「あー!楓ー!大丈夫ー!?」
「え・・・えぇ。昨日は、試合に出れなくてごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
試合の翌日、教室について真っ先に天馬に話しかけられた。そして、試合に出れなかった・・・否、出なかったというほうが正しい・・・そのことに、罪悪感を抱く。
「いいんだよ!風邪ひいたんなら、しょうがないしね!」
「・・・ふふっ、ありがとう」
ぎこちない笑みを浮かべ、私は天馬に対応する。―――天馬、熱でもあるのかしら?顔が赤いもの・・・。
1時間目。
授業は、社会。平安時代のことを学んでいる。
「平清盛は、平家を率いました。そして、その1世代後、源頼朝が出てきて、征夷大将軍に任命されます―――。」
・・・はっきり言うと、暇。今習っていることって、常識の範囲。だから大きなあくびをする。しかし、隣を見れば、天馬は真面目に授業を受けていて、ちょっとくらいまじめに受けないとな、なんて思う。
キーンコーンカーンコーン・・・
ようやく、1時間目終了のチャイムが鳴る。―――次の授業くらい、サボろう。
保健室に行くことを理由に、サボることにした。
「・・・春奈さん、体調がちょっと悪いので・・・休みます」
「あら・・・大丈夫?・・・なんて、サボるんでしょ?いいわよ、私の授業ならね♪」
―――春奈さんは、ちょっと変わっている。サボっていいなんて・・・おかしいわ。でも、そんな春奈さんが、私は大好き。
「クスッ、ありがとう」
そう言い残すと、私は教室から出た。天馬や葵が、一瞬こちらを見て、不思議そうな顔をしたけれど、私は気付かないふりをして、屋上へ直行した。
屋上に行くと、変な光景が広がっていた。
女子―――たちの悪い女子が数人、1人の女子を囲み、何かを言っている。とっさに物陰に隠れ、話の内容を聞く。
「あんた、神童先輩になれなれしいのよ!!」
「霧野先輩にもよッ!!」
「そ、んな・・・私、だって・・・」
―――要するに、女子たちのねたみ。そういえば、神童先輩と霧野先輩、学校でもモテるほうだったな、と思いながら、その話のレベルの低さにあきれながら、その女子たちのところへと向かった。
「・・・あなたたち、何しているの?」
「ッ!・・・山吹さん・・・」
「あんたには、関係ないでしょ?」
はぁ・・・と、ため息をつく。
「関係ない?・・・そうね、関係ないわ。でも、この“人として最低な行い”をしている人たちを、見過ごすわけにはいかないの」
女子たちが、一瞬ひるむ。こんなことでひるむなんて、よくそんなことでいじめられるな、なんて思う。
「・・・ッ!もう、行こうっ!!」
「・・・そうねっ」
「・・・そうだよっ」
悔しそうな顔のまま、女子たちは去って行き、私とそのいじめられた女の子だけが、屋上に残っている。サァァァァァ―――・・・と、風が吹く。
「えっと・・・大丈夫?」
私は、手を伸ばす。そして、彼女の顔を見る。
藤色のウェーブのかかったロングヘアー、アメジストのような濃いパープルの瞳、美人というよりはかわいいという言葉が合う顔立ち。制服のリボンは、瞳の色と同じような濃い紫で、紺色のベストを着ている。白い靴下が目立つ。
「ごめんなさぃ・・・迷惑、かけちゃって・・・」
笑いながら、私の手を取る彼女。でも、その顔は―――泣いているようにしか見えなかった。
「・・・無理をして、笑わなくていいわ。・・・ここでなら、泣いても大丈夫よ」
携帯を眺めながら続ける。
「まだ、2時間目は終わりそうにないもの・・・ね?」
そういうと、彼女は堰を切ったように、大泣きし始めた。私は、ただ黙って背中をさすった。
そのこが落ち着いたころ、私はまだ名前を聞いていなかったことに気がつき、質問する。
「貴方の名前、教えてもらってもいい?」
彼女は、笑いながら言った。
「私は、桜庭紫緒莉。1-Bだよ」
そう、といいながら、私は笑う。
「えっと・・・貴方は・・・?」
「あ・・・私ね。私は、山吹楓。1-Cよ。よろしくね」
「うん、よろしく・・・山吹さん」
“山吹さん”か・・・。なんとなく慣れない呼ばれ方。ちょっとくすぐったいから、私は言う。
「―――楓でいいわ。あと、いじめられたら、授業中でも、メールしてね?」
私は彼女―――桜庭さんの携帯の中に、自分の携帯のメルアドと電話番号を登録した。桜庭さんは、うれしそうに笑いだす。こっちまで、うれしくなってきた。
「ありがと、楓!あ、私も紫緒莉でいいよ!!」
「そう?じゃあ・・・よろしくね、紫緒莉」
そういい合うと、私たちは握手をした。
手を振りながら、校舎内へと走っていく紫緒莉を見ながら、私はつぶやく
「―――サボりって、時々いいこともあるものね」