俺の気持ち
とうとう全国大会に入った。
俺は風邪も完治して、万全の態勢で試合に臨む。
全国大会では、シードというよりは、傘下校かそうじゃないかで表示される。だから、シードでなくても、フィフスセクターのやり方に賛成の者は、傘下校に入っていることが多い。
もっとも、傘下校のサッカー部員は、フィフスセクターに賛成のものしか入っていないことが多いと聞く。
さすが全国大会、開会式も地区大会と比べ、豪華で盛大だ。
・・・もっとも、俺はシード時代、何度も見たことがあるのだが。それに関しては、楓も一緒だろうか。
聖帝・イシドシュウジが開会宣言をする。イシドシュウジが・・・俺の尊敬する人だった。しかし、今は憎き目の敵だ。
だが、楓はイシドシュウジを、いまだに尊敬のまなざしで見つめる。なぜだろうか、こんなにも憎い相手なはずなのに。
開会式が終わった。
俺たちの初戦は明日、相手は月山国光だ。
この前松風たちが言っていたが、月山国光と言えば、昨年のベスト8でもある。いわゆる強豪チーム。
だが、俺たちは準優勝校。・・・もっとも、俺たちは参加していないが。
その夜、俺はキャプテンと帰った。
理由はないだろう。ただ、俺はいつも1人だし、キャプテンは霧野先輩が用事があるかなんかで、早く帰ってしまったのだ。お互い1人同士だから、いつの間にかいっしょに帰っていた。
「なぁ、剣城。化身って何だ」
唐突にキャプテンが聞いてきた。驚きで声も出ない。
「え・・・さぁ?」
「さぁって・・・わからないよなぁ・・・」
暗く落ち込むキャプテン。しかし、心の底から聞きたいのは、このことではなさそうだ。
「じゃあ、親友って何だ?」
・・・これだ。この人が、本当に聞きたかったことと言うのは、これだろう。
「親友・・・俺はいないんですが・・・」
「そんなことはないさ。楓は親友だろう?」
楓か・・・。俺と楓は、親友なんだろうか?
「楓は・・・瑠奈の親友です」
俺は、苦笑しながらキャプテンの質問に答える。そして、元の質問にも答えた。
「でも、親友って言うなら・・・なんでもいい合えて、相談できる、支えになってあげてなってもらう・・・そんな感じですかね」
そういうと、キャプテンは落ち込んだ。大方理由も見当がつく。
「―――霧野先輩ですか?」
キャプテンは、ドキッとしたように俺を見た。そして、暗い顔で俯く。
「・・・俺は、あいつにたくさん支えてもらった。なのに、俺はあいつが悩んでいるところを見たことがない・・・悩んでいても、気が付けないんだろうな・・・」
成程、言っていることは当たっている。・・・なんてことは言えない。だが、霧野先輩は、狩屋とのことで悩んでいる。先日の“秋空チャレンジャーズ”との試合で、あまり関係を持たない俺でさえ気が付いた。
だが、松風たちは気が付いていないらしい。サッカー部は、鈍感が多い。
楓と瑠奈は、気が付いているみたいだ。
「まぁ、いつか気が付ける日が来ますよ。先輩たちは、親友なんでしょう?」
とりあえずそういうと、キャプテンはぱぁぁぁ・・・と明るい顔になる。
「そうだな!ありがとう、剣城!」
全く・・・わかりやすい人だ。何て純粋。それが、時々うらやましい。
「そうだ、剣城は楓が好きなんだろ?」
真顔でそんなことを言ってくるから、俺は危うくバランスを崩し、溝に落ちそうになってしまった。
全く、この人は一体、何を言い出すかと思えば・・・。
「そ、そんなことは・・・」
「でも、顔真っ赤だぞ?」
まだ真顔だ。この人は、本当に・・・。調子が狂う。
「先輩こそ、茜さんとか・・・好きなんじゃないんですか?」
俺が真顔で言い返すと、キャプテンはもっと動揺し始めた。変わった人だ。そして・・・やっぱり、純粋だ。純粋過ぎる。
「そ、そんなことは・・・!第一、や、山菜は・・・その、マネージャーで・・・!」
ニヤリと笑い、俺は続ける。
「でも、いつも言ってるじゃないですか。“シン様”でしたっけ?・・・とか何とか。大好きとか、かっこいいとか」
キャプテンは、また顔を真っ赤にする。
「そ、それはだな・・・そんなこと、言われるのには馴れていないから・・・つ、剣城は、馴れているだろう!?」
「はぁ?」
俺のほうが、おかしな声をあげてしまった。
―――この人、自分が陰でどれだけ人気があるか、絶対に知らないだろう。学校の人気ナンバー1なのに。
「キャプテン、貴方はモテるんですよ?」
まだ真顔で続けると、さらに顔が真っ赤だ。面白い。何度も言うが、純粋だ。
「でも、楓のことが好きなんだろう?」
顔真っ赤のまま、キャプテンは言う。今度は、俺の顔が真っ赤になる。
「なぜそうなるんです!?」
「だって、幼馴染だろ?」
・・・なんですか、それ。俺は、ため息をつき、こういった。
「それって、キャプテンが霧野先輩のこと好き、っていうのと同じですよ?」
するとキャプテンは、真顔に戻った。
「そうだな、霧野のことは好きだぞ?いい親友だ」
―――鈍い。鈍すぎる。
そのあとも、俺とキャプテンの会話は続く。
それを聞いていた人がいるとも知らずに・・・。
「なぁ、葵。あいつら、かわいいよな」
「はい、水鳥さん。いろんな意味で」
「茜と楓には黙っとこうな」
「あ、あと、瑠奈にも」