「所詮、俺たちの敵じゃねぇな」
相手のそんな言葉が聞こえてくる。悔しいが、開始早々のビハインドはきつい。
そう、奴らの身体能力を考えると、1VS1じゃ太刀打ちできない。俺は、考えて指示を出す。
「剣城、天馬!パスをつないでいくぞ!楓、倉間!フォローを頼む!」
4人は、しっかりとうなずいてくれた。
再び試合が始まる。
「神童っ!」
倉間が俺にパスをした。ちゃんと受け取れたが、目の前には敵が迫っている。
「楓っ!」
楓にバックパス。そのボールは、ちゃんと楓の足に届いた。そして、離れたところにいる剣城にダイレクトパス。
「京介っ!」
ちゃんとボールを受けた剣城。よし、パスはつながった。
しかし、また目の前に敵がやってくる。だから、また天馬にバックパス。
「松風っ!」
天馬もボールを受け取り、得意のドリブルで上がって行く。しかし、天馬の前に相手キャプテンが立ちふさがる。
さぁ、どうする、天馬。
「倉間先輩っ!」
天馬は倉間にパスをだし、なんとかボールをつなぐ。そして、そのまま倉間が上がる。
「サイドワインダー!」
倉間の必殺シュート・サイドワインダーを相手ゴールにぶち込む。果たして、結果は。
「ハイドロアンカー!」
相手GKの技により、シュートはブロックされてしまう。
そのまま海王の勢いはヒートアップしていき、海王の怒涛の攻撃が、俺たち雷門イレブンを襲う。
一向にボールはとれないし、だからパスなんてできるわけがない。
「剣城、倉間、楓!守りを固めるぞ!!」
俺はFW陣に下がるよう指示を出し、自分も下がる。このままじゃ、ゴールを許してしまうだろう。
浜野もディフェンスに入るが、かわされてしまう。くそ、海王は強い・・・。さすが、全員がシード名だけある。化身が使えなくたって、十分強い。
そのあとは、雷門も懸命の守りを続けた。しかし、それと同時に体力消耗もすごい。
いつの間にか相手キャプテンの浪川にボールが渡る。天城さんと霧野が止めにかかる。が・・・浪川は、喜峰にパスを出した。つまり、まだ海王ボール。
もう1点入れられる、誰もがそう思った時だった。飛び出す影が見えた。
「天馬!?」
そう、それは天馬だった。
天馬は、喜峰に新必殺技・スパイラルドローをくらわせ、ボールを奪う。そしてガッツポーズ。
「松風っ!」
剣城の声に応じ、天馬が剣城にパス。パスは奇麗に通った。
そして雷門のカウンター攻撃。剣城からボールを奪おうとした奴がいた。しかしそいつを、剣城は可憐なボールさばきで簡単に抜いていく。さすが、元シードだ。
―――仲間となった今は、心強い。
そして
「デスドロップ!」
剣城の技・デスドロップがきまる。
なんとか1-1だ。しかし、この1点は大きい。何て言ったって、天馬の新必殺技が出来たのだから。
「やったね、天馬。練習していたの・・・知ってたわ」
「楓・・・うん!やったよ!」
うれしそうな天馬。このまま勢いが続けばいいんだが・・・。
海王ボールで試合再開。
「いくぞ、野郎ども!!」
浪川の掛け声に、相手が一致団結する。楓の表情が、一気に強張る。斜め後ろの俺を振り返り、
「気を付けてください。・・・化身を、出してくるかも」
・・・そうか、本気はこれから、とでもいいたいのだろうか。
それ通り、海王の動きは今までと違うものになった。もっと素早く、もっと強い・・・。そして、とうとう動いた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!音速のバリウス!」
「来たっ、湾田の化身!!」
海王側が、化身を出してきた。そして、猛突進してくる。俺と天馬が飛ばされる。
「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
そして、そのまま浪川にパス。
「やばいッ、浪川に渡っちゃった!!」
楓の表情がさらに強張る。ということは、まさか、こいつも・・・。
「出てきやがれ!海王ポセイドン!!」
―――やはり、化身使いだった。
「はぁぁぁ!くらいやがれぇぇぇぇ!!」
そういいながらのシュートは、技こそ使っていないものの、パワーは半端じゃない。三国さんは吹き飛ばされ、ゴールが決まってしまった。
2-1。また突き放された。
そのあと、車田さんがボールを奪ったが、俺と剣城と楓―――化身使いはマークされ、思うようにパスが出せない。どう指示すればいいのかもわからない。
その時、天馬が車田さんにパスを要求する。車田さんはパスを出す。パスはつながり、天馬が上がる。しかし・・・
「天馬っ、だめ!!」
「え!?」
楓が叫んだときには、もう別の叫びも聞こえていた。
「精鋭兵ポーン!」
3人目の化身使いだ。天馬はあきらめず、突っ走る。その時だった。天馬の後ろから、ダークブルーの何かが出てきた。まさか、あれは・・・。
しかし、ボールは奪われてしまう。
そしてまた喜峰にわたる。そして、またゴール。3-1。絶望的な点差だ。
そして、前半が終わった。
そこで、俺たちは衝撃的な監督の指示を聞く。
「「「えぇぇぇぇ!?天馬を・・・キーパーに!?」」」
円堂監督は真顔のまま、指示を出す。
「天馬のポジションには、霧野が入れ」
霧野は、戸惑い気味にうなずく。
「三国、おまえはサイドバックだ」
三国さんは驚く。否、皆が驚く。・・・天馬がGKなんて、そんな無茶ぶり・・・。
「どういうことですか!一度もキーパーをやったことのない天馬を、キーパーにするなんて!」
車田さんが、半分怒りモードで聞く。―――監督は、三国さんじゃゴールを守れないとでも思ったのだろうか。化身には化身、とでも思ったのか。
でも、それなら俺や剣城、楓のほうがずっと・・・。
「もちろん、勝つためだ」
まじめに言う円堂監督。皆、意味が理解できない。
―――だが、楓と剣城は分かったみたいだ。2人で顔を見合わせ、うなずき合っている。
「監督の言うとおりにやってみよう」
三国さんが、意を決して言う。少し反対の声も混じったが、三国さんはそのまま天馬に歩み寄り、天馬の肩に手をのせた。
「頼んだぞ、天馬」
天馬は天馬で、困惑しているようだった。
でも、瀬戸と信助の励ましにより、なんとかやる気になったらしい。
この采配が、はたして吉と出るか凶とでるか・・・。