月山国光との試合は、難しいものになりそうだ。
試合会場は、サイクロンスタジアム。竜巻がおこる、なんておかしなスタジアムだ。
それと―――狩屋と霧野先輩のことも、気になるな。
DFの要の霧野先輩が、試合に集中できないとなると、雷門も痛い。
「狩屋ってね、人間不信なんだって・・・ヒロにぃ―――吉良ヒロトさんから聞いたんだけどね」
突然、楓がそんなことをいいつつ、俺の横へやってきた。俺は、そっちを一瞥すると、またフィールドを見つめた。
「そうか・・・お前は、あいつと知り合いなのか?」
楓は、頭を横に振った。
「ううん、イナズマジャパンと知り合いなだけ。狩屋はね、お日さま園暮らしだから」
そういうと、俺のことを見つめた。
「京介、頑張ってね。私は、ちょっと気をそっちに向けとかないと・・・ヒロにぃからのお願いでもあるから」
ニコッと笑うと、楓は空野のところへ、“葵、水筒頂戴ー”とかいいながら走って行った。また、余計なことに首を突っ込むんだな・・・。
予想通り、準備時間中でさえ、霧野先輩のペースは乱れまくっていた。
狩屋は、一体何がしたいんだか・・・霧野先輩は、狩屋のことを何度か注意していたが、まさかそのことを根に持っているのだろうか・・・。
そして、人間不信か・・・。
こいつの存在、一体雷門に、どう影響を与えるか。
霧野先輩は、狩屋のことを、シードと疑っているらしい。だが、俺はもちろん、フィフスセクター内のトップのほうの楓でさえ知らないらしい。だから、シードじゃないと思う。
フォーメーションは、ほとんどいつも通り。
FWは俺と楓と倉間先輩、MFが速水先輩、キャプテン、松風、DFが天城先輩、車田先輩、狩屋、霧野先輩、GKが三国先輩だ。
「倉間先輩、京介、よろしくお願いします」
「こっちこそ、頼んだぜ?」
「・・・よろしく」
FW3人で意気込みながら、楓はちらっと横―――月山国光のベンチを見る。つられて、俺たちもそちらを見る。
そこには、見覚えのある人がいた。―――元雷門中学校の10番、南沢先輩だ。
ホーリーライナーに乗る前に、月山国光と顔合わせをした。そこで見た、南沢先輩の顔。
2,3年生の先輩方は、動揺を隠せないようだ。
俺は一緒に練習をしたことがあまりない・・・というか、無いといっても過言ではないくらいだから、あまりそういうのは感じない。
それは動揺、松風、西園、楓、そしてもちろん狩屋も同じらしい。
「南沢先輩、月山国光かぁ・・・。兵頭さんが、強いんだよなぁ」
楓は相手GK―――兵頭を見ながら言う。きっと、話したことくらいはあるんだろう。そんなことを考えながら、3人で固まっていた時だった。
「楓ーっ!」
上から楓を呼ぶ声がした。俺たちは、一斉にそちらを見た。そこにいたのは、紫の髪の女子だった。
俺は見たことがないから、BかC組の人だろう。
「紫緒莉・・・!どうして、ここにっ!?」
楓は、その女子がいるほうへ、駆けて行った。俺たちも、ついでについて行くことにした。
「楓っ!見に来たよ!」
「ありがとう、紫緒莉。あ・・・あそこにキャプテンと霧野先輩がいるわよ?」
どうやらこの人は、2人と知り合いらしい。その人は、2人を見つけると、そちらに向かって叫んだ。
「たっくん!蘭ちゃん!」
―――キャプテンと霧野先輩のことらしかった。2人は、こちらを見つめ、顔を見合わせてこちらへかけてきた。
「どうした、紫緒莉?」
「なんで、此処に!?」
その女子は、ドヤ顔をする。意味がわからない。
「楓とたっくんと蘭ちゃんの応援!頑張ってね!」
その人は、笑顔で拳を作り、霧野先輩とキャプテンの掌に押し付けた。2人は、それをちゃんと受け止める。どうやらこの3人は、ずっと一緒にいるらしいな。
試合開始だ。
竜巻が起こる変なスタジアム。DFの要は試合に集中できないから、言い方は悪いが、あまり頼りにならない。
新たなDFは、様子を見ないといけない。
FWの1人は、DFの関係に首を突っ込み中。
・・・さて、どうしたものだ。俺は、あまり知らないから、首を突っ込んでもめんどくさいだけだがな・・・。
そして、試合も雷門が不利。何ていっても、相手は竜巻のルートを知っている。タブレットを遣い、監督はGKに指示を出す。さすが、頭脳派のチームだ。
しかし、俺たちだって頑張った。
後半、円堂監督が霧野先輩をベンチに下げてしまったこともあった。その前に、狩屋が霧野先輩のイメージダウンになるようなガセ情報を、天城先輩に流したり。
その時の楓の形相と言えば、忘れられない。サッカー部の仲間に、仲間がこんなことをしているんだ。知っている身となれば、辛いのだろう。
「・・・貴方は確かにシードじゃない。でも、霧野先輩に恨みがある!?アンタ、弱過ぎなのっ!ちゃんと、自分の意志を持ちなさい!貴方は・・・根はいいんだから!」
今にも泣き出しそうな、ある意味儚げな表情だった。
しかし、ベンチに下がったことにより、霧野先輩は狩屋の本当の“心”が見えたらしいし、月山国光の必殺タクティクス“タクティクスサイクル”も攻略できた。
まだ素直じゃないけれど、2人ともそれなりの関係を築けそうだ。
「・・・よかったね、2人。任務完了っ!・・・ってところね」
「・・・そうだな」
“大変そう”な先輩後輩が、“楽しみ”な先輩後輩になった瞬間だった。俺と楓は、2人をただ微笑みながら見つめていた。
そして、意外な事実もあった。
それは、帰りのミーティングの時だった。瑠奈が、狩屋に自分が“ルナ”だとばらす、と言いだしたのだ。もう、瑠奈の中でも、あいつのイメージは、悪いものじゃないのだろう。
「狩屋君、ちょっと聞いてちょうだい。・・・私は、モデルの“ルナ”なの・・・」
そういうと、瑠奈はポニーテールをほどき、眼鏡を取った。その瞬間、狩屋の顔が輝いた。
「うっそ!マジっ!?俺、瑠奈の大ファンなんだよ!!!」
―――瑠奈、ばらさなくてもよかったかもしれないな・・・。
そう思い合う俺と瑠奈は、顔を見合わせて苦笑した。
剣城君は、解説苦手なんですよね←