいつ、どこかで…)

 

 何でもありの乱戦を横に、穏やかな会話を続けるグレイとケーシィさんだったが、グレイはあるポケモンに目をつけたようだった。

 そのポケモンの名前は『ハクリュー』。

 周囲からの攻撃を“しんぴのまもり”で打ち消しながら物理攻撃を主軸に立ち回っている。

 グレイが声をかけるとハクリューたちは戦闘をやめ、こちらへと向き直った。

 

「…思い出した。おまえ、二年前にイエローを襲ったっていうミニリュウだろ。他のミニリュウ一族は見たことないし…もう進化してたんだな」

 

 声をかけられた時点では『なんだおまえ』と言わんばかりの顔をしていたハクリューだが、二年前と聞くとレッドに軽くあしらわれたことを思い出したのか不機嫌そうにしている。

 そんな様子のハクリューに、何を思ったかグレイは拳を構え始めた。

 

「あのときはレッドさんが助けてくれたらしいけど…おまえ、イエローを傷つけようとしたんだよな?今さらかもしれないけど、特訓ついでに少し…躾といこうか

 

 あの日、イエローは当時ミニリュウだったこのハクリューに襲われた。

 たとえ…一人で、普段行かないような場所に足を踏み入れたイエローにも非があるといっても。

 そもそも、ポケモンとは本来怖い生き物なのだとしても。

 それでも…他の誰よりもイエローを大切に想う彼からすれば、何もせずに終わらせることはできなかった。

 

「もしおまえが俺に勝てば、レッドさんに…おまえが負けた人に、リベンジさせてやる。代わりに…俺が勝ったら、それはなし。他のポケモンと同じように、特別報酬なしでついてこいよ」

 

 そう告げるグレイに、ハクリューは了承と共に尻尾を“たたきつける”。

 首を狙って放たれた攻撃に、あわや殺されるかと思ったが…グレイはそれを殴り飛ばした。

 

「ハッ、随分と元気じゃねえか。問題なさそうだし、んじゃ…今度はコッチから行くぞ!

 

 そう言い放ち、ハクリューの首へ拳を叩き込むグレイ。

 本来であれば鍛え上げられた人間でもなければ、ハクリューとの肉弾戦など成立するはずもないが…『繋ぐ者』と呼ばれた能力によりララの力を借りることで、殴り合いに興じていた。

 ラッシュを仕掛けられ殴り続けられたハクリューだが…途中からは“しんぴのまもり”で弾き、反撃の“たたきつける”で腕をへし折りにかかる。

 何かプライドがあるのか、宝玉の力を『打ち消し』に特化させているのか…ハクリューは“たたきつける”以外のわざを使うつもりはないようだ。

 それから十分ほどお互い有効打を与えられないまま続いていたが…ついにグレイの左ジャブに隠した渾身の右ストレートがハクリューに直撃し、そのままその体を地へと沈める。

 

「っし、これで決着だな。中々冷や冷やしたが…俺の勝ちだ。それじゃ…ハクリューゲットだぜ、なんてな」

 

 そう言いながらグレイはハクリューにボールを当て、捕獲を済ませる。

 またポケモン(バトロワ参加者)たちの戦いを身に戻ろうとしていたグレイだったが、ケーシィさんから“テレパシー”がとんできた。

 

(トコロデ主人(グレイ)ヨ。『自分で戦うのはやめて』ト友人殿(イエロー)ガ言ッテイタハズダガ?)

 

「あっやば…イエローには黙ってて貰うことってできません…?」

 

(大人シク叱ラレロ。友人殿モ心配シテイルカラ止メテイルノダゾ)

 

 頭を抱えだしたグレイを横に、先程まで騒がしかった森に静けさが戻ってくる。

 どうやら、ハクリューと戦っている間に乱戦も終わりを迎えたらしい。

 乱戦の最後に立っていたのは…ニドキング。

 その前に倒れているカブトプスを見るに最後の一騎打ちを制し、今大会の頂点に至ったのだろう。

 

「っと、丁度終わったのか…。おめでとう、ニドキングと…カブトプス。これからよろしくな。…それにしても、トキワで化石ポケモンを見るのは初めてだな…」

 

 二匹の思いを読み取りながらボールに収めていくグレイ。 

 どうやら、ニドキングは森の外でもその力を示すことを…そしてカブトプスは、強者を斬ることを旅の目標としているらしい。

 

「二匹とも戦闘狂(バトルマニア)なのかよ…。まぁ大会形式がこうだしな。それに、戦力は高いほうがいい…そうじゃなきゃ、イエローを…守れない」

 

(サテ、主人ヨ。メンバーハ揃ッタガ…コノ後ハ?)

 

「そうだな…俺たちは今まで一緒に戦ったことがないし、倒れている奴らが回復したらチーム戦といくかな」

 

 ハクリューにリリ、ニドキングにキング、カブトプスにカブキと名付け…三匹を前衛、ララとケーシィさんを後衛として陣形を組む。

 それから一時間後、グレイチームと野生チームに分かれてチームワークの練習を始めたのだが…全くもってうまくいかずにいた。

 ララとケーシィさんは他の仲間の援護として問題なさそうに動いているが、他の三匹は周りを見ずに敵へ突っ込んでしまっている。

 彼らは闘うことを好む性格をしているがために、自分が主体なのを前提とし他と連携ができずにいた。

 相手がシングル戦に応じてくれれば問題はないが、四天王はカンナのように同時にポケモンを出してくるだろう。

 このままでは、到底本気の四天王に勝てそうにはなかった。

 

「まさか、ここまでキツいなんて、な…。仕方ない、イエローがクチバに着くまで一週間は掛かるはずだから、それまで連携の特訓にするしかないか…」

 

 それから一週間と少しのこと、大会参加者のポケモンたちは地獄をみた。

 いくら戦闘を好むとはいえ、交代しながら格上のララたちと戦い続けるなんぞ疲れるのひと言で終わらせるものではない。

 だが、彼らの犠牲も無駄ではなかった。

 前衛を張る三匹は徐々に視野を広げ、他の前衛のカバーや後衛の守護といったことに意識を向けられるようになってきた。

 後衛もまた、ララは広範囲への“でんじは”による妨害と前衛に当たらない電撃を…そしてケーシィさんは、“テレポート”での緊急回避や躱せそうにない攻撃を防ぐ“バリアー”の精度を上げることに成功していた。

 

「…よし。これなら、四天王にだって通用するはずだ。リリたちも指示を聞いてくれるようになったし…そろそろイエローもクチバにつく頃か?…急いで、向かわないとな」

 

(デハ、一度タマムシニ飛ブカ。知ラヌ場所ニ“テレポート”ハデキヌカラナ)

 

「あぁ、よろしく頼むよケーシィさん。そこからは、リリに乗ってクチバに向かおう。」

 

 倒れていたポケモンたちが起き上がり始めるのに背を向け、タマムシシティの郊外へと“テレポート”したグレイたち。

 郊外にたどり着くと、リリの背に乗りタマムシカラナ南東…クチバシティへ向けて飛び立つ。

 しばらくは何もないまま水上を飛び続けていたのだが…

 

「なんだ…?やけに、騒がしいような…?」

 

 クチバの方向から、何か音が聞こえてくる。

 まるで、強力なビームか何かが放たれたような…耳に響く破壊音が、海を越えてきた。

 

 

 

 

 

「なぜ町を…!捜し物って、そのために多くの人やポケモンが…!」

 

「死んじゃいないさ。あのコンテストはクチバの一大行事だ、街自体は空っぽだったはず。まあ、トレーナーの一人が二人はくたばったかもしれないが…おまえも、オレを追ってきたということは…次の朝日は拝めないということだ!」

 

 イエローはグレイと分かれた後、グリーンの指導の下で一週間の修行を積み、クチバへと来ていた。

 サントアンヌ号のハイジャック、「進化のいし」が眠る海底ドームの発見…それらを乗り越え、“なみのり”を使えるハクリューを求めなみのりコンテストに参加していたのだが…

 景品のハクリューが突如として暴れだし、人影の指示により“はかいこうせん”を打ち込むと町を出ていく。

 町へ“はかいこうせん”を打ち放ったマントの男を追いかけ、海へ出たイエロー。

 捜し物だという男に納得できずにいたが…男は口封じにハクリューを向かわせる。

 このままでは、イエローはハクリューに締め付けられ苦しむことになるだろう。

…だが。この世界には、それを許さぬ者がいる。

 

 

 

「まったく…目を離したら、すぐにこうなんだからさ」

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