帝国との準決勝が終わり、地区大会、残るは決勝だけになった。
決勝は、海王学園。
選手全員がシードという噂もある。でも、その噂は残念ながら本当。
私は実は、雷門じゃなくて海王に入れと聖帝―――豪炎寺さんから言われていた。まぁ、私が我が儘を言って、雷門に入ったんだけど。
「海王か・・・浪川たちの学園ね・・・」
皆がわいわい騒いでる中、私はつぶやく。浪川―――浪川蓮助とは、シード時代のよき仲間だった。
まぁ、浪川は私の1つ年上。そう、一応先輩だ。そういえば京介は、浪川のこと知っていたかしら・・・?
「・・・ま、いいか」
そう思い、私は皆のほうへと向き合った。―――浪川たち、手加減はしないでしょうね・・・。
もう2度と行くもんか、と思っていたけれど、皆のために私はあそこへ行く。
―――聖帝の待つあそこへ・・・。
朝練が終わった。
サッカー塔の別室へと向かい、1人でユニフォームから制服へと着替える。
スカートをはき終わり、靴下も履き終わった。おそらくほかのメンバーたちは、もうすでに教室へと向かっただろう。
「あ、かばんとか部室だ・・・」
かばんとスパイクを部室に忘れたことに気がつき、急いでとりに帰る。
誰もいない部室は、なんだか新鮮だった。汗にまみれた仲間たちが、泥にまみれた仲間たちが、此処で雑談をして、話し合いをして、宿題をして・・・。
なんだかんだ言っても、やっぱりサッカー部は楽しい。そんな仲間たちのためだ。
怖くなんかない。むしろ、望んで行きたい。豪炎寺さんの待つ、あの場所へ行って、海王の情報を少しでも手に入れたい。
「・・・よし、教科書とかを取ったら、すぐ行こうかな」
「あれ、楓ちゃん、帰っちゃうの?」
「えぇ、急用で・・・」
教室に帰るとすぐ、私は机の中に入れていた教科書をかばんに詰め込み、携帯で春奈さんにメールを打った。“フィフス本部へ行くので、早退します。担任には、うまく説明しておいてください”
「そっかぁ・・・気をつけてねー!あ、明日は、体育でサッカーするんだから!楓ちゃんは、うちのクラスのホープなんだから!」
そんなクラスメートの言葉を聞きながら、私はC組の外へと出た。A組の前を通る時、一瞬京介と目があったが、気がつかなかったふりをして通り過ぎた。
・・・が
「・・・どうしたんだ」
京介をごまかせるわけもなく、すぐに腕を掴まれた。
「急用。それだけ」
後ろを振り向きながら、私は答えた。
「今日は瑠奈の復帰初日だ・・・おまえがいないと、あいつは・・・」
「大丈夫、C組には、天馬も信助も葵もいるわ」
早くこの状況から、脱出したい。その願いが通じたのか、京介は納得し、私の手を放してくれた。
私は早足で靴箱まで行くと、自分のローファーをはき、走って門から出た。
「・・・よし、あとは行くだけね・・・」
「聖帝、山吹が見えておりますが・・・」
「・・・入れろ」
豪炎寺さんと黒服の男の会話が聞こえ、すぐに私は豪炎寺さん―――聖帝ところへと向かった。
「久々ですね」
「・・・そうだな。此処じゃあ、場所がな・・・会議室へ場所を移そう」
「えぇ、わかりました」
そういうと、私は豪炎寺さんについて行き、本部の奥へと入った。
「単刀直入にいいます。海王のデータ、見せてください。もしくは、スマホのほうに送ってください」
「・・・何と単刀直入な・・・」
「ですから、単刀直入に言わせていただきます、と前置きしたはず・・・」
そういいながら、やっぱり単刀直入すぎたかな、と思う。
まだ椅子にも座っていず、実は入口から入ってすぐに言ったのだ。確かに、これは驚くか。
「・・・だめですか?」
「いいに決まっている。おまえの願い事を聞かない奴は、フィフス内では本当の狙いを知らない奴だけだ」
「・・・それってほとんどじゃ・・・」
苦笑しつつ、手元にいつの間にか送られていた海王のデータに目を通した。
「海王・・・やっぱり強いわね・・・」
その言葉しか出ない私。
豪炎寺さんは、新たな訪問者が来たかなんかで、数分前に席をはずした。
今頃学校は・・・2時間目くらいだろうか。
海王のデータも手に入れ、虎丸さんにお茶とお菓子も出していただき、砂木沼さんにお土産もいただいた。もうそろそろ帰ろう。
「豪炎寺さん、もう帰ります」
「あ、わかった。また来るといい」
そういいつつ、本部のどでかい門まで見送ってくれる聖帝は優しい。
「それじゃ」
そう一言かけてから、私は家へと向かった。
「あぁ、春奈さんからの着信が、数えきれない・・・」
徒歩で本部から家までは、意外と距離があった。
私の家は広いから、別にどこにいようが親が把握しているわけではない。だから、家に帰っていようといまいと関係はない。
だから、こんな勝手な早退もできる。いけないことだけど、今日は事情があったからしょうがない。
家のドアを開け、階段を上り、自分の部屋へと入る。
そして、パソコンにスマホのデータを移し替え、またしばらくじっくり眺める。
「やっぱ浪川は強いわねー・・・あ、岬も強いかな・・・何回か1VS1でしたことあるけど・・・あら、こいつは化身使い・・・なんだ、ポーンか・・・でも、油断は禁物か・・・あ、湾田も強いなぁ・・・やっぱり、シードって強いよね・・・」
1人で色々つぶやく。そして、改めてシードの強さを思い知る。
「・・・でも、やるしかないわよね」
そう気合を入れなおし、私はレジスタンス本部へと向かった。・・・特に深い意味はなかったが。
おかしいけど、私が勝手に
C組|A組|↓ 階段 ↑|B組|特別教室
←渡り廊下
・・・とさせていただきました。
やっぱ、前を通り過ぎさせたいから・・・←