俺は松風天馬。サッカー部の1年だ。
今日は、信助と一緒に、部活が休みだから、遊んでいるんだ!ちなみに、場所はサッカー塔内だけどね。
「そうだぁ!天馬ぁ、楓ちゃんの家に行こうよっ!!」
信助が、本当に突然言い出した。最初は、驚く以外にできなかった。でも、今日は楓は、部活がないんなら帰ってもいいでしょ、と早く帰ってしまったし・・・。
「そうだね!行こう!!」
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!」
ビクッと反応する俺たち。―――実は部室の中には、俺たち以外にも、先輩たちがたくさんいる。きっと理由は、暇だからだろう。
今大きな声をあげたのは、霧野先輩。あんまり話したことがないのに、なんで反応するんだろう?
「先輩、どうしたんですか!?」
信助が聞く。霧野先輩は、額に汗を浮かべている。
「か、楓の家に行くのは・・・覚悟がいるかもしれないぞ?」
覚悟・・・?いったい先輩は、何がいいたいんだろう。
霧野先輩に続き、キャプテンも霧野先輩ほどではないが、若干興奮気味で同じようなことを言う。いったい先輩たちは、本当に何がいいたいんだ・・・?
「よしっ!」
今度は霧野先輩が、勢いよく立ちあがる。
「俺も行く!!」
それを見て、キャプテンも立ち上がる。
「俺もだ!!」
―――先輩たち、本当にどうしたんですか?
・・・ということで、楓の家に行く。
行っている途中で、楓の家を知らないと気付き、知っている霧野先輩に教えてもらいながら、とある家の前にたどり着いた。―――否、これは家なのか・・・?
「・・・先輩が止めようとした理由、今なら分かります・・・」
「天馬に激しく同意です」
「・・・だろう」
そう、目の前にあるのは家というよりは、お城というべきだ。もしくは、宮殿か。庭なのかよくわからない広さの庭は、端が見えない。おそらく端まで行くのに徒歩で、5,6分はかかるだろう。
「・・・チャイム、押していいんでしょうかね・・・?」
「・・・ここまで来たんだ。当たって砕けろだろ!」
なんだか先輩の言うことも、おかしくなってきた。でも、その通りだ。
意を決して、俺が宝石のつきまくったチャイムを鳴らす。
豪邸に鳴り響くチャイム。応答する声は、楓のものではなかった。
「はい、どちらさまでしょうか」
「らっ、雷門中学校サッカー部ですっ!かっ、楓さんいますか!!」
・・・やばい、声が裏返った。恥ずかしい!・・・でも、笑える状況ではない。目の前にある門は、3~4メートルくらいある。
「ふふっ」
ノイズになって、インターホンから誰かの笑い声が聞こえる。静かに聞いてみると、その声の主は・・・
「ごめんなさい、皆さん」
「かっ、楓ぇ~!!」
その瞬間、ガチャと音がして、大きな門が開く。目の前には、楓がいた。楓は、霧野先輩のように下のほうでツインテールにしていて、濃いピンク色のふわふわしたシルエットのワンピースを着ていた。下は、茶色のショートブーツだ。
楓は微笑みながら言う。
「さぁ、とりあえず中に入って」
楓の家は、それはそれは広かった。家は5階建て、部屋の数は数えきれない・・・。
玄関のエントランスは、開いていて、目の前にはレットカーペットの弾かれた大きな階段、2階部分で、まっすぐ廊下にのびている道と、左右にさらに、3階部分へとのびる階段。3階に着くと、廊下へと続く部分の横に踊り場があり、左右それぞれの踊り場から螺旋階段がのびていて、そこから4,5階へと上がれる構造になっていた。目が回りそうだ。
ダイニングは、1階の大きな階段の下の廊下を直進したところにある、ドでかいドアをくぐったところだった。
3階部分の廊下は、玄関の上までのびていて、大きな奇麗なガラスのドアがある。そこから景色を眺められるらしかった。
楓の部屋は、4階の窓側だった。広すぎて、頭が混乱した。
「えっと・・・楓、お金持ち・・・だよね・・・?」
「・・・えぇ、一応そうね。でも、気にしないでほしいの。ううん、気にしないで」
哀しそうな瞳の笑み―――。そうだよね・・・いつもどおりにしないと・・・ううん、出来るに決まってるよね!
「わかってるよ!!当り前だよ!!」
俺は、笑顔でうなずく。
俺は気がついた。
「楓、お母さんは・・・?」
楓は、静かに微笑む。
「私のお母さんは、仕事で飛び回っていて・・・今は家にいないの。1年間に、1度会えるかどうか・・・ってところね。だから、パーティーの主催者とかは、形は母だけど、主催しているのわ私ね」
気丈に笑っているけれど、本心はきっとさみしいんだと思う。―――悪いこと、聞いちゃったな・・・。
「天馬・・・気にしちゃダメよ?」
「えっ・・・あ、あはははは」
やばい、心を読まれたな。
「それじゃあ、またね」
「えぇ、楽しかったわ。先輩方も、来てくださいね」
時間がたち、俺たちは家へと帰る。
楓は、大きい人間だ。優しい人間だ。―――そして、とても強い。
「先輩!なんだか俺、今日すっごく楽しかったです!」
「僕もです!楓ちゃんの家での姿、知れてよかったです!!」
「そうだな」
真っ赤に染まる稲妻町。そこにあるのは、4人の学ランの少年たちの黒い影だけだった。