サッカー部や剣城たちは、大きな建物―――サッカー部の部室である、サッカー塔へと入って行った。
「サッカー塔・・・ねぇ・・・大きいわ・・・」
「此処が、貴方の部室になるのよ?」
私は、瑠奈にそう告げた。瑠奈は、はぁ?という顔で、私を見つめる。
「私、サッカー部に入ることになるの?半ば強制!?」
「えぇ・・・まぁ、そうね」
そのあとも、瑠奈はぶつぶつ言っていたが、それは無視して、私たちはサッカー塔の中にある、サッカーコートの観客席に座った。近くにいるのは、見た目が剣城を女化したような、ヤンキーのお手本のようなオレンジのロングヘアーの女の子と、ピンク色のカメラを持つ、三つ編みの女の子がいた。
試合スタート。
剣城率いる“黒の騎士団”VS“雷門中学校サッカー部ファーストチーム”の試合は、まるで試合になっていなかった。黒の騎士団が、何点も何点も何点も・・・やがて数えるのがめんどくさくなるほど、大量の得点をとって行った。
「まるで試合じゃないわ・・・」
そう呟くと、私はケータイをいじった。宛先は、聖帝・イシドシュウジ様。雷門の現状を、何にも隠さず、さらけ出して私は、イシド様―――豪炎寺さんに伝えなくてはいけない。
しばらくして、顔をあげて、試合を見る。瑠奈は、暇になってどこかへといった。
「・・・さて、私も行こうかしら」
そう思って、腰を上げる。
雷門の人は、なんか意味のわからないことを、ほざく。私は、思わず苦笑する。
「いや、こんなチーム、弱小だから」
観客席の階段をすべて登り切り、外へ出ようとした時だった。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
ものすごい声が、後ろから聞こえてきた。背筋が、ゾォ―――ッとした。はっと振り返ると、剣城が、化身を出していた。
「“剣聖ランスロット”!!!」
チッ、と私は舌打ちをし、急いでコートへ向かった。
「ッ!あいつ、わかってるのっ!?こんなチームに化身を使って・・・雷門が、つぶれるかもしれないのにっ!!あの、大馬鹿ッ!!」
こんな弱小チームに、化身を都市伝説だと思うチームに、化身を使ったらどうなる?それは、いけないこと。雷門がつぶれる。選手もつぶれ、サッカー自体を恐れてしまう。
―――何としても、それだけは避けなくちゃ・・・!
やっと私がコートに着くと、そこではさらにありえない光景があった。
「ウソッ・・・!神童拓人・・・化身使いなのっ!?」
恐ろしい顔をした、キャプテンの神童。その背中からは、ものすごいオーラとともに、何かが出ていた。―――それこそ、化身。
私が知らないデータだった。急いで、もう1つのケータイ(スマホ)で、フィフスの内部にある、全国の中学校のサッカー部の選手データを引き出し、雷門中ファーストチームを調べた。
「神童拓人、神童拓人・・・やっぱり・・・化身は使えないはず・・・ということは・・・目覚めたばかりなのね、その能力に」
私は、神童拓人のデータを書き換え、スマホをしまった。このスマホをなくすことは、言語道断。超重要なデータが、大量に入っている。だから、いつもは普通のケータイを使っている。
そのあと、剣城たち黒の騎士団は、退散していった。
神童拓人は、倒れてしまった。
松風天馬は、おろおろしている。
私は、その場を去った。
「あっ!楓、最後まで見ていたの?」
入学式の会場、体育館へ行くと、瑠奈が案外早く見つかった。瑠奈は、クラス表を握っていた。私も瑠奈も、1-Cだった。1-Cには、あの松風天馬がいた。一刻も早く、接触を図るべきだと、私は思った。
一方、剣城は1-Aだった。クラスでも、気を使う必要はないみたいだ。翔は1-Bだった。
シードのバランスは最高。あとは、それぞれがそれぞれの任務を、こなすのみみたいだ・・・。
「えぇ!?神童拓人が、化身を!?」
ただいま、入学式の最中。私は、横に座っている瑠奈と、小声で話している。
「えぇ。本当、データがなかったから、困ったわ」
そう困ったように笑った。瑠奈は、もう、という顔をしている。
そんな会話をしている間に、入学式は終わり、各クラスに分かれ、ホームルームを始めた。
「稲妻第二小学校から来た松風天馬です!サッカー大好きです!よろしくお願いします!!」
パチパチパチ・・・
今は、自己紹介タイム。出席番号順に自己紹介をしている。瑠奈は“つ”だからもう終わっている。今は、あの松風天馬。私は、“や”だから、あと少し。
「では次、山吹・・・山吹楓さん」
「はい」
私は、席から離れ、前に出た。
「稲妻市立小学校から来た山吹楓です。よろしくお願いします」
普段の冷静なキャラは、此処ではあまり出さない。冷静だが、皆と仲良くできるようなキャラを演じる。演じるわけでもないが、とてつもない冷静さは出さない。
ホームルームが終わる。
私は、松風天馬の机に向かう。
「松風・・・天馬くん?ちょっと、いい?」