mix color   作:御沢

13 / 97
紫の髪の少女

「あー!楓ー!大丈夫ー!?」

「え・・・えぇ。昨日は、試合に出れなくてごめんなさい。本当に、ごめんなさい」

試合の翌日、教室について真っ先に天馬に話しかけられた。そして、試合に出れなかった・・・否、出なかったというほうが正しい・・・そのことに、罪悪感を抱く。

「いいんだよ!風邪ひいたんなら、しょうがないしね!」

「・・・ふふっ、ありがとう」

ぎこちない笑みを浮かべ、私は天馬に対応する。―――天馬、熱でもあるのかしら?顔が赤いもの・・・。

 

 

1時間目。

授業は、社会。平安時代のことを学んでいる。

「平清盛は、平家を率いました。そして、その1世代後、源頼朝が出てきて、征夷大将軍に任命されます―――。」

・・・はっきり言うと、暇。今習っていることって、常識の範囲。だから大きなあくびをする。しかし、隣を見れば、天馬は真面目に授業を受けていて、ちょっとくらいまじめに受けないとな、なんて思う。

 

 

キーンコーンカーンコーン・・・

ようやく、1時間目終了のチャイムが鳴る。―――次の授業くらい、サボろう。

保健室に行くことを理由に、サボることにした。

「・・・春奈さん、体調がちょっと悪いので・・・休みます」

「あら・・・大丈夫?・・・なんて、サボるんでしょ?いいわよ、私の授業ならね♪」

―――春奈さんは、ちょっと変わっている。サボっていいなんて・・・おかしいわ。でも、そんな春奈さんが、私は大好き。

「クスッ、ありがとう」

そう言い残すと、私は教室から出た。天馬や葵が、一瞬こちらを見て、不思議そうな顔をしたけれど、私は気付かないふりをして、屋上へ直行した。

 

 

屋上に行くと、変な光景が広がっていた。

女子―――たちの悪い女子が数人、1人の女子を囲み、何かを言っている。とっさに物陰に隠れ、話の内容を聞く。

「あんた、神童先輩になれなれしいのよ!!」

「霧野先輩にもよッ!!」

「そ、んな・・・私、だって・・・」

―――要するに、女子たちのねたみ。そういえば、神童先輩と霧野先輩、学校でもモテるほうだったな、と思いながら、その話のレベルの低さにあきれながら、その女子たちのところへと向かった。

 

 

「・・・あなたたち、何しているの?」

「ッ!・・・山吹さん・・・」

「あんたには、関係ないでしょ?」

はぁ・・・と、ため息をつく。

「関係ない?・・・そうね、関係ないわ。でも、この“人として最低な行い”をしている人たちを、見過ごすわけにはいかないの」

女子たちが、一瞬ひるむ。こんなことでひるむなんて、よくそんなことでいじめられるな、なんて思う。

「・・・ッ!もう、行こうっ!!」

「・・・そうねっ」

「・・・そうだよっ」

悔しそうな顔のまま、女子たちは去って行き、私とそのいじめられた女の子だけが、屋上に残っている。サァァァァァ―――・・・と、風が吹く。

 

 

「えっと・・・大丈夫?」

私は、手を伸ばす。そして、彼女の顔を見る。

藤色のウェーブのかかったロングヘアー、アメジストのような濃いパープルの瞳、美人というよりはかわいいという言葉が合う顔立ち。制服のリボンは、瞳の色と同じような濃い紫で、紺色のベストを着ている。白い靴下が目立つ。

「ごめんなさぃ・・・迷惑、かけちゃって・・・」

笑いながら、私の手を取る彼女。でも、その顔は―――泣いているようにしか見えなかった。

 

 

「・・・無理をして、笑わなくていいわ。・・・ここでなら、泣いても大丈夫よ」

携帯を眺めながら続ける。

「まだ、2時間目は終わりそうにないもの・・・ね?」

そういうと、彼女は堰を切ったように、大泣きし始めた。私は、ただ黙って背中をさすった。

 

 

そのこが落ち着いたころ、私はまだ名前を聞いていなかったことに気がつき、質問する。

「貴方の名前、教えてもらってもいい?」

彼女は、笑いながら言った。

「私は、桜庭紫緒莉。1-Bだよ」

そう、といいながら、私は笑う。

「えっと・・・貴方は・・・?」

「あ・・・私ね。私は、山吹楓。1-Cよ。よろしくね」

「うん、よろしく・・・山吹さん」

“山吹さん”か・・・。なんとなく慣れない呼ばれ方。ちょっとくすぐったいから、私は言う。

「―――楓でいいわ。あと、いじめられたら、授業中でも、メールしてね?」

私は彼女―――桜庭さんの携帯の中に、自分の携帯のメルアドと電話番号を登録した。桜庭さんは、うれしそうに笑いだす。こっちまで、うれしくなってきた。

「ありがと、楓!あ、私も紫緒莉でいいよ!!」

「そう?じゃあ・・・よろしくね、紫緒莉」

そういい合うと、私たちは握手をした。

 

 

手を振りながら、校舎内へと走っていく紫緒莉を見ながら、私はつぶやく

「―――サボりって、時々いいこともあるものね」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。