カイリューの放つ“だいもんじ”を、キングがその体で受け止める。
本来であれば、多少なりともダメージは通るはずだというのに…キングの体には、焼け跡すら残っていない。
「ふん、ようやくお目覚めか…遅かったじゃないか、グレイ」
「なに、ちょっと大切なことを思い出しててさ…もうがっかりはさせないさ」
「グレイ…本当に、大丈夫なの?ここはボクが」
「好きな娘のかっこいいとこ見せつけられたんだ、ここは俺にもかっこつけさせてくれよ」
「す、好きって…え、ボクのこと……!?」
“のろい”の中で自身の原点を振り返った結果、グレイはなにか吹っ切れたらしい。
以前であれば、この気持ちも気の所為で済ませただろうが…もう、自分に嘘はつけない。
顔を赤くしているイエローの前に立ち、“バリア”で消耗したらしいケーシィさん以外の手持ちを全て繰り出す。
「そうか、ようやくオレと戦うか、グレイ!だが、おまえのポケモンで空を飛べるのはそのハクリューのみ。どうやってオレと戦うつもりだ!」
「あまりトキワの連中舐めんなよ?カブキ、全速力で…突っ込め!」
空を飛べなければ、遠距離から攻撃することしかできない。
ここが、平地であればその通りだろうが…グレイたちの立つ場所は、火口の縁。
そして、ワタルとカイリューのいる場所が火口の中心、その空中にいるのならば。
反対側の縁にまで届く勢いで跳ぶカブキの“きりさく”は、確かにカイリューの胴体を裂いた。
「まさか、そうくるとはな…それに、そのカブトプスの練度にしては、やけに傷が深い。…『繋ぐ者』の力ということか?」
「『繋ぐ者』?あぁ、これのこと?今までは力を借りるだけだと思ってたんだけどさ、違ったんだ。この力の本質は、
目覚めとともに覚醒した…否、自覚した『繋ぐ者』の力。
それは、ポケモンと繋がるほどに上昇し続けるチーム全体への同時強化。
トキワの力を持つ者の遺伝子に、全てのポケモンの遺伝子を持つと言われるミュウの遺伝子が結合し、変質したことで生じた力。
自身の遺伝子とポケモンの遺伝子を共鳴させることで実現した能力だが…共鳴させているがゆえのデメリットもある。
「なるほどな、感覚の共有…どうやらカツラとミュウツーの繋がりと同じのようだ」
「っつぅ…驚いてた割には、ちゃんとカブキに合わせてきてんじゃんか。一筋縄にはいかないな」
“きりさく”を食らったカイリューだが、ただ斬られただけではない。
去り際のカブキに対して、関節を狙うように“かいりき”でカウンターを決めていた。
想定外の攻撃だったために、その攻撃はカブキの体を掠めるに留まっていたが…カブトプスという種族は装甲こそ堅けれど、HPそのものはさほど高くはない。
急所である関節への攻撃は、確かにグレイにまで影響を与えていた。
「フ…プテラよ、そのカブトプスの相手をしてやれ」
(なんだ…?なんでハクリューとギャラドスを出してこない?…いや、チャンスと考えるしかない!)
「プテラは頼んだ、カブキ!カイリューはララとキングで相手する…リリ、下から…そう、頼んだぜ」
ララの“10まんボルト”とキングの“れいとうビーム”がカイリューへと肉薄する。
カイリューも“はかいこうせん”で対抗するが…数の有利には敵わないのか、徐々に押し負けているようだ。
プテラとカブキもまた、鎌と翼で斬り合う最中放たれた“みずでっぽう”がプテラの目に入り、形勢は決定づけられた。
負けに近づいたプテラをボールにしまいながら体制を立て直そうとするワタルとカイリューだったが、それを許さぬポケモンが残っている。
「これは…“たつまき”!?そうか、下に潜っていったハクリューが、溶岩を巻き上げているのか!」
「っあなたに勝つためなら…!今だキング、全力で押し潰せ!」
「“すてみ、タックル”!」
リリの“たつまき”に巻き上げられた溶岩が、立て直しを許さない。
そして、カイリューの上へとキングが跳躍し…全体重を乗せた“すてみタックル”が、ワタルとカイリューを溶岩溜まりへと押し潰す。
抵抗する間もなく、溶岩溜まりへと叩き落とされ…同じく溶岩へ落ちていくキングが、その直前でボールの光に包まれた。
「…勝った、の…?」
「お疲れ様、みんな。…とりあえず、ここから離れよう。熱いし危険だし…カツラさんも心配だ」
「う、うん…。ね、ねぇ、さっきのって…それに、ワタルは………え?」
溶岩に沈んだワタルに背を向け、火口から離れ歩き出すグレイ。
好きな娘という発言や、溶岩に沈んだワタルのことを聞こうと近づいたイエローの前で…不意に、グレイとそのポケモンたちが倒れ伏す。
「オレを倒したと思って油断したか?詰めが甘いな」
「あれは…泡!?“バブルこうせん”のバブルの中に隠れて、溶岩から身を守ったのか…!」
グレイたちの背から、泡に包まれたワタルがその姿を現した。
その泡の中にはワタルだけでなく、泡を形成したのだろうギャラドスとハクリューも入っている。
「おまえの力は確かに強力だ。だが、ポケモンと同時に攻撃されるとポケモンは倒れずとも、先におまえが限界を迎え…おまえが戦闘不能となれば、繋がっているポケモンたちもまた戦闘不能となる」
そう、『繋ぐ者』の弱点。
それは、能力の持ち主であるグレイ本人。
たとえポケモンたちが倒れるには程遠い攻撃だとしても、同時に攻撃されればその全ての感覚がグレイへと伝わっていき…そのショックで戦闘不能となれば、繋がっているポケモンたちにその状態が共有され、共倒れとなる。
「ポケモンをボールに戻していれば、そうなることもなかっただろう。…さぁ、二回戦といこうか」
「泡が、消えた…!?グレイ、逃げれる!?…ピーすけ、グレイにギブスを…」
「…なん、とか。…そうか、光の三原色。赤、青、緑…三つの色が合わ、さって…無色に。それが太陽光を反射して、透明になっているんだ…!」
グレイとそのポケモンを襲った攻撃の正体、それは透明になった“バブルこうせん”だった。
原理こそ分かれど、見えない泡にイエローのポケモンたちまで襲われていく。
イエローはまだ足が覚束ないグレイの左腕にギブスを巻きながらキャタピーを連れ、ひたすら走り続け…火口の途中、その段差へと降りた。
「まだ、だ…ララとだけなら、まだ」
「待って、グレイ。ここはボクがやる。…見てるだけなんて、できないし…支え合いたいって、言ったでしょ?」
「…わかった、頼んだよイエロー」
「うんっ。よし、まずは作戦を練ろう」
「ここはやっぱり、ピーすけの糸を使った作戦で行く。今、逃げ回っている間にピーすけに糸を吐かせた。見えるか見えないか程度の細い糸だから、ワタルには気づかれていない。そこで、ラッちゃん、オムすけ、ピカは…ゴニョゴニョ」
「いいかい、相手は一匹ずつじゃ敵わない。全員のタイミングが勝負だ…よし!」
イエローのポケモンたちが、走り出す。
ワタルはそれを迎撃すべく泡を放つが…消えた泡が糸に引っかかった瞬間、ラッちゃんの敏感なヒゲが振動を感知し、ピカに電撃のタイミングを教える。
そして、糸を事前にオムすけの水で濡らすことで電撃が通りやすくなり、泡を容易に破壊する。
「今だ!これがボクたちの全員攻撃…“ドリルくちばし”………!?」
泡を破壊した隙を突き、ゴロすけに投げられたドドすけがその勢いのまま“ドリルくちばし”でワタルを包む泡に突っ込む。
だが…それは泡を歪ませるだけに終わり、割ることはできなかった。
「…よく考えた。糸のトラップそのものが、オレの隙を作り出す『囮』だったとはな。作戦は良かったが…悲しいかな、威力不足だ!」
「うわぁぁぁぁ!」
威力不足により破壊は叶わず、イエローへ向けて大量の泡が放たれる。
あわや終わりかと思われたが…どこからか来た黒い人影が、イエローを助け出した。
「だ、誰ですか…!?もし、ボクたちを助けに来てくださったのだとしたら、せっかくですけど…ワタルはトキワのトレーナーでないと倒せないんだ。ボクたちがなんとかしなくちゃ…」
「心配するな…オレもトキワのトレーナーだ!」
(なん、だ…この感覚。俺はあの人を知らないはずなのに…どうして、こうも心がざわつく…!?)
黒服の人は、トキワのトレーナーだと言うが…グレイは、その姿に心が落ち着かない。
そのざわつきはボールの中のララからも伝わり…イエローもまた、ピカの記憶から一度トキワで戦っていることを読み取り、敵か味方か判断できずにいた。
男は指をちょいちょいと自身に向け…ワタルへと挑発する。
「キサマ…なんのつもりだ。誰であろうと、このワタルの邪魔はさせない…“バブルこうせん”!」
「まずい、またあの見えない泡が襲ってくる!」
「太陽光を反射して見えなくなる“バブルこうせん”か…フフ。サイホーン、“つのでつく”からの“ふみつけ”!」
再び泡が襲ってくるが、角で破壊された岩が“ふみつけ”で宙に舞い上げられ、砂ぼこりのように太陽を隠し、見えない攻撃球の姿を突き止める。
「姿が見えればこちらのものだ…ニドクイン“ひっかく”!そのまま本体の泡も割ってしまえ!」
「溶岩の熱にも耐えるこのガードに…そのような攻撃が効くかぁ!食らえ…“はかいこうせん”」
「…っ、逃げるぞイエロー!」
「わぁ!?」
本体の泡へと“ひっかく”ニドクインだが、その程度では泡を破壊できず…反撃の“はかいこうせん”が、ひたすら乱射され続ける。
高笑いするワタルだったが…黒服の男が一つのボールをその足元へと忍ばせる。
「真下がガラ空きだ!“ダブルニードル”!」
ボールより姿を現したスピアーが、“ダブルニードル”による刺突で泡を貫き破壊した。
身を守る泡が破壊されたことでワタルは落下を始め、火口に張り巡らせられた糸がその四肢に絡まる。
「む、う…!おまえは…。
「そうだ」
トキワジムジムリーダー。
イエローはそれに聞き覚えがあった。
今は崩れてしまったジムを取り仕切っていたという、最強のジムリーダー。
しかし、なぜそんな人がここに…?
「さっき“パワー不足”がどうとか言ってたな。どうだ、オレのスピアーは」
「オレは…『地』のタイプを司るジムリーダー。本来、地面タイプ以外は専門外だが…コイツは特別だ。自分の故郷、トキワの森で育ったポケモンだからな。さて…」
「お、おじさんなにもそこまで…」
地のジムリーダーと語る男が、ワタルの首元にスピアーの針を添える。
それを止めようとするイエローだったが…
「我が組織は不滅だ。今は壊滅状態だが、時期がくればやがて復活するだろう。だが今、カントーはおまえたち四天王による攻撃を受けている。」
「いずれ…オレたちが制圧するはずの場所で…、勝手なことは許さん!」
「はぁ…はあ。さすが最強のジムリーダーだ。そこにいる奴らとは迫力が違う。いや、それとも…。さすがはロケット団の
「サカ、キ…?ロケット団の首領…!?」
アイツが。
アイツがアイツがアイツがアイツがアイツがアイツがアイツがアイツがアイツがアイツが!
俺たちの、仇。
俺たちを実験台にし、ララの妻子を殺した…!
「おまえ、が…!」
「さぁ、ゲームは終わりだ」
サカキがワタルにトドメを刺そうとした、その瞬間。
突如轟音が鳴り響き、空に光で構成された巨大な鳥型の何かが現れた。
「フ…ククク。ハハハハハハハハハ!」
「!これは…ぐぅ!」
ワタルが高笑いしたかと思えば、サカキの胸元が光り始める。
突然光り始め、空へ浮かんでいくのは…トレーナーバッジ。
集めるほどにポケモンを操る能力を高めるバッジを、ワタルも七つまでは集めていると言う。
手に入れた七つは、この島の周囲から天に向かって突き出た七つの石柱の下に隠されてあり…集まったバッジが共鳴し、力を発揮できる位置にあるらしい。
炎・岩・草・電・毒・水・念・地の順…この島自体が、巨大なバッジエネルギー増幅器だと、ワタルは得意げに語る。
「さっきおまえの胸元を離れ輝き始めたのは、オレが求めていた最後の一つ…。後は中央にそれを
「おまえはオレを追い詰めたと思っていただろうが、逆だ。おびき出したのだ、おまえをちょうど島の中央までな」
「……」
「そして…八つのバッジが揃って発動したエネルギーは、上へと立ち昇る。上では待っている!オレの探し求めた切り札が、エネルギーを吸うために!夜明けと共にこの島の真上に現れる幻の存在!」
ポケモンとしか分からない何かが、エネルギーを吸い続ける。
サカキは臆したのか、身を翻し去っていくが…ワタルはプテラに乗り、幻のポケモンの下へ飛んでいく。
アレを自在に操ることが望みだと、カントーなど、世界など瞬時に人間から解放出来ると告げて…
「いか、なきゃ…サカキのことを、考えてる場合じゃない…!リリ、ララ最後まで…!」
「グレイ、そんな傷で行くなんて…!…そうだ。行く前に、こっち向いて?」
まだ回復仕切っていないというのに、最低限強化を維持できる二匹を連れて行こうとするグレイ。
無茶をする彼を止めようと、イエローはグレイと向き合う。
「ねぇ、グレイ。さっきボクは任せてって言ったのに、自分じゃ勝てなかった。だから…ここは、もう一度ボクにやらせてほしい。今度は、勝って見せるから」
「だからって、一人で行かせられるわけ…!」
「ちゅ…ん…」
「…ぷはっ。ボクのこと、好きって言ったよね。そのお返事…ボクも、グレイが好きだよ。…それじゃ、その。…いってきます。絶対、帰ってくるから!」
…………。
…え?
今、なにをされた?
…頬?いや、確かに唇が湿って…?
好きって…え?
イエローは、ワタルの下へ向かうカイリューにしがみついていた。
ワタルはポケモンの敵である人間を排除してくれるはずだと伝わってくるカイリューの気持ちに、しかし人を、町を破壊するなんて間違っていると叫ぶ。
「きっと人とポケモンは共存できる!そうだよね、ピカ、ラッちゃん…ボクはそれを証明したい!オムすけ、ドドすけ、ピーすけ、ゴロすけ…それを証明するための力が…」
「ボクは…力が欲しい──!」
「なにを…しに来た!」
証明するための力が欲しいと叫ぶイエロー。
追いつかれたワタルは、イエローへプテラの“はかいこうせん”を放つが…
「図鑑がなくなってしまった今、キャンセルボタンはもう押せない。いや…キャンセルボタンは、もう押さない!絶対にワタルを止める。みんな、ボクに力を貸してくれ。みんなを守るための…力を!」
「二、段階…連続進化!?」
ポケモンたちが、次々に進化していく。
ドードリオ、オムスター、ゴローニャ…そして、バタフリー。
「ワタル──!うぉぉぉ──!」
「宙を飛べるようになったか。しかし邪魔はさせん!人間はポケモンの敵!奴らを排除するために…
「違う!人間はポケモンの味方だ!ボクは世界のみんなを守る!」
「奴を消せ!」「みんな!」
「「おおおお──!!」」
二人のポケモンたちが、ぶつかり合う。
カイリューの“はかいこうせん”をオムすけの“れいとうビーム”が打ち消し、ハクリューの“たたきつける”をゴロすけの“まるくなる”で弾く。
「ふふ…『守り』の戦い。いつまで持つかな」
「あなたが考えを正すまで!」
だが、ワタルが考えを変えるまでに幻のポケモンはエネルギーを吸収し尽くすだろう。
エネルギーを吸った翼の一振りで各地の四天王軍までバッジの影響下に置かれ…人間からポケモンを解放した、素晴らしきポケモンの国が建国される。
その未来を現実とすべく、イエローへ追い打ちをかけるが…
「リリ、“しんぴのまもり”!」
その全てが、リリによって打ち消される。
下で待っているはずのグレイが、来たのだ。
「グレイ…!?どうして、ボクに任せてって…!」
「
体に走る痛みを、止まらぬ情熱がねじ伏せる。
左腕のギブスが解けかけているが…それすらも、気にしていない様子だった。
「まだ立つか、グレイ…!やれ、ギャラドス!」
「ララ、“10まんボルト”で撃ち落とせ!」
(グレイ…!…?これは、ピカの思考?失われた記憶が返ってきているのか…!ピカは、レッドさんと四天王たちの戦いを見ていた。バッジが集まって発生する力の強さを…そして、その対抗策にも気づいている!)
(「エネルギーの発生は止められない。その対策はたった一つ!それ以上の力をぶつけて吹き飛ばすことだ」と!そうすれば、ワタルの野望を止められるんだ…!)
グレイとイエローが戦っている頃、その真下。
レッド、グリーン、ブルー…三人の図鑑所有者が、カツラと合流していた。
「キミたち、無事だったか…!」
「あぁ、シバを倒してここに駆けつけたんだ…上空のアレは?」
「キャタピーの糸が降りてきている…イエローくんに、グレイくんが上に!?…相手は四天王の将、ワタルだ。あの鳥は、恐らくワタルの切り札!」
あの鳥はワタルの切り札だろうと語るカツラに、レッドたちは頷きながら自身の相棒…フッシー、カメちゃん、リザードンを繰り出し…そのエネルギーを、糸へ打ち込む。
「二人とも、糸に沿って上空へオレたちのエネルギーを送るんだ!」
「…ハハ!レッドさんも、粋なことをしてくれる…!イエロー、手を!」
「それって、グリーンさんたちのポケモンの
リリに乗るグレイと、ピーすけに掴まれたイエローがその手を繋ぐ。
その手を通じ、レッドたちから送られたエネルギーを分け与え…その力が、ララとピカに注ぎ込まれる。
幻のポケモンが、その力を変えていく。
破壊の力が与える力へと変じていき…各地の四天王軍団が力を失い、島には花が芽生え始めた。
「優しい光…バッジのエネルギーは全部吐き出したんだね。よかった…」
「っ、イエロー!?ピーすけも限界なのか、リリ、ケーシィさん…えっ無理!?…って、あなたは…」
ピーすけが力尽き、地へと落ちていく。
リリもまた力尽き、ケーシィさんも回復していなかったが…そんな二人を、プテラに乗ってきたレッドが受け止め…
あれ…!?ここは、どこだろう。
ボクは確か、スオウ島の上空にいたんじゃ…。
ピ、ピカがいない。
ラッちゃん、ピカを知らないかい?
おーい、ピカ!
どこにいるんだよう。
『ガサ…ガサ…!』
あれれ?…おまえ、ドドすけかい?
オムすけにゴロすけ…それに、まさか…ピーすけなのか!?
みんな、その格好…。あ、そうか。
進化しちゃったんだったね。
え?こっちへ来いって?
あっピカ!さ、おいで、ピカ!
あっ…待ってよ、ピカ!
…そっか、そういえばおまえはレッドさんのポケモンだったものね…。
ずっと一緒だったから忘れていたけれど…。
『ピカ。最後くらいはいいんじゃないか?』
グレイ…?
そうだね…もう少しだけ…今までみたいに…
「ん?…うわぁ!?」
「よっ、気がついた?」
「しまった…ボク、また眠って…ワタルは?あの大きなポケモンは!?」
「静かに…横を見てみなよ」
「横…?「すぅ…すぅ…」グレイも、寝てたんだ」
飛び起きたイエローはワタルと幻のポケモンの行方を聞こうとする。
それをレッドに止められ…レッドとイエローの間を見ると、そこにはグレイが気持ちよさそうに眠っていた。
「ワタルはキミたちが吹き飛ばしたし、ポケモンなら西に飛んでった」
「今、カントーとも連絡が取れたわ。四天王の軍も、ワタルが消えたと同時に力を失ったって」
「それにしても不思議だ。イエローくんのポケモンたちは、キャンセルを繰り返してきたために、逆に最後は脅威の進化を遂げたのか。通信でのみ進化が確認されているゴローニャまで…」
「とりあえず、戦いは終わったんだ。よく頑張ったな、ありがとう。イエロー、グレイ!…せっかくだし、もう少しくらい二人で寝てもいいんじゃないか?」
「そう、ですね…お言葉に甘え、て…」
「「すぅ…すぅ…」」
「ところで、どうすっかなーピカ。手持ちに戻したいけど、イエローにもなついてるみたいだし…。いっそ、みんなで暮らすか?」
何はともあれ。
ようやく、傷ついたピカとの出会いから始まったこの旅は、終わりを迎えた。
この先、図鑑に関わる者たちは再び事件に巻き込まれることもあるだろう。
だが、今は…訪れた平穏を、享受すべく。
それぞれの故郷へと、帰って行くのだ。