グレイが落ち着き、イエローとカツラ、ピカと共に鍾乳洞を歩き続けていた時。
今度はピカが落ち着かない様子で、ソワソワと周囲を見渡し始めた。
「ピカ、どうしたんだい!?…敵の本拠地に来て落ち着かないのは分かるけど…。」
「ウウム…イエローくん、ちょっとレッドの図鑑を見せてくれないか?確か、オーキド博士がピカの機嫌が分かるモードを入れていただろう?」
「ハイ。でも、ボクには使いこなせないのと…あと自分でピカと話した方がよく分かるので、一度も使っていないんです」
図鑑の機能を使い、ピカの機嫌を確認するカツラだったが…既に、その機嫌は機械で計れる限界を越えていた。
「俺もピカが何かを思い出しかけてるのは分かるんだけど…」
「ボクたちにはまだハッキリとはピカの意志が読み取れなくて…」
「イエローくん、グレイくん。ずっと考えていたんだが…」
カツラはそう言うと、自身の推測を語り始める。
私たちはレッドの闘いの場が『オツキミ山』だったことを『りかけいのおとこ』から知ったわけだが、ピカはその前から知っていたはずだ。
なにせ、闘いの場そのものにいたのだからね。
なのになぜピカはイエローくんとコンビを組んだ後も、キミたちをその場所に連れて行こうとしなかったのだろう。
「もしかして、『連れて行かなかった』のではなく、『
「連れて行けなかった、ですか?」
「私はこんな風に考えている。ピカは、レッドと離ればなれになった時、極度の傷を負ってしまった。体だけでなく…心にもね。そのショックで記憶の一部を失ってしまった。いつまでも消えない、その左耳の傷は…ピカの心の傷の象徴かもしれない…。」
「ピカ…そうなのかい?」
カツラの推測を聞きながら歩いていた二人は、悲しみを感じていた。
ワタルはポケモンのためだと言っていたが、こんなにピカの心を傷つけて…そう考えたあたりで、強い光が差してくる。
目を開けると、そこにはシバと戦っているらしきマチスとマサキの姿が鏡のように映っていた。
戦っている二人を支援すべく、急いで駆け寄るが…何か透明なモノで遮られているらしく、入ることができない。
マサキの名を呼び続けるが、それも届いていない様子だ。
「どうやら、こちら側からは見えるが、あちら側からは、こちらが見えないようになっているらしい。…まるで、マジックミラーのように!」
中から見えるマチスとマサキ、シバの戦闘は、激闘と称す他になかった。
ダブルバトルの形式で戦っていたが…攻防の結果、マサキたちのロコンとエレブーが酸の海へと落ちそうなまでに追い込まれてしまう。
どうにか助けられないかと、ギャロップの“ほのおのうず”とピカの“でんきショック”、カブキの“きりさく”で壁を破ろうとするが、びくともしない。
手をこまねいていると、中から声が響く。
『壁の向こう側にいる者どもよ!よく聞くがいい。この闘いに手出しは無用、早々に立ち去れ!』
「カツラさん…!」
「そういうわけにもいかん!ギャロップ、もう一度“ほのおのうず”!」
『分からぬと言うのか。…ならば、動かずにいてもらう他あるまい!』
「「しまった…!」」
痺れを切らしたシバは、イワークに命じ三人の体を締め付けて拘束してしまった。
拘束にはポケモンたちまで巻き込まれてしまい、このままでは脱出することはできそうになく、もはや見守る他できることはないだろう。
それから、何分経ったことか。
突如マチスたちはシバの後ろへと走り出し、行き止まりまでシバを誘導する。
諦めたのかと思うような行動は、しかし勝負を決定づける逆転の一手であった。
シバを囲うようにボールから現れたタマタマとマルマインはマチスの合図で、一斉に“じばく”する。
足場になっていたイワークが身を捩らせ、シバだけでなくマチスたちまで酸の海に落ちるかと思えば…レアコイルたちの展開した電気の救助ポッドのお陰で、九死に一生を得たようだった。
「良かった…。グレイ、マサキさんたち勝てたみたいだ…!」
「いや…まだだ、まだシバは終わってなんかいない…!」「何だって…!?」
…そう、それはマチスがポッドに登るべく苦戦していた時。
何処からか伸びてきたサワムラーの伸縮自在の足が、マチスの足を掴む。
ポッドを形成したレアコイルを分離させ、自らの左腕を噛ませることで耐えていたが…それすらも破壊され、酸の海へと落下していく。
助かる術は無く、本人すらもがここまでかと諦めていたが…その時が訪れることはなかった。
「あの蔓は…まさか…!」
酸へ触れるその寸前、植物の蔓が飛んできた。
直後、マチスの胸ポケットに入っていた運命のスプーンが煙の向こうへと曲がりだした。
植物の蔓を持つポケモンを持ち。
マチスと因縁のあるトレーナーなど…この世界には、一人しか存在し得ないだろう。
「あの自転車、それにフシギバナ!あ、あぁ…」
「ま、まさか…」
そう、煙の向こうから現れたのは。
カントーに住むものであれば、誰もが知っているだろう第九回ポケモンリーグ優勝者…!
「「「レッド!!」」」
「よ、久しぶり、マサキ!あとマチスもな!」
「今行くぜ…!だぁぁぁ!…フッシー、“あまいかり”!」
遂に見つかったレッドは、自転車に乗りイワークの背を駆ける。
サワムラーの攻撃を誘発し…その隙にフッシーの“あまいかおり”の匂いを嗅がせ、眠らせた。
「よっと。大丈夫か!?マチス」「なんとかな!」
「本物なんか!?本当の本当に、レッドなんかー!?」
「ああ、本物だぜ…。正真正銘、マサラタウンのレッドだ!」
闘技場の中の三人は、久しぶりの再開に笑顔を咲かせている。
「あ…あ…。レッド…さん!」
「レッドくん!良かった無事だったんだな!」
「レッドさん、レッドさん!」
壁の外の三人も壁を叩き、声をかけ続けるが…壁を背に寄りかかったレッドには、届いていない。
彼らの再会は、僅かな薄さの壁一枚に阻まれてしまっていた。
だが…突如、鍾乳洞に音が轟く。
何かが流れてくるようなその音は、マルマインの“じばく”によって決壊した地下水が迫る音。
「ふ…二人とも、何かにつかまるんだ!今に鉄砲水が来るぞ!」
「「レッドさん!」」
そう叫んだカツラだが、ようやく見つけた恩人の姿に釘付けになっている二人には届かない。
ついに鉄砲水が三人の元へ降り注ぎ…イエローの被っていた麦藁帽が、ふわりと流されていく。
カツラは、イエローの帽に隠されていたポニーテールを目にし…
「イエローくん、キミは…!?イカン、本流が!」
「レッドさん…レッドさぁ〜ん…!!」
「イエロ、ー…!カブキ、イエローたちを!」
三人は、地下水の本流へと巻き込まれる。
恩人に存在を認識されることすらなく…
『なんだい、ゲンガー。…フェフェ、そうか、小僧を一人見つけたか。せっかくだ、“のろい”でもかけておやり!』
洞窟の奥、水辺にて。
そこには、イエローとカツラの
カブキが水を掻き分け救助に当たったのか、二人に怪我は見当たらないが…鎌をぶつけずに助けるべく無理をしたカブキは身動きを取れずにいる。
「カブキ、キミが助けてくれたのか…っイエローくん、イエローくん!」
「う、う〜ん。…あっ!」
カツラの呼びかけに目を覚ましたイエローは、麦藁帽が外れていることに気づき、恥ずかしそうにそのポニーテールを手で隠す。
その恥じらう姿は、女の子の仕草そのものだ。
本流に流される直前にカツラが見たものは、気の所為ではなかったらしい。
「イエロー、
「……。今は、何も聞かないでください…。今は、もうこれがないと寂しくて」
カツラの問いかけに聞かないでほしいと言うイエローは、落ち着かなさげに麦藁帽を被り直す。
そうして…ようやく、この場に
「…グレイ!?どこにいるの、グレイ…!?それに、図鑑もスケッチブックも…!」
「なに…!?彼のことだ、無事ではあるだろうが…しかし、敵の本拠地で孤立するのは…!」
グレイが、いない。
流された際、二人とは別のところへと流されてしまったらしい。
どこに敵がいるか分からないとしても、グレイを探し続けるイエローだったが…
「グレイ…!返事をして、グレイ!ボクたちはここにいるよ!」
「落ち着け、イエローくん…!ここは敵も近いだろう、気づかれ「ん、呼んだか?」…!」
焦るカツラの言葉を遮るように、川上からグレイが流れてきた。
少し服が破けているが、外傷は見受けられない。
「「
「岩場に引っかかっちゃってさ。カブキが斬った跡が見えたから、それを追って川を泳いできたんだ。二人とも、結構奥にまで流されてたのか」
カブキもありがとな〜と言いながら、カブキの傷に手を当て癒しながら、ボールに戻す。
一度離れてしまった三人だが、ここに再び集まることができた。
グレイは早速、二人を連れて鍾乳洞を進もうとしたが…
「急ごうぜ、二人とも。早く片付けて、町の方に増援に行かないと…」
「ハハハハハ!」
「グレイ、この声って…!」
「ニビ、ハナダ、タマムシはもう壊滅から逃れることはできない!その三都市だけでなく、ヤマブキ、セキチク、クチバ、トキワも今、第四の軍が攻撃中。」
「全ての町の全ての人類が無に帰す!このワタルの野望実現のために!」
何処からか響く、ワタルの声。
だが、その姿は暗闇に紛れ見えない。
カツラの指示により、イエローがピカに“フラッシュ”で鍾乳洞全体を照らさせる。
そこに映ったのは…鍾乳洞の段差の上より見下ろす、ワタルの姿だった。
「そこにいたのか、ワタル!」
「…ここは私が行く。」「ええ…!?」
「奴を倒すには、我々三人が力を合わせる必要がある。キミたちの力は不可欠だ、だが…まず様子を見なければならない。第一撃で三人ともやられてしまうことを防ぐためにな!」
「奴の戦いをよく観察しておくんだ!」
そう告げると、カツラはワタルに向かって突撃を仕掛ける。
一人でなく三人できても良いと豪語するワタルは、『プテラ』の“はかいこうせん”でそれを向かい打つ。
カツラへ“はかいこうせん”が直撃するかと思われたが…『何か』がその手で受け止めていた。
エネルギー波を受け止めたそのポケモンの名は、『ミュウツー』。
「聞いたことがある。人間が小賢しい知恵で作り出した、いでんしポケモンのことを!面白い…その力を試してやろう!」
ワタルが指を上に向けた瞬間、スオウ島全体が揺れ動き始める。
洞窟が崩壊を始め…グレイたちは、崩れた壁から外へと投げ出された。
「ミュウツーを相手にするには狭すぎたのでな!外に出してやった…“ちょうおんぱ”!」
「“バリア”だ、ミュウツー!」
衝撃を伴う“ちょうおんぱ”攻撃を、球状に展開された“バリア”を受け止める。
僅かに受け止めるミュウツーの足が後ろへと下げられるが…まるで『大したことはない』と言わんばかりに、微笑を浮かべている。
「カツラさん!」
「大丈夫だ、イエローくん。攻撃はまだだ。まずは防御にまわり、奴の能力を…」
「そうじゃ、なくて…!グレイの様子が、おかしいんです!」「…何!?」
能力を見極めようとしていたカツラだが、イエローの訴えに後ろを振り向く。
イエローとともに、そこに立っているはずのグレイは…透明な棺に閉じ込められ、うめき声を上げながら眠っていた。
「なんだ、これは…!?まさか、“のろい”の類なのか…!」
「…ふん、キクコめ余計な真似を…。それはキクコのゲンガーが使う、忘却の“のろい”だ。閉じ込められた本人が自身の名を思い出さねば、戻ってくることはない」
「まずいな…これでは、攻撃に移ることは…!」
今バリアを解くか、バリアごと突撃するかを選れば…呪われているグレイは、無事では済まない。
長く戦うことのできないカツラとミュウツーにとって…ここでグレイのために停滞することは、敗北を意味してしまう。
万事休すかと思われたが、グレイの腰に着けられたボールからある一匹のポケモンが自力で出てきた。
(フム…ココハ私ガ“バリア”ヲ貼ロウ。主人ダケナラ、守リ切レル)
「ケーシィさん…うん、頼んだよ!」
「そうか…っならば行くぞ、ミュウツー!」
ケーシィさんがグレイを連れて“バリア”を貼り、戦場から離脱する。
それを見届けると、カツラとミュウツーは“バリア”の強度を高め、ワタルとプテラに向かって突撃する。
空を飛んでいるプテラが弾き飛ばされ…地へと叩き落とされたワタルは、プテラを二匹のハクリューと交代させた。
カツラたちがハクリューたちと戦い始めた頃、棺の中のグレイは夢に囚われていた。
嫌な夢を見ているのか、その顔は芳しくない。
ケーシィさんがその夢を覗こうとすると…その舞台となっているのは、何処かの研究所だった。
ここは…どこだろう?
おれは、ワタルとたたかいに…あれ?
おれのなまえ、なんだっけ…だれと、いっしょにいたんだろう?
『おい、「PURPLE」!何をぼーっとしている、早く研究室に入らないか!』
そうだ。『PURPLE』。
それが、おれのなまえで…違う。
もっと、大切な名前が…!
ここをすすめば、なにかわかるのかな…。
なかにいるのは…けんきゅういんに、こども?
そう、だ。俺たちは、この研究所で生まれて…!
子どもたちは、みんな苦しんだ顔をしていた。
痛くて、怖くて、それで…そのまま、苦しみ抜いた…そんな
そうか、これは…俺の記憶の中。
他の子たちがみんな死んで、何もかもが…この研究所の全てが、終わった日。
研究室に入れられ、最期の実験が始まるその直前に…
『すまない、遅くなって…キミを、助けに来た』
そう、あのときは名前もわからなかったけど…ワタルさんが、助けてくれたんだ。
研究所を破壊して、データも残らないようにして…それから、俺をトキワの
『この子を、お願いします』
『…わかった、何があったかは聞かない。この子のことは、任せてくれ』
そう、ちょうど同い年の子がいる家に、預けてくれて…
『…?ねぇねぇ、キミはだぁれ?』
キミに。
イエローに、会ったんだ。
『…理解不能。識別コードはあれど、名前などない』
うわ。そういえばこのときの俺、全然子供らしくないっていうか変な喋り方しか知らなかったもんな。
そうだ、思い出してきた。
名前のなかった俺に、キミは…
『…?よくわからないけど、なまえがないの?』
『なら、ボクがなまえをつけてあげる!』
『んー…そうだ、そのはいいろ?のかみがかっこいいから…きめた。キミのなまえは…!』
すごく、安直だったけど。
「PURPLE」なんてコードより、よっぽど大切な名前をつけてくれたんだ。
「おれの…俺の、名前は…!」
現実世界にて。
カツラとイエローは、ワタルのボールの開閉口の破壊に成功していた。
だが、既に中のポケモンは外に出ており…
残されたイエローは、手持ちである
「そのチームでこのワタルに挑むと…?見たところ、全く『進化』していないようだが!?」
「そうだ!毎回キャンセルしてきた…でも、もう逃げるわけにはいかないんだ!」
「今まで、何度もグレイに助けられて…ボクは、守られているだけじゃ嫌なんだ。ちゃんと、グレイと一緒に横に並んで…支え合いたい…!」
「グレイが戦えないなら…今度は、ボクがグレイを守るんだ!そのためにも…ワタル!ボクは、あなたに勝つ!」
進化が進んでいないチームを見て、侮りかけていたワタルだったが…イエローの叫ぶ決意に、その考えを改める。
「フハハハ!面白い奴だ。良かろう、だが手加減はしないぞ!」
「おっと、その前にミュウツーとの戦いで疲労したプテラとハクリューたちを回復させてやらねばな。ふふ…」
ミュウツーのボールをしまい、カイリューに乗って去っていくワタルを追いかける。
だが…去っていくワタルが空中に留まり、ボールから出したポケモンたちの回復を始める。
話には聞いていたが…本当に、トキワの力を使えるらしい。
グレイ、そしてイエローと同じくポケモンの想いを読み取り、傷を癒すことのできるトレーナー。
トキワ出身というだけで、同じ力を持ち強大な力を誇るワタルに、本当に勝てるのかと不安に苛まれたイエローだったが…もう、立ち止まるなんてことはできない。
ワタルとイエローが辿り着いた場所は、島の中央部に位置する火口。
ワタルが語るには、ギャラドスとカイリューが地下に潜り、地殻を活性化したことで今にも噴火せんという状態にあるという。
「こここそ、
「…!砕けた岩から溶岩が…!あちちち!」
「見たか!このパワーを!知っているだろう…ドラゴンは聖なる伝説の生き物だ。捕まえるのは難しいが、上手く育てれば天下一品…フフフ!」
「す、すごい…!カツラさんも、グリーンさんもこれを想定して…いや、弱気になっちゃだめだ!ドドすけ“つつく”!ラッちゃんも“いかりのまえば”だ!」
カイリューの“かいりき”によりイエローへ溶岩が降りかかる。
オムすけの水を被りながら走ることで回避に成功したが…今まで見てきた二人の火球を対処する特訓を思い出し僅かに弱気がぶり返してくる。
それを振り払うように攻撃を仕掛けるが、効いた様子もなくドドすけとラッちゃんは弾かれてしまった。
続いて攻撃するゴロすけ、オムすけ、ピーすけも…その全てを、尻尾の一振りで払われてしまう。
「ああ!みんな!」
「“わるあがき”はよせ。ドラゴンの、この厚く堅い鎧のような皮膚に、小手先の攻撃はムダだ」
「さあ、まだ続けるか?グレイを連れて逃げるというのなら、見逃してやらんこともないぞ!」
「逃げたりは、しない!だって、このまま放っておいたら、カントー中の町々は滅ぼされてしまうもの!」
「そうか、逃げるつもりはないか…。だが、滅ぼすだけではないぞ!造りかえるのだ、このワタルがな。身勝手な人間たちを全て排除して、ポケモンの住みやすい世界を作るのだ!」
逃げないというイエローに、一瞬残念そうな顔をしたワタル。
それを隠すように、自らの理想を、自らの目的を再度宣言する。
「違う!違うよ、そんなの間違ってる!」
「確かに人間が勝手なことをして、ポケモンが住処をなくしてしまったり…。食料を失ってしまったり、そういう場所をボクはこの旅でたくさん見てきた!」
「でも、だからといってどうして人間を滅ぼしていいの?町を破壊していいの!?ポケモンは殺しの道具じゃないんだよ!そしてこの戦いの中だけでも、たくさんのポケモンや人が傷ついているんだ…」
「…っ、黙れぇ!」
「黙らないよ!…ボクは戦うことが…本当は嫌いだ。自分のポケモンも相手のポケモンも、傷ついてしまったら本当に悲しい」
「…さっき傷ついたハクリューたちやプテラを回復させていたよね?あの力を…どうして!どうして何かを壊すことのために使うの?どうして悪いことのために使うの?」
「とうに覚悟はできている…!このワタルに説教しようというのか!?」
「ボクに…初めてポケモンのことを教えてくれた人が言ってた!『正しい、優しい気持ちで育てればいつまでも友達』だって!そして、グレイも…!」
「あなたにとってもポケモンは友達なんでしょう!?」
自身の考えを、必死に訴え続ける。
どうしてと、友達じゃないのかと問いかけ続けるイエローに、覚悟は決めたというワタルはただ苛ついているらしかった。
苛つきを晴らすように、カイリューへと攻撃の指示を苛烈に飛ばす。
「カイリュー、“だいもんじ”!」
溶岩をエネルギー源とした“だいもんじ”が、イエローを焼かんと迫る。
何もなしに受ければただでは済まないだろうが…それを向けられたイエローに、焦る様子はない。
支え合いたいって、ボクは言ったけれど。
こういうとき、いつもキミは助けてくれた。
守りたいのはボクもなのに、本当に…
「よく言った、イエロー…本当に、強くなったな!」
キミは、ずるいんだから。