私―――楓は、山吹財閥主催のパーティーに参加中。主催家の娘なのだから、当然と言われれば当然なのだが・・・どうもニコニコし続けるのは、苦手だ。
「やぁ、楓ちゃん。お元気ですか?」
急に話しかけられ、私はビクッとしつつ、後ろを振り返る。そこにいたのは、赤毛の男性と緑髪の男性だった。
「吉良財閥の・・・吉良ヒロト社長と、緑川リュウジさん。今日はご参加してくださり、ありがとうございます。どうぞ、お楽しみください」
その男性たち―――ヒロトさんと緑川さんは、顔を見合せて笑う。
「楓ちゃん、そんなに硬くならなくていいよ。いつもどおりでいいよ」
「あ、はい・・・それじゃあ・・・」
そう、私は10年前のFFIの日本代表“イナズマジャパン”のメンバーと知り合い。理由は、私が3歳から吉良財閥の経営する“お日さま園”にいたからだ。
さらに、6歳のとき、引き取られた先―――山吹家の親戚筋に、イナズマジャパンの司令塔だった鬼道有人さんがいたからということもある。
「ねぇ、楓ちゃーん。ちょっと愚痴ってもいいかな?」
急にヒロトさんが、お酒が入ったのかよくわからないけれど、私に対して愚痴ってきた。別にいやな気はしなかったし、緑川さんはどこかへ行ってしまった。
私は、片手にオレンジジュースを持ったまま、ソファに腰掛けた。
「・・・で、何ですか?愚痴って」
オレンジジュースを飲みながら、私はお酒を飲み続けるヒロトさんをみる。
「あのね、1年くらい前に新しく園に入ってきた子がいてね、その子―――マサキ、サッカーが好きみたいなんだけどさぁ、その、あれ・・・そう、人間不信でさ、俺のことはおろか瞳子姉さんのことも信じてなくってね・・・どうすればいいんだろうねぇ・・・」
意外と深刻な話で、私は正直反応に困る。
でも、何もアドバイスせずに話を終わることなんて、出来るはずもなく・・・。
「ヒロにぃはヒロにぃらしく!・・・ってところね」
「おぉ、久々に“ヒロにぃ”&タメ口だぁ!」
あ、いつの間にか・・・。でも、ヒロトさん―――ヒロにぃは笑顔のまま、うれしそうにお酒を飲み続けていた。―――まぁ、いいかしら。
「もう・・・ヒロにぃ、リュウジにぃが向こうで呼んでいるわよ?早く行ってあげたら?」
「あぁ、本当だぁ。おーい、緑川ぁー!こっちに来てぇー!」
「・・・本当にしょうがないわね。それじゃあ、またね・・・吉良社長」
私はそう言い残して、ヒロにぃのところを後にした。
「楓、お疲れ」
「あ・・・お兄さん」
次に話しかけ来たのは、お兄さん―――鬼道有人さんだった。お兄さんは、鬼道財閥だけでなく、帝国学園の総帥でもある。私も、尊敬している人物の1人だ。
「ヒロトの相手は、やっぱり疲れるだろう?」
「・・・えぇ。だってヒロにぃ―――ヒロトさん、酒癖が悪いほうですよね?ですから・・・ね?」
お兄さんは苦笑い。私もつられるまま、苦笑いをした。
「・・・最近の雷門は、どうだ?」
急にお兄さんにその話をされて、ビクッとなる。
―――私は、フィフスセクターの聖帝・イシドシュウジのお気に入りシードであり、イシドシュウジ―――豪炎寺修也さんの本当の目的を知る、唯一無二の存在。
それであると同時に、真の黒幕―――千宮路大悟からシードの子供たちを助け、フィフスセクターの陰謀を暴く秘密組織“レジスタンス”の一員でもある。
私は、レジスタンス本部と豪炎寺さんをつなぐ、いわばかけ橋なのだ。
「キャプテンの神童先輩が、入学式の日に化身を出した・・・っていいましたっけ?」
「・・・あぁ、確か聞いたと思うが・・・」
「じゃあ、それ以外・・・あ、栄都学園との試合で、勝敗指示を破って1点入れました。あと・・・私事ですが、剣城とミニゲームをしました」
「そうか・・・本当にすまない・・・」
お兄さんは、スマホのメモ機能を使って、私の話を聞いていた。お兄さんは、ヒロトさんと違って、酒癖が悪くない。だから、安心して話していられる。
「それじゃあ、もう行くな」
「えぇ、それじゃあ・・・」
そういうと、お兄さんと私は別れた。
「あ、れ・・・か、楓!?」
「え・・・」
今度話しかけてきたのは、優しそうなジェントルマンの男性と、その息子らしき人だった。その息子さんのほうに、私は見覚えがあった。
「し、神童キャプテンっ!!」
―――サッカー部キャプテンの神童先輩だったのだ。とすれば、この男性は先輩のお父様・・・。
「いつも息子がお世話になっております。私が神童財閥総帥の神童拓海です」
「こちらこそ、拓人さんにはいつもお世話になっております。山吹財閥の山吹楓です」
私は若干ぎこちない笑みを浮かべ、神童総帥とキャプテンを見る。向こう側も、笑みを浮かべ会釈した。
そのあと、神童総帥は別の人のところへと行った。私は、キャプテンとともに、カウンターに座った。
「楓は、やっぱり山吹財閥のご令嬢だったんだな」
「キャプテンも、やっぱりご令息だったのですね」
私はピーチジュース、キャプテンはグレープジュースを飲みながら、大人たちを眺める。今気がついたことだが、子供はどうやら、私たち2人しかいないようだった。
「・・・なぁ、楓。ずっと聞きたいことがあったんだが・・・楓は化身が使えたんだな」
やっぱり、このことを聞いてきたか・・・。あの試合から、早数日たったが、まだこの話をちゃんとしなかった。だから、いつか聞かれると思っていた。
「はい。結構幼いころから、つかえました。ほかにもいろいろ技は使えます。・・・私には、完成させたい技があるんです」
このことを話すことは、ちょっとした覚悟を決めたことだった。
「完成させたい・・・技・・・?」
「・・・はい。私が使えるのは、“エンジェルバースト”という技なんですけど・・・この技には、対になる技があるんです。“デビルバースト”といいます。この2つの技は、それぞれ威力が強いんですけど、合体するとさらに強い技となるんです。でも、このデビルバーストは、エンジェルバーストに比べ、体力もキック力もかなり必要になります。―――私は、この技完成させられるのは・・・剣城だと思うんです。でも、今の剣城とだろ・・・息が合いません」
しばらく沈黙の時間が続いた。しばらくたったころ、キャプテンはふっと笑い、話しかけてきた。
「そうか・・・。なら、完成させるといい。大丈夫だ、きっと・・・いや、絶対に完成させられるよ」
「キャプテン・・・そうですね」
その言葉に、私もつられて笑みを浮かべた。
時計の針は、いつの間にか23時を指していた。
そして、楽しいパーティーは幕を閉じた。