俺―――神童拓人は、屋上に来ていて、そしてびっくりした。
まずは、楓の堂々とした言いよう。その後の心の大きさ。
2つ目は・・・シードの剣城と楓が、何らかの関係があったという事。だから、あんなに自然な会話・・・。剣城も、いつもと違う態度だった。
「・・・あ、ありがとうっ!!」
楓の照れたような声が聞こえた後、こちらへと向かって足跡が近づいてくる。やばい・・・!と思った時、すでに時遅し。
「キャ、キャプテン・・・」
「楓・・・えっと・・・」
俺が言い終わらないまま、俺は楓に手をひかれ、そのまま階段を降り、すぐ横にある渡り廊下を通り、サッカー塔へと向かった。
「か、かえd―――」
「お願いですっ、黙って・・・ついてきてっ・・・!」
息を切らしながら、楓が走る。よっぽどのことがないと、楓は息を切らすことはない。よっぽどの事なのだろうか・・・喧嘩の事がそんなにいやな事だったのだろうか。それとも・・・剣城とのことか・・・?
「はぁ、はぁ、はぁ・・・拓人さん、授業、サボれますか?」
拓人さん―――学校ではそう呼ばないが、家に帰ると、楓は俺の事をそう呼ぶ。
仕事関係というのもあるけれど・・・実は、俺たちは許婚なんだ。別にお互いの事を嫌っているわけでもないし、それでもいいと思っているが・・・恋愛対象ではない気がする。
ちなみに、俺は普通通り、楓だ。
楓が息を切らし、俺の事を拓人さんと呼ぶ・・・いったい、何があったのだろうか?
「楓、落ち着け。大丈夫だ」
楓を抱き寄せ、背中をさする。俺の方が、少し身長は高い。さっきの・・・剣城ほどではないが。
「どうしたんだ、楓・・・」
「はぁ・・・拓人さん・・・キャプテン・・・すいません」
必死にキャプテン呼びに変え、楓は椅子に座る。2人して授業はサボり、サッカー塔のソファに腰かけた。
「私、あの・・・剣城と知り合いでした・・・前、ミニゲームした時にわかったと思うんですけど・・・実は、幼馴染です」
幼馴染・・・。驚愕した。さらに、楓はカミングアウトする。
「私は・・・シードで・・・」
「え・・・」
目の前が真っ白になっていく。でも、俺はわかってしまった。楓が、入りたくて入った訳ではない、という事が・・・。
「拓人さんは、信じてくれないかもしれないけど・・・っ、私は、みんなの仲間です」
静かに楓の頬に、涙が伝う。俺は、優しく拭いてやる。
「分かっているさ。万能坂での試合、仲間だとよくわかったからな。なぁ、話してくれないか?・・・なぜ、フィフスに入ったのか」
楓は、俯いてしまったが・・・顔を再び上げて、俺の瞳をまっすぐに見つめた。
「私は、お兄さん―――誰かは、そのうちわかるんですけど、その人の頼みで、フィフスにスパイとして、侵入しました。お兄さんたちは・・・反フィフス勢力の中心です。私もその組織―――レジスタンスに入っています」
レジスタンス・・・か。そんな組織に入って、楓は頑張っていたのか・・・。そんなこと、誰にも言えるはずがない。辛かっただろうに・・・。
「楓、よく話してくれたね。ありがとう」
「ッ!た、くと・・・さんっ・・・!」
また、楓の頬を涙が伝う。
こんなか弱い女の子なのに、彼女は強い。俺は、そんな彼女の、力になりたくなった。
「楓、俺にできる事は少ない。だが、できる事があったら・・・何でも言ってくれ」
楓は、驚いたような顔をした。今度は涙は流さず、優しい笑顔になった。天使の笑みのようだった。
「ありがとうございます」
それからおれたちは約束した。
―――このことは、決して口外しない。・・・時が来るまでは。