瑠奈のお別れパーティーが終わり、私はしばらくぼーっとする日々が続いた。瑠奈のことは、覚えていない人のほうが多く、私はなんだか悲しかった。
「楓ー、部活いこー!!」
「・・・天馬、葵、信助」
そんなとき、いつも来てくれるのが、同じサッカー部の3人。なんだか、すごく温かい気持ちになる。この3人には、とても感謝している。特に、天馬には、もう・・・。
いつまでたっても、こんなんじゃ駄目ね。私も、もっと強くならないと・・・。
「えぇ、わかったわ。部活―――サッカー、やりましょ」
この3人の、無邪気な笑顔が、私は大好きです。
「こんにちわ~」
私たちは、そろって部室へ向かう。その途中、私は剣城を見つけた。私たちと、逆方向に進むアイツ。私は、3人に断って、剣城の跡を追いかけた。
私が、剣城に追いついたのは、学校を出た後だった。私は、足が速いほうだといわれる。50メートルそうは、7秒2だけれど・・・。
しかし、剣城は明らかに、私よりはるかに速い。なぜか、全力疾走をしている。私も、懸命に追いかけた。
「え・・・此処って・・・優一さんの・・・?」
私が剣城を追ってきたのは、病院だった。剣城がフィフスに入った理由―――それは、お兄さんの優一さんのためだ。
剣城が、幼かった頃、剣城兄妹でサッカーをしていたらしい。しかし、そのボールが、高い木の上にあがってしまった。優一さんと瑠奈の忠告も聞かず、剣城はボールを取りに木に登った。
そして、ボールはとれたが・・・剣城が持っていた木の枝が、ボキッという音を立てて、折れてしまった。落ちる剣城。叫ぶ瑠奈。そして、かばいに入った優一さん。
剣城は、優一さんにかばわれ、幸い無傷に近かった。・・・が、優一さんは、足が動かなくなってしまった。
優一さんの足を戻す手術は、一般の家庭が、一生かかっても出せないような金額。しかし、フィフスに入れば、その全額負担するという約束になったらしい。
気がつけば、剣城は前を進んでいる。もう歩いていた。私は、小走りであとを追った。
「剣城っ!」
「ッ!?てめぇは・・・ッ!?」
私は、後ろから剣城の名を呼ぶ。呼ばれたほうは、驚いて目を見開く。そして、自然と歩みが止まった。
「剣城っ!優一さんのお見舞いっ?ならっ、わたしもっ・・・行くわっ」
息があがったまま、私は言った。剣城は、私を睨みつけた
「来んなッ!!」
ドキッとした。
昔のように、優しい彼は、どこにもいなかった。でも、此処で食い下がる私でもない。私も、剣城を睨みつけ、告げた。
「いいえ。私は、瑠奈の代わりとしていくわ。それなら・・・いいでしょ」
舌打ちをした剣城。でも、私は付いていく意思を固めていた。
「・・・ッ!勝手にしろ」
私は、剣城の数歩後ろを歩いた。
すぐに、優一さんの病室に着いた。その瞬間、剣城の表情が変わる―――すごく、優しげな顔。
あぁ、やっぱり、優一さんは剣城にとって、かけがえのない存在なのね。
「兄さん、今日は・・・サッカー部の人を連れてきたよ」
「こんにちわ」
私は、恐る恐る顔をのぞかせた。優一さんとは、1、2回、幼いころにあったきりで、私も顔はあやふやだった。
しかし、優一さんは、私を見るなり、目を見開いた。
「えっ!?楓ちゃんっ!?」
「っ!・・・覚えていてくださったんですか?」
驚いた。優一さんは、私のことなんか、忘れていると思っていた。
「忘れるわけないよ!だって、京介と瑠奈の、大切な“友達”だからね」
“友達”か・・・。
私は、瑠奈のことを、笑って送り出せなかった。結局、空港で泣いてしまった。
剣城とは、今の関係は、険悪・・・。
そんな私でも、“友達”なのかしら・・・ね。
それからしばらく、私は優一さんと話をしていた。剣城との険悪な関係は、お互いに知られたくなかったから、出来る限り話とかをしてみたけれど、話ははずまなかった。
―――やっぱり、来るんじゃなかったわ。
「それじゃあ・・・失礼します」
「うん、また来てね」
私は、重い足取りのまま、家へと帰った。
帰る途中、見たことのある影があった。
「霧野・・・先輩・・・?」
ピンクのお下げと学ランが、妙にマッチしている美形・・・間違いなく、霧野先輩だった。
「あ・・・楓・・・」
向こうも私に気がついたみたいだった。そして、こちらを向いた。私は、話しかけるんじゃなかったと思った。霧野先輩は、泣いていた。
「先輩っ!?どうされたんですか・・・っ!?」
「あ、いや、これは・・・」
先輩がいい終わらないまま、私は先輩の腕をつかんだ。
「私の家に、来てください!もう外も暗いですから!」
「えっ!?」
私は、霧野先輩とともに、帰路を急いだ。