「・・・楓ちゃん、知ってたの?」
「え、えぇ・・・てっきり、春奈さんには教えてるものだと・・・」
ちょっと雰囲気が暗いまま、私は質問に答えた。
春奈さんは、お兄さんの実の妹。幼い時に飛行機事故で、ご両親を亡くされて・・・なんだか、私とちょっと似ている。
春奈さんと円堂さんとも、10年前のFFIで知り合っていた。だから、家に帰るか、学校でも時々春奈さん、などと呼ぶ。
グラウンドの真ん中では、人だかりができていた。
どうやら、飛ばされた倉間先輩の周りらしい。円堂さんが、私の背中をたたく。
「楓、ありがとな。ほら、行って来い!」
「!!・・・わかりましたっ」
私は、みんなのところへと急ぐ。
「ちっくしょぉ・・・!蹴りかえせねぇ・・・!」
倉間先輩は、とても悔しそうな顔をしていた。私が戻ってきたことに気が付いた霧野先輩が、こっそり話しかけてきた。
「楓、監督たちと何を話していたんだ?」
「えっと・・・帝国学園の事です」
すると、霧野先輩は、納得したような顔をする。
「そういえば、楓のいとこのお兄さん、帝国学園の総帥だって言ってたよな」
あぁ、先輩には話したんだっけ。でも、それが鬼道有人さんだとは話していない。
「はい。だから、戦いにくいでしょ?・・・って、先生に言われて・・・」
お兄さんがだれなのか・・・それは、まだ言わない方がいい。キャプテンにも言っていないから・・・そう思い、言葉を少し濁した。
その話が終わると、急に霧野先輩が言った。
「おーい、神童!楓ならどうだ?FWだし、キック力もあるだろう?」
一瞬事が呑み込めなかった。しかし、私はキック力がないこともないけれど、力というよりは技・・・パワーというよりはテクニック派だ。
「しかし、楓は女子だ」
三国先輩が言う。確かに、私は女子だ。男子よりは、キック力は弱い。でも、そんな私にかけてくれようとするキャプテン。
「・・・できるかどうかわからないけれど・・・やるだけやってみます!」
それが、私の出した答えだった。
「先輩、お願いします!」
私の掛け声で、浜野先輩がボールをける。私は、後ろへ向かって走り出す。ボールが早すぎることはない。むしろ遅くて、私の方が早く着きそうだ。
何とかボールにスピードを合わせ、天城先輩の蹴った膨大なパワーのボールをける。
結構惜しいところまで行った。しかし、どうしても蹴り返せない。そして、とうとう・・・
「うわぁっ!!」
「「楓っ!!」」
私は、吹き飛ばされた。今までの先輩同様、私の周りにはたくさんの人がやってくる。私は、ただ悔しかった。ちょっと油断したら、涙が出てきそうだ。
「大丈夫か?・・・ごめんな、俺があんなこと言ったから・・・」
霧野先輩が、悲しそうな顔をしながら、手を差し伸べてくれた。その手を取りながら、私は無理やり笑った。
「大丈夫です、これくらい・・・!」
いや、結構ダメージは大きかった。長くボールを持ちすぎていた。
「最後の選手には・・・並外れたキック力が必要ってわけだ」
三国先輩が、天馬たちにアルティメットサンダーの説明をしていた。その説明を、私も少し聞いていた。
「俺にもっと力があれば・・・!」
「俺もだ・・・!」
「私もです・・・!」
同じボールをけったからわかる。あのエネルギーは、相当なものだ。
「倉間も神童も楓も、パワーよりテクニックでシュートを決めるタイプだからな」
三国先輩のフォーローは、嬉しかった。でも、あとパワーでシュートを決めると言えば、私の頭の中―――いや、他のメンバーの中にも、ただ1人の人物が思い浮かんだ。
キャプテンが、つぶやくように言う。
「剣城・・・剣城なら、あのボールをけることが出来るかもしれない」
―――その人物というのは、剣城の事だった。剣城なら、テクニックもあり、なおかつパワーもある。サッカーに置いて、これほどまでに心強い存在はいない。
「悔しいけど、あいつのパワーは、俺たちより上だからな・・・」
「パスだって、受けるのが難しいわ・・・」
でも・・・剣城は・・・敵。
「でも、あいつは来ない」
「ん~、シードなのに、フィフスセクターにたてついちゃったから、やばいことになってるのかな~」
・・・もし、そうだとしたら・・・。私はいてもたってもいられなかった。豪炎寺さんは、本当のサッカーをすることを望んでいる。やばいことをしているとしたら、真の黒幕―――千宮路大悟だろう。
「・・・キャプテン。私、フィフスと連絡取ってみます」
キャプテンだけに、そう小さく言い残し、私はグラウンドから去った。