海王戦当日。
「・・・よし、みんな揃ったな!」
円堂監督が点呼を済ませ、皆で意気込んでいる時だった。俺―――神童は気がついた。
楓が、速水のことを心配そうに眺めることを。そういう速水も、いつもに増してネガティブそうだ。一体、どうしたというのだろうか・・・。
そんな時だった。足音がして、そちらを振り返る。そこにいた人物を見て、言葉を失う。
そこにいたのは、剣城―――フィフスセクターに負けた際、退部してしまったセカンドチームのキャプテンと、その一員の、一乃と青山だった。
「青山、一乃・・・」
キョトンとする円堂監督に、音無先生が
「元サッカー部です」
とフォローを入れる。
「・・・何か用か」
少し冷たい車田さん。そりゃそうか。一度2人は、恐怖に負けてサッカー部をやめたのだから。
「は、はい」
青山の、ちょっとおびえたような声が聞こえた。
「俺たち・・・また、サッカーがやりたいんだ」
皆は驚いたようだった。でも、俺は待っていた。
俺は知っていたから。―――2人が、本当はサッカーが大好きだということを・・・。サッカー部が練習していないとき、こっそりグラウンドでボールをけっていて、その場面に遭遇したことがあった。
「今更復帰したいとか、調子いい奴とか思うかもしれないけど・・・皆のサッカー見てたら、もう一度サッカーやりたくなったんだ!」
そうだ、その言葉を待っていた。
しかし、ほかのメンバーたちは困惑を深める。どうすればいいのか、と悩んでいるのだろう。
俺は、一息置いてから、2人の前に歩み出た。
「待ってたぞ」
俺が笑顔でそういうと、2人ははっとしたようにこちらを見た。
「神童!?」
車田さんが、驚いた声を出す。
「こいつら入れる気か!?」
「はい」
何の迷いもない。サッカーが好きな奴が入るのが、サッカー部なのだから。
「はいって・・・フィフスセクターが怖くて、逃げ出した奴らだぜ?」
「けど、戻ってきてくれた。俺たちのサッカーを見て、もう一度フィフスセクターと戦おうと決心してくれたんだ。だったらそれでいいじゃないか。それに、俺たちがやろうとしている革命は、まさにそういうことじゃないのか?」
こんなに思っていることをはっきり言える。俺自身、気持ちがよかった。
「どうゆうことだド?」
「もちろんホーリーロードで優勝して、イシドシュウジから聖帝の座を奪うことも重要だ。でも、俺は思う。本当の革命は、俺たちのサッカーを見たひとが、サッカーの素晴らしさを思い出して、それを取り戻すために立ちあがってくれることじゃないかって。俺たちだけじゃ革命は起こせない。革命には、サッカーを愛する者皆の力が必要なんだ」
「キャプテン・・・!」
天馬が、笑顔をこちらに向けてくる。
「ステキ・・・!」
山菜が、周りに花を浮かべるような感じで、そんな恥ずかしいことを言ってくる。
「そ、そりゃそうかもしれないが・・・」
「まーいんじゃないんすか?戻ってきてくれたし」
車田さんの反論を、浜野がこう言って収めてくれる。
「やっぱ、仲間は1人でも多いほうがいいんだし」
「・・・わかったよ」
まだ難しい顔だったが、車田さんも認めてくれた。
「ありがとうございます!」
「俺たちも、全力で戦います!」
2人の意気込みを聞くと、円堂監督がこういう。
「よーし、それじゃあ出発だ!」
雷門のフォーメーションは、剣城、倉間、楓のFW3トップを先頭に、俺、天馬、浜野、速水のMF、車田さん、天城さん、霧野のDF、そしてGKが三国さんだ。
おそらく楓は、このチームのキャプテンとも面識があるのだろう。お互いに目線をぶらさず、まるでにらめっこでもしているかのように、険しい顔つきだ。
「雷門・・・ひねりつぶしてやるぜ!」
そんな脅しも、もう効かない。俺は、さっき気になった速水を見る。速水の顔は、やっぱりネガティブそうだ。恐れているのか・・・?
ピ――――ッ!!
ホイッスルが鳴り、相手ボールで試合スタートだ。
しかし、海王は速い。倉間をいとも簡単に抜き去った。俺と天馬でとめにかかる。しかし、その時だった。
「はっ!」
そういうと、相手は高く跳び上がった。俺たちは、かわされたのだ。
そのボールは、どんどんパスされていく。そして、湾田という奴のところでパスは終わり、そこから攻め上がってくる。
「行かせるかァ!」
剣城が後ろから攻める。しかし、剣城は攻めにくいんじゃないのか?
正しい方向へと進んだけれど、一応“裏切り者”でもある。顔見知りとの試合はやりにくい、と楓も言っていた。
帝国戦のときは、GKが雅野という楓の盟友だったため、シュートを打ちこむのはちょっとためらったりしたらしかった。―――そうは見えなかったが、心の葛藤か?
はげしいボールの奪い合い。どちらがとるか、予想もつかない。
「負けるなー!剣城ー!」
青山の応援も効いたのか、剣城はボールを奪った。しかし、そのボールはすぐに奪われ・・・
「やばいわ!岬がフリーっ!」
楓が気付いた時には、もうボールは喜峰という奴にわたっていた。そして・・・
「フライングフィッシュ!!」
―――必殺シュートだ。三国さんは、バーニングキャッチでとめようとする。が・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
・・・入ってしまった。1点先取したのは、相手だ。
「だから無理なんですよ・・・革命なんて・・・」
後ろで速水がつぶやくのが、かすかに聞こえた。確かに、今のままの俺たちじゃ無理かもしれない。でも、絶対に革命は成し遂げられる。