あれから、私は私服に着替え、すぐに鉄塔広場へとリムジンを走らせた。
リムジンから降りると、風が吹いていた。今のかっこうは、本当に私服。
家にいるときは、だれが来てもいいように、セミフォーマルっぽい服。パーティーの時はドレス。
今は、黒い無地の長袖のTシャツの上から、マゼンタ色の7分丈のニットを着ている。下は、ベージュのミニスカート、靴は薄い茶色の編み込みのショートブーツだ。
「お待たせしました」
「・・・いや、待ってはいない」
鉄塔広場には、すでにお兄さんがいた。スーツのままだから、きっと帝国学園から、そのまま来たんだろう。
私が来てちょっとすると、後ろから人の気配がした。―――円堂さんと、春奈さんだった。
「フッ・・・しばらくだったな、円堂」
大人たちの間には、重苦しい空気が漂う。私はこの場にいない方がいいのでは、と思い、離れようとした。が、円堂さんに
「楓もいていいよ」
と言われたから、いるだけいることにした。
「鬼道・・・なんで、帝国学園の・・・監督に?」
「円堂が雷門の監督なら、俺が帝国の監督になって、何の不思議がある」
確かにその通りだ。
「帝国学園は、フィフスセクターの言いなりだと聞いた。鬼道、お前はフィフスセクターn―――」
「サッカーには、管理するものが必要なのだ。円堂も時期にわかる」
「兄さんがそんなことを言うなんて!」
春奈さんは、ショックなようだった。そりゃそうだろう。ずっと信じていたお兄さんが、敵の言いなりだったなんて・・・。
でも、私は知ってる。私は、言いたかった。―――お兄さんは、好きで言いなりになってるわけじゃない。理由があるのだ、と・・・。
「・・・時代は変わった。サッカーも変わった」
「変わってなんかないさ!サッカーはサッカー!楽しく自由に・・・そして、真剣にやるものだ!」
私は、泣き出しそうだった。
「ならば聞く。フィフスセクターが存在する前のサッカーは・・・正しかったのか?」
2人がひるむ。お兄さんの言ってることは正しい。でも、円堂さんの言うこともわかる。
「サッカーの勝ち負けは、フィールドで決まる。どんな理由があったって、はじめから勝負が決まってるサッカーなんて、間違っている!そんくらい・・・お前にわからない訳がないだろう?」
するとお兄さんは、ふっと微笑む。
「・・・相変わらず熱いな・・・円堂。・・・だが、熱さだけでは、世の中は変わらん。お前のサッカーが正しいというなら、フィールドで証明して見せろ」
そういうと、お兄さんは2人に背を向けた。最後に、お兄さんはこう言い残した。
「最も、雷門が我が帝国に太刀打ちできるとは思えないがな」
・・・違う、お兄さんは・・・こんなことが言いたいわけではない。だって、お兄さんは泣いていた。涙も流さず、嗚咽もせず、ただ笑って泣いていた。
「待って、兄さんっ!!」
春奈さんが、お兄さんの事を呼び止めようとする。でも、お兄さんは止まらない。
「鬼道・・・いったい何があった・・・」
「兄さん・・・」
残された2人と、私。私は、誤解されたくなかった。でも、今ばれたら意味がない。私は、言っていいことを必死で考えた。
「円堂さん、春奈さん!誤解しないでください!わかってると思いますけど、お兄さんは本当は・・・本当は・・・、サッカーが大好きです。円堂さんと同じくらい、熱い心を持っています!お兄さんは・・・泣いていました。涙も流さず、嗚咽も漏らさず・・・ただ笑って泣いているんです!わかってあげてください・・・!」
すると、円堂さんは、ふっと微笑んだ。
「あぁ、わかっているよ。だって、鬼道は仲間だからな!あれが、鬼道の本心だとは、俺は全く思っていない!」
続くように、春奈さんも笑った。
「えぇ、兄さんはあんな人じゃないもの!わかってるわ!それに・・・楓ちゃんの抱えるものの大きさも・・・ね?今は言わなくていいから、言いたくなったら・・・いえるようになったら、言ってね?」
そういうと、2人も去って行った。
残された私は、その場に崩れ落ちた。
「うぅ・・・うぅ・・・」
そして、馬鹿みたいに涙を流しながら、冷たい風に当たりながら泣いていた。