私―――楓は知っている。雷門はあきらめない。
でも、点差は2点。体力もヤバイ。こんなとき、私はどうすればいいんでしょう。
「楓っ、指示だ!」
キャプテンの声が、私の耳に届く。周りを見渡すと、御門がフリーだった。御門はキャプテンだし、化身使いだ。
「キャプテン、御門についてくださいっ!!」
指示を出すとすぐに、キャプテンは動いてくれる。こういうところが、みんなを引き付けるんだろう。
しかし、そのマークもむなしく、パスが出される。天馬と信助もカットしようとするが、やはり無理だ。そして、そのままシュート。
三国先輩は守ってくれたけど、ゴールポストに体をぶつけてしまった。
その後も捨て身のディフェンスでゴールを守りきり、此処で前半終了だ。
「ちゅーか、何とか2点で済んだなぁ~」
浜野先輩が、安堵に似た声を漏らす。私も同じような心境だ。
「でもこのままじゃ勝てないですよ・・・。せめて、アルティメットサンダーを成功させないと・・・」
速水先輩が、不安に似た声を漏らす。それにも同意してしまう。
そばでは、倉間先輩が悔しそうに下を向く。倉間先輩は優しい。私の代わりにアルティメットサンダーをしてくれて、できなくて悔しがってくれるんだから。
「倉間先輩、もう1度挑戦しましょう。挑戦しなきゃ、何も始まりません」
「天馬・・・」
―――天馬の言葉は、他の人の心にも“温かさ”を宿してくれる。
時にそよ風のように爽やかに、時に春風のように温かい。そんな、稀有な存在なのだろう。
「お願いします・・・」
「これだけやって成功しないのに、どうやって成功させろって言うんだよ!」
倉間先輩は、やっぱり悔しそうだ。
「あきらめるな!」
ふと、円堂監督が言った。
「あきらめない奴だけに、掴めるものがある!」
―――でも、雷門の雰囲気は悪い。私だって、どうすればいいかわからない。
みんなが俯く。その時だった。
「俺を出せッ!!」
聞きなれた、低い声が聞こえた。この声は・・・
「剣城・・・?」
みんなが振り返る。そこには、走ってきた剣城がいた。
「剣城っ!」
予想が確信に変わる。やっぱり、剣城だ。
「俺を試合に出してくれ!」
いつもと違う真剣なまなざし。いったい剣城に、何があったのだろう。
「今度は逃げないのか?」
キャプテンが問う。
「シードじゃない。1人のサッカープレイヤーとして・・・頼むっ!!」
みんながザワザワする。私も、困惑していたのは確か。なんで急に、そんなこと・・・。
「剣城・・・」
「信用できるわけないだろっ!!」
倉間先輩が言う。・・・それもそう。だって、剣城は・・・敵だったから・・・。
でも、私はわかっている。
―――あの瞳、嘘ついてる瞳じゃない。
あのころの・・・純粋な気持ちの頃の“京介”だ。
「円堂監督・・・」
葵が、不安そうに円堂監督を見つめる。
「・・・決めるのは、お前たちだ」
監督はそうとだけ言った。
「俺は剣城を信じます!」
天馬が、迷いなく言った。私も、もう疑いも迷いもなかった。
「・・・私も信じるわ。私は、あなたのその瞳、知ってる。ただ純粋に、サッカーが好きなその瞳を!」
「天馬、楓・・・」
信助は、迷いがあるみたいだ。でも、もう迷わない。
「剣城はいつも俺たちを苦しめてきた。前の試合で少しは信じられるかと思ったが、その後は練習にも来ない。今日の試合には遅刻する。これで信じられるか!?」
「「信じます」」
私と天馬の声が重なる。私たちは顔を見合わせ、うなずく。
「思い出してください、剣城のプレーを・・・」
「サッカーが好きじゃなければ、あんなプレー、出来るわけがないわ」
そして、私たちはうなずき合ってまた言う。
「「だから、信じます!!」」
それに続くように、キャプテンも言う。
「俺も信じる」
それを皮切りに、みんなが同意してくれる。
そして剣城は、後半から出ることになった。倉間先輩が、ダメージを受けていたから、交代だ。剣城と2トップ、小さいころの事を思い出す。
―――よかったね、剣城。
―――信じて・・・よかったわ。