いよいよ海王戦前日。
データは、円堂監督にだけ教え、後のメンバーは知らされていない。もちろん、キャプテンもだ。
「それじゃ、今日も・・・張り切っていっちゃいますかー!」
「「おーっ!!」」
浜野先輩の掛け声に、おーっ!と答える雷門サッカー部。団結感あるよなぁ、と隣で京介がつぶやく。無論、私もそう思う。
練習が始まる。
キャプテンと霧野先輩がボールの奪い合い、三国先輩はゴールを守り、浜野先輩と速水先輩もキャプテンと霧野先輩のように・・・。
「あら、速水先輩?」
―――速水先輩の様子がおかしい。何というか・・・やる気がないような・・・。否、怖がっているようにも見えなくもない・・・?
「先輩・・・?」
「か、楓ちゃん!どうかしましたかっ!?」
・・・明らかにおかしい。でも、先輩は先輩なりに、何か事情があるのだろう。
「いえ、いつもの先輩らしくなかったから・・・大丈夫ですか?」
「は、はい」
「なら、よかったです」
今は、そっとしておくことがいいのだと思う。
そばでは、天馬が練習を重ねている。この様子なら・・・勝てるかも・・・しれない。
そうだ、今は希望を持つべきだ。
練習は夕方まで続いた。
昨日は練習に参加していないから、私はちょっと長めに練習をすることにした。京介や瑠奈には迷惑をかけない。2人は、優一さんのところへ行くそうだ。
「それじゃあね、楓」
「うん、また明日ね」
簡単なあいさつを済ませ、2人はグラウンドから去った。ほかのメンバーたちも、ちらほら帰り始めている。
「楓、まだ帰らないの?」
「天馬・・・うん」
汗だくの天馬が、私のところへやってくる。天馬は無邪気に笑いながら、
「それじゃ、明日頑張ろうね!!」
そういうと、サッカー塔のほうへと走って行った。葵も一緒だ。ほかのマネージャーたちも一緒。
「・・・さて、新しい技でも作れたらいいかしら」
そう自分に気合を入れると、とりあえずグラウンドを走った。
「あれ、楓・・・帰ってないのか?」
「偉いじゃないか」
「キャプテン・・・霧野先輩・・・お疲れ様です」
もう人はいない、そう思っていたころだった。キャプテンと霧野先輩がやってきた。2人はまだ、ユニフォームだった。
「楓は、何をしているんだ?」
「・・・新たな技の完成ですかね」
「へぇ、技か・・・いいな、シュート技か?」
「えぇ、そんなところです」
この2人といると、なんだか落ち着く。それは、2人が大人だからだろうか。
すごく大人びていて、他人のことにはあまり口出ししないのに、慰めてほしい時だけそういうことに気がつく。敏感で、頼れる存在だ。
「・・・よし、俺も手伝う」
「俺もだ!」
「えっ?」
急にいい始めるのだから、これは驚き。でも、2人の優しさに心が温まる。
「ありがとうございます」
笑って答える。―――今から始まる、3人だけの特訓が。
「ッ、はぁ・・・はぁ・・・またダメかぁ・・・」
「クソッ、あと少しなんだけどな・・・」
「何が足りない・・・!」
あれから時は流れ、いつの間にか7時過ぎだ。でも、練習をやめるつもりはない。
監督はいるみたいだから、グラウンドは9時くらいまで使える。
今練習しているのは、シュート技。3人でシュート技を作ろう、ということになって、練習しているのだ。
しかし、なかなかうまくいかない。
「パワーは十分なはず・・・後は、私の蹴りあげる力かしら・・・」
「いや、俺の蹴り落とす力だ」
「いや・・・神童も楓も十分だ。俺が・・・」
3人とも、何が足りないのかがわからない。
技のやり方は、私がボールを上にけり上げて、蹴りあげたボールの勢いそのまま、2人が蹴り落とす、というものだ。
「そうだ、技名・・・どうしましょうか」
そういえば、と私が切り出す。2人は、あ・・・という顔をする。
「そうか、イメージが足りなかったんだな」
「そうかもしれない」
3人でうなずき合い、声を合わせて言う。
「「「もう一度、やろう/やりましょう!!」」」
技名を決めたそのボールは、パワーがさらに上がって、形になった。―――成功だ。
「やった・・・」
「やったな・・・!」
「できたぞ・・・!!」
私たちは、顔を見合わせてハイタッチをした。
「これは、海王戦に役立ちますよ!絶対に!!」
「あぁ!明日、頑張ろうな!」
「あぁ!当り前だ!」
私の心の中には、温かいものがあった。この技は、お兄さんに頼まれていたものだ。いつか作ってほしい、そんなことをいつか言っていた。
―――お兄さん、叶えられましたよ・・・すごく信頼できる仲間と・・・!
雷門の女性エースストライカーと天才ゲームメーカーとDFの要の合体技―――
その名は・・・“皇帝ペンギンアルティメット”