京介の蹴ったボールは、相手陣内におちた。
―――私は分かる。このボールには、京介のパワーがこもっている。このボールは、絶対に止まらない。止まるわけがない。
予想的中。
相手陣内のボールは、すごいパワーを放ち、相手を散らばらせた。
「やったっ!」
短く喜ぶと、私はボールへ向かう。そして
「出てきて!大天使ミカファールっ!!」
ミカファールを発動し、そのまま必殺シュートをくらわせる。麗一くんが守ってる?そんなの、もうどうでもよかった。ただ、勝ちたかった。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
麗一君の叫び声。そこで正直、やっちゃったかしら・・・と思った。でも、終わったことは終わったこと。勝負はいつも・・・そう、真剣勝負だ。
「ふぅ・・・」
ゴールを決め、しばしの休憩。
若干長めのため息をつき、息抜きをする。
「・・・楓」
後ろから、聞きなれた中1らしくない低い声。この声の主は・・・
「京介・・・」
後ろを振り返り、私は京介と向かい合う。京介の瞳は、前に向き合った時よりも、ずっと澄んでいた。
「・・・ふふっ、奇麗な瞳。貴方には、それが似合ってる。・・・アルティメットサンダー、成功おめでとう。そして、ありがとう」
心の底からの笑顔で、私は言う。京介も、いつ振りだろう・・・というくらいの笑顔を、私に向けた。
「おまえのおかげだ。そして・・・松風の。認めたくないけど、松風にも感謝する」
「私も・・・私も、認めたくない?」
私は、ちょっと意地悪な問いかけをする。
「え、あ、いや、それは、えっと・・・!」
京介は、私の問いかけに必死になっている。なんだか、かわいい。
そう、京介は・・・本当の京介は、こうなのよね・・・。
それから、試合の流れは雷門に向く。
天馬が、新必殺技・マッハウィンドで得点を決めた。そして、京介も・・・。
京介も、必殺技のデスドロップで、得点を決めた。3-2。
―――とうとう、雷門が逆転した。
そして、そのまま試合終了。雷門は、予選突破の難しそうな・・・否、難しい帝国を、ついにくだしたのだ。
「やったぁ!勝ったねっ!」
「うん!次に進めるよ!!剣城もやったね!」
天馬と信助が、喜びまくっている。京介も一緒にいるが、巻き込まれたという感じだ。その光景を、私と先輩は眺める。
「よかったな、楓」
「なにがですか、キャプテン?」
横にキャプテンがやってきた。そして、私にとって理解できないことを言う。いったい、何がよかったのだろうか・・・。
「そうやってとぼける。楓、うれしいんだろ?剣城と一緒に、試合が出来たこと。家でだって、ずっと言ってたからな」
「た、拓人さn―――キャプテン!!」
真っ赤な顔の私をよそに、キャプテンは笑みを顔に残したまま、霧野先輩のところへ向かった。
「んもうっ!本当っ、からかうの好きなんですからぁ・・・お父様に、言いつけますよ?」
そんなキャプテンの後ろ姿に、私はつぶやくくらいで言った。もちろん、その言葉がキャプテンの耳に届くことはないわけで。
「楓・・・」
「え・・・あ、京介」
妙に安心する声。それが、京介の声なのだ。
「・・・優一さんに京介が、本当にしてあげなきゃいけないこと、わかったかしら?」
「そうだな」
目を細め、優しい表情の京介。そんな京介を見ていると、あの純粋な、笑顔ばかりだったあのころを思い出す。
「・・・貴方が笑ってて、私も笑ってて、そばには瑠奈もいて・・・懐かしいころの思い出・・・いつかまた、そうなれたらいいな・・・って思ってたの」
いつの間にか、勝手に口が動く。嫌な気はしない。むしろ、こんなに自分の気持ち、はっきりと言えたの・・・いつ振りかしら。
「・・・フッ、そうだな。瑠奈が帰ってきたら、伝えないとな」
2人で、“共に”戦ったフィールドを眺めた。
そのあと、私はお兄さんのところへと向かった。
「楓・・・勝利、おめでとう」
いつもと同じ、そんな笑みを浮かべるお兄さん。私も、いつもと同じ笑みを浮かべた。
「・・・お兄さん、ありがとうございます。ただ・・・麗一君には痛い思いさせちゃったし・・・ちょっとね・・・」
そう苦笑してみせると、お兄さんも苦笑した。
「それがGKだ。だからいいだろう。それに・・・シードもわかったしな」
お兄さんは、ちょっと得意げな顔をした。―――そう、いつも言おうとしていたこと。私は、ちょっと決心した。
「あの、お兄さん・・・ずっと言おうと思ってたんですけど・・・私、一応シードですよ?だから、シードデータならありますけど・・・」
あ・・・と言わんばかりの顔をするお兄さん。やっぱり、言わないほうがよかったかしら、なんて思っても遅い。お兄さんの顔は、みるみる疲れに侵されていく。
「・・・俺がやってきたことって・・・」
「あ、えっと・・・無駄ではないですよ!ほら、選手の強化にもなったと思いますけど・・・あ、芽さんに・・・たくさん、励ましてもらうとか・・・」
もはや文になっていない。お兄さんは、必死な私を見て笑う。
「フッ・・・いや、すまない。だが、そうだな。おまえのおかげで、帝国は強くなれたんだからな」
「そんな、私のおかげなんて・・・」
恥ずかしくなって顔を覆う私。そんな私の肩を、誰かが叩いた。
「気にするな」
「・・・佐久間さん・・・!また一段と、奇麗になられて・・・」
その人は、佐久間さんだった。佐久間さんは、奇麗になった。顔も整っているし、髪が何より奇麗。
「奇麗・・・か。楓に言われると、いやではないな。おまえは、イナズマジャパンの妹みたいなものだからな」
「ふふっ、ありがとうございます」
私たち3人は、しばらく顔を見合わせ、そして笑った。
「そうだ、楓。明日は本部に直接来い。円堂には、俺から伝えておく」
去り際、お兄さんに言われた。私は、悟った。―――明日、レジスタンスのことを言うのね。