とりあえず地区大会がひと段落したとある1日。
私―――瑠奈たちのいる雷門中学校に、とある男の子がやってこようとしていた。
「あっ、瑠奈!おはよう」
「あ、おはよう、楓」
いつもの通学路。京介は日直かなんかで、いっしょじゃなかったが、途中楓と会った。
「この前の試合、すごかったわね。特に、キャプテンと霧野先輩との・・・」
「アルティメットー?あれは、お兄さんから頼まれてたやつなのよ」
2人で登校して、校門の前へとやってきた。そこで見たのは、見覚えのない青い髪の子。私は、いつもの癖でとっさに楓の後ろに隠れた。
「大丈夫よ、今は貴方はポニーテールにしているし、眼鏡をしているでしょ?」
そうだった、今は変装中だった。だから、ばれる心配はないだろう。まぁ、眼鏡はうっとうしいから、サッカー部だけのときは変装なんてしない。
その男の子がいなくなって見えたのは、天馬と葵だった。
私たちは4人で教室へ向かい、HRまで時間をつぶした。そして、HRで彼はやってきた。
見覚えのある青い髪、人の良さそうな顔。
黒板に書かれたのは―――
「今日からこのクラスに転入することになった、狩屋マサキ君だ。皆、なかよくな」
担任の先生が言う。狩屋マサキ君か・・・。
「狩屋マサキです。よろしく」
優しそうな声。でも、なんか・・・うまく言えないけれど、違う・・・。この狩屋君は、本当の狩屋君じゃないような・・・。
「席はあそこのあいている席だ。松風」
そう先生が言うと、天馬が立ち上がって案内した。
「はい、こっちだよ」
「ありがとう」
「今朝、校門の前で会ったよね。俺、松風天馬。よろしく!」
「うん、こちらこそ」
2人はそう会話をして、それぞれの席に着いた。
HRが終わり、天馬、葵ちゃん、西園君は真っ先に狩屋君の席へ向かった。
「ねぇ、狩屋君は部活、どうするの?」
私は楓の席へ行き、2人して聞き耳を立てた。
「んー・・・サッカー部に入るつもりだけど」
へぇ、サッカー部か。私と楓は、顔を見合わせただけだったが、あの3人というと・・・
ギャアギャアはしゃいでいる。そんな3人を見て、私たちは苦笑する。
でも、私はやっぱり感じた。
―――なんだか、狩屋君って、怖いかもしれないわね・・・。
ちょっと怖いから、私の正体もばらさないようにしようかしら・・・。そのことをよんだように、楓が言う。
「あの子には、貴方のことを言わないほうがいいかもね」
「・・・そうね」
放課後、私たちも3人・・・否、4人と一緒に部室へ行く。
ウィィィィィン・・・と音を立ててあく自動ドア。ドアの向こうには、先輩たちも監督もいた。
皆、狩屋君を見て疑問に思ってる。
「君は?」
キャプテンが聞く。
「サッカー部に入りたいんです」
「入部希望者か・・・」
「転入生なんです。狩屋マサキ君」
天馬が紹介すると、狩屋君は頭を下げながら
「よろしくお願いします」
と言った。その時、私は見てしまった。
―――狩屋君の目つきが、一瞬鋭くなったところを。怖かった。楓のセーターの裾を、思わず強く握ってしまった。
「瑠奈?大丈夫?」
心配そうに顔を覗きこんでくる楓。そんな楓に対して、私は無理やり微笑む。
「えぇ、平気」
楓の顔は、まだ心配そうだった。
「そんじゃー今日の練習は、まず入部テストっすかー?」
浜野先輩が、監督に聞く。そうだ、楓に聞いたことがある。雷門サッカー部は、入部テストがあるって・・・。
狩屋君は驚き、天馬と西園君はあちゃー・・・という顔をする。どうやら、忘れていたらしかった。
でも、円堂監督はちょっと質問をしただけで、入部を認めた。
監督いわく、これが入部テストらしい。
「サッカーをやりたいやつが入るのが、サッカー部だからな」
楓が、横でボソッとつぶやく。
「ふふっ・・・円堂さんらしいわ」
そういった後、楓ははっとしたような顔をして、こうつぶやいた。
「・・・ヒロにぃが確か・・・」
そういうと、楓はケータイを片手に持ったまま、部室からさりげなく出た。
楓が戻ってきたころ、皆が練習を始めた。
楓は、今日はマネージャーをするとか言って、制服の上からサッカー部専用のではない、学校既定の1年生のピンク色のジャージの上を羽織った。
「楓、体調悪いの?無理しちゃだめだよ?」
「大丈夫よ、葵。今日は、そういう気分なの」
「何、京介みたいなこと言ってるの?・・・なんてね」
私たちがベンチで話していると、監督の指示が飛んだ。
どうやら2VS2で攻撃と守備に分かれて戦うらしい。最初の攻撃は、天馬とキャプテン。守備は霧野先輩と、狩屋君だった。
「いきなりじゃない・・・」
困惑の声が出たが、監督は実力を見るためにこんなことをしているのだと思い、その光景を眺めていた。
キャプテンが監督からのボールをもらい、霧野先輩と一騎打ち。そのすきにボールは天馬へ渡る。天馬は、狩屋君を抜いたのはいいが、振り切れない様子だった。そして、狩屋君ははげしいプレイで、天馬からボールを奪った。
驚きの声が上がる。しかし、2人は気にした様子はない。
まぁ、天馬の性格が性格なので、しょうがないのかもしれないが。
狩屋君は、キャプテンに褒められてうれしそうだった。しかし、霧野先輩に注意され、また怖い目つきになった。
葵ちゃんと瀬戸先輩が狩屋君を褒める中、山菜先輩がつぶやく。
「でもなんか・・・怖い感じ」
先輩も見ていたのかどうかは分からないが、感じているらしい。
「ですよね、山菜先輩も思いましたか?」
私はそう聞いてい見たが、先輩は
「茜でいいよ」
とほほ笑んだだけだった。
「よーし、次の組、行くぞ!」
円堂監督がそういうと、次の4人が入った。監督がボールをける。
しかし、そのボールは選手のところには渡らず、ある人で遮られた。
その人は―――