帝国の勢いは、とどまることを知らない。
ボールさばきも見事で、敵ながらあっぱれ、とでもいう感じだ。それでも、この試合は勝ちに行きたい。否、行かないといけない。
此処で勝利が途絶えると、未来が―――本当のサッカーが、本当に消えてしまう。やっと、ほとんどのメンバーが、団結出来てきたんだもの。
「突破口は、アルティメットサンダーか・・・」
キャプテンが、横でつぶやく。確かに、アルティメットサンダーが勝利へのカギとなるだろう。でも、このタクティクスは完成していない・・・。
それでも、やらないよりやる方が、1%でも可能性がある。
「先輩っ、お願いしますっ!!」
「楓ちゃんなら、そういうって思ってたんだよね!」
先輩が、ボールをける。
「霧野君っ!」
「天城さんっ!」
どんどんパワーが大きくなっていくボール。蹴れるか、という不安も大きくなっていく。
自分らしくないし、もどかしいけど、それが今の自分。弱い自分。私だって、この葛藤を乗り越えていかないと。
「楓ちゃんッ!!」
「アルティメット・・・サンダ―――!!!」
ボールの勢いは、私の足では耐えられないほどのパワー。やっぱり耐えられなかった。
ボールはピッチから出て、いったん試合が中断した。
「すいません・・・やっぱり、私には無理なのかもしれません・・・パワーが、大きすぎるんです」
「いや、俺にだって無理だった。楓ができなくたって大丈夫だ」
「・・・次は、俺が蹴ってやる」
言い訳にさえ聞こえそうな言葉が、私の第一声。先輩方は責めたりはしない。優しいから。でも、私の中で悔しさが拡大していく。
「どうする、楓。帝国の守りは突破できないし、攻撃だって守りきれないぞ?」
「えぇ・・・でも、突破口は必ずある・・・」
そう、必ずあるはずだ。でも、見つけられないでいる今の状況。どうにかして、変えることは可能だろうか。
―――ねぇ、こんな時、剣城が・・・京介がいてくれたら・・・どんなに心強いことか・・・。
そのころ、稲妻総合病院では・・・。
病室315で、俺―――剣城は兄さんと一緒だった。気まずいだけだ。今はテレビを観ている。見ているのは、帝国VS雷門の試合。
この試合では、どうやら神童ではなく楓がゲームメイクをしているらしい。つまり、楓が司令塔だ。そして、いつか松風が言っていた必殺タクティクス、アルティメットサンダーもしていた。ファイナルキッカーは、やはり楓だ。あんな華奢な体に、パワーなんてあるはずがない。しかし、あいつは俺より強い・・・。
「いいのか、京介。行かなくて・・・」
テレビに映る松風の姿。胸の奥が、締め付けられるような感じがした。
「今ならまだ・・・試合に間に合うぞ?楓ちゃんが、司令塔みたいだし・・・。楓ちゃんのゲームメイクなら、慣れてるだろう?」
俺は反応できない。確かに、幼いころから一緒にサッカーをしてきた。神童よりはやりやすい。でも、今更そんなことはできない。何より、兄さんの体が・・・手術ができない。
「京すk―――」
「大丈夫だよ。俺が出なくても、あいつらは戦える。人数だって、ちゃんと足りている」
嘘だ。大丈夫じゃない―――俺が。正直言えば、万能坂の試合、楽しかった。
兄さんは、心配そうな顔をする。やめてくれ、そんな顔・・・。
「・・・なんか、この部屋暑いな。なんか飲み物とか買ってくるよ」
その場にいることが苦になってきたから、俺は外に出た。
「京介・・・」
俺は知らなかった。兄さんが、車いすで俺の後をついてきていることなんて・・・。
外に出て、俺はつぶやいた。
「アルティメットサンダー・・・か。俺なら、完成させられるなんて・・・松風が、言ってたな・・・」
いったん言葉を切り、目をつぶった。
「楓・・・」
俺は、楓が葛藤していることなど知らない。