帝国の勢いが、また一段と大きくなってきた。
私―――楓は、いまだに攻略法を編み出せていないし、アルティメットサンダーさえ成功しない。
そうしている間にも、帝国のチャンス。
ふと見渡すと、信助が止めようとしている。信助の中で、何かが変わればいいけれど・・・。でも、そんなこと、今の私が言えることではない。
ボールは、キャプテンの御門にわたる。霧野先輩と天城先輩が、サイドからスライディングする。しかし、2人ともかわされてしまう。
ボールは車田先輩にわたり、ピッチアウト。ふと見ると、DFたちは息切れが激しい。体力を、相当消費しているらしかった。
「さっきから、攻められっぱなしだド」
「守るので精いっぱいだ・・・」
「僕がボールを止められれば・・・」
「ちゅーか、監督は何で黙ったままなの?」
「何か指示はないんですか?」
仲間たちは、困惑する。円堂監督は、確かに一向に指示を出してこない。私は、どうすればいいの・・・?
「円堂監督・・・」
円堂監督の視線の先には、信助がいる。監督を不安そうに見つめるのは、音無先生。先生だって、実のお兄さんと戦うのは、辛いはずなんだ。
私だけが、辛いんじゃない。頑張らないと・・・。
「楓さん、雷門はなかなかしぶといな」
「生ぬるい・・・こんなやつら、俺たちなら一撃で出来るって・・・聡明なあなたにはわかりますよね?」
帝国の御門と逸見がそういってくる。脅迫みたいだ。―――負けてくれ、とでも言いたいのだろうか。
「御門、逸見、私たちはいつでも本気よ。あなたたちが何を言おうと、私たちは負けたりしないわ。あなたたちの望むことは、八百長なの?そんなサッカー、もう雷門には必要ないの」
2人の瞳をまっすぐ見つめ、言い放つ。2人は、ひるみ言葉を失う。
「そうですか・・・でも、つぶすとしたら、今だ。監督は、何を考えているんだ・・・」
お兄さんも、円堂監督と同じみたいだ。
「総帥には、総帥のお考えがある。俺たちは、総帥の命令通りに動く。それが、帝国のサッカーだ」
「俺に命令するな、雅野。帝国のキャプテンは俺だ!」
「鬼道総帥のサッカーを1番理解しているのは、俺だ」
帝国学園も、仲間割れしているみたいだった。そりゃあ・・・シードとはうまが合うわけがないわね。
雷門のみんなは、やっぱり帝国の強さに圧倒されていた。
天馬が私に言う。
「帝国学園総帥、鬼道有人。イナズマジャパンを世界一に導いた、天才ゲームメーカー。そして、円堂監督の親友。そんな人が帝国の監督なんてね」
「驚いたわね。鬼道総帥は、怖いほどの頭脳の持ち主よ。そんな人の率いるチームが、帝国サッカー部。並大抵の相手じゃないことは、もうわかっていると思うけれど・・・勝つのも難しいわ。戦術もさっきのみたいに、並みのチームじゃできないものもあるわ」
私が本当に怖い顔をしていたのだろう。天馬は微笑みながら、私に言ってくれた。
「大丈夫だよ。楓なら、キャプテンにも鬼道さんにも負けないゲームメークが出来るよ!鬼道さんだって、本当のサッカーを思い出してくれると思うし!」
天馬の優しい言葉で、私の緊張は少しほぐれた。
雷門のピンチはまだまだ続く。
ボールはすぐに奪われ、優勢に立つことも無理そう。でも、天馬も信助もあきらめない。この姿勢があれば、絶対に勝てるだろう。
ディフェンスラインをいとも簡単に抜き去り、御門にパスが渡ってしまう。御門は、ゴールに向かって走る。シュートは軽めのノーマル。三国先輩は、かろうじて止めた。
そのボールは、高く高く上がる。このままだと、また御門にわたってしまう・・・。この流れを変えられるのは・・・信助しかいない!!
「「信助ッ!!」」
私とキャプテンの声が重なる。信助は、困惑した表情。その時だった。監督が言った。
「信助!空だ!相手に向かってじゃない!空に向かって・・・とべっ!!」
私もはっとした。そうか、相手じゃなくて・・・空!信助は、ボールを止める事ばかり気にしていた。だから、ジャンプが十分でなかったのだ。
「はいっ!」
「信助ーッ!」
天馬の励ましの声にこたえるように、信助は跳ぶ。
「ぶっとびジャンプ!!」
信助が跳ぶ。ボールはカットされる。
私の心の中に、一筋の光が見えてきた・・・!