狩屋がやってきた翌日・・・
俺―――剣城は、今、自分の部屋のベットに横たわっている。
理由は簡単だ。風邪をひいた、それだけだ。
それだけ・・・といいたいが、実は意外としんどい。しかも、俺は瑠奈との2人暮らし、看病をしてほしいわけではないが、瑠奈は学校へ行かないといけないため、してくれる人もいない。
体中が重く、熱い。これは、かなりの高熱かもしれない。
「・・・とりあえず、学校には行くか・・・」
此処にいてもどうしようもない。そう思い、俺は重い体を起こし、瑠奈の待つリビングへと向かった。
「あ、おはよう、京介。遅かったじゃない」
「あぁ・・・昨日、遅くまで起きていたからな」
言い訳をしながら、いたって平静を装いながら、席に着いた。
テーブルの上には、瑠奈が作ったのだろう、目玉焼きとフルーツヨーグルト、ポタージュとバタートーストがあった。
「早く食べちゃってね、今日は私、撮影だから学校に行かないから・・・」
そうだった。瑠奈は撮影だった。そんなことも忘れてしまうなんて、やばいんじゃないか・・・。
「そうだったな。なら、片づけは俺がやっとく。早く行くといい」
これ以上いると、ばれてしまう気がしたから、俺は瑠奈に出るように促した。瑠奈は、笑顔でありがとう、といいながら玄関を出た。
そのあと、俺はベットに戻ったから知らなかった。
―――瑠奈が、楓に電話していることなんて。
しばらく横になっていると、すぐに眠くなってきた。
布団は柔らかいし、自分の時間が得られる。朝練の時間に起きたから、後1時間ほど寝ていても問題ないだろう。
そう思い、俺は制服の学ランを脱ぎ、ベットに横たわった。
ピンポーン
誰かが来たらしい。俺はケータイを見る。もう1時間たっていた。
「誰だ・・・こんな朝っぱらから」
まだ重い体を起こし、俺は玄関へと向かった。
「はい、どちら様ですか」
そういいつつ、俺は玄関のドアを開けた。そして、思わず大声を出しそうだった。
「京介、大丈夫?」
「な、なんでお前が・・・!?」
そこにいたのは、楓だった。今から学校だし、その前に朝練行っていたはずの楓が、なぜ俺の家にいるのだろうか。―――わかった、俺は熱のせいで頭がおかしいんだな。
「あぁ、そうか、俺は幻覚を見ているのか」
そう呟きながら、玄関のドアを閉めようとした。しかし、ドアは閉まらない。楓が引っ張っているらしい。
「幻覚って・・・貴方、本当に大丈夫?私は幻覚なんかじゃないし。熱なんでしょ?」
制服を着て、かばんを持って目の前に立っている楓が、幻覚じゃないと実感する。その瞬間、体中から力が抜け、その分体が重くなり、俺は倒れてしまった。そこからの意識がない。
次に目を覚ましたのは、10時くらいだった。
一瞬、朝のことは夢じゃないかと思ったが、夢じゃなかったことはすぐわかった。
俺の部屋にある椅子にすわり、うとうととしている楓が目の前にいた。そばにある机の上には、冷えピタや水や薬や・・・いろいろなものがきちんと並べて置いてあった。
「楓・・・」
小さな声で呟いたつもりだったのに、楓はパチッと目を覚まし、俺のほうを向いた。
「あ、よかったぁ。目、覚めたのね」
ニコニコしている楓を見て、安心した半面、少しの疑問を感じた。
「お前・・・学校は?」
楓は、苦笑いをしながら、座っている椅子の横に置いてあるかばんを指差した。
「休んだ」
俺は、ベットから立ち上がり、楓のそばに歩み寄った。
「はぁ?何やってんだ。俺のことはいいから、今からでも学校に行けばいい」
楓は、優しく微笑んだ。
「いいの。だって、このままじゃ心配でさ・・・授業に集中できない」
―――何てお人よしな奴だ。俺なんかのために、学校を休むなんて・・・。
「俺なんかのために休むなんて、何て奴だ!・・・とか思ったんじゃない?私がしたくてしてるの。気にしないでね」
一瞬ドキッとしたが、それは悟られないように努めた。なんで、こんなに分かっているんだ・・・。
そのあとも、楓はいろいろなことをしてくれた。
お粥も作ってくれたし、家事もすべてこなしてくれた。悪いな、と謝ると楓は、家ではしたくてもさせてもらえないから、いい経験よ、と笑顔で言った。
そうか、こいつは財閥令嬢か。
「しんどくない?」
「あぁ、大丈夫だ」
時間が空けば、俺の心配ばかりする。途中で、楓はリビングへと向かった。俺に対して、ちょっとだけ寝ろ、という意味なのだろう。
それからすぐ、俺は眠りに落ちた。
次に起きると、リビングが騒がしかった。
階段を静かに下り、リビングのドアを開けてみると・・・。
「な、お前たちがなんで・・・っ!?」
「あ、お邪魔してるよー!」
「同じく!」
「同じく!」
そこにいたのは、松風、西園、空野、楓だった。楓以外の3人はニコニコしているが、楓は苦笑に似た笑みを漏らす。
「ごめんね、京介。さっき買い物に行ってたら、学校帰りのこの子たちと会っちゃって・・・学校休んだ理由を聞かれて、理由を話したら、ついてきちゃって・・・」
はぁ・・・とため息を漏らしたが、いまさらどうしようもない。というか、なぜ自分の家のようにくつろいでいるのだろうか。
その時、まためまいが起こった。俺は、壁にもたれかかった。
「剣城!?」
松風が近寄ってくる。そして、無理やり肩に手を回し、2回の俺の部屋へと連れて行った。
それから、また寝てしまった。一体、今日は何時間寝ているのだろうか。
今回の眠りは浅く、30分くらいで目覚めた。
そこにいたのは・・・
「あ、起きたんだ。大丈夫、剣城君?」
―――空野だった。俺は、体を起こし、空野を見た。
「ごめんね、楓じゃなくて」
いたずらっぽく微笑んだ空野に、俺は動揺する。今、こいつは何と言った?楓じゃなくて・・・?
「な、何を・・・!?」
「あはは、剣城君ってばわかりやすーい!」
腹を抱えで笑う空野に、ただ戸惑っていた。その時だった、松風がやってきた。
「葵、交代だよーって、剣城!起きたんだ!」
俺を見て目を輝かせる松風。あきれるしかなかった。
その声に引き寄せられるように、楓と西園もやってきた。2人は、顔を輝かせ、部屋に入ってきた。そして、楓は俺の額に手を当てた。
「よかった、もう熱は下がったみたいね。これだったら、今度の試合も大丈夫そう。それじゃ、もう帰るね。お邪魔しました」
「「「お邪魔しましたー」」」
楓に続き3人もそう言い残し、俺の家から出て行った。
「騒がしい奴ら・・・」
4人が見えなくなり、俺は笑顔でそうつぶやいた。