あの事件の、翌日・・・。
「新入部員?」
私が楓を支えつつ、部室に入ろうとした時だった。
キャプテンの声が聞こえてきた。私と楓は顔を見合わせ、私たちは入った。
「こんにちわ・・・」
「遅れました」
キャプテンたちは声で応答するだけだったが、後ろを振り返った霧野先輩が、目を見開いて大声をあげた。
「か、楓っ!?」
その声で、皆が振り返る。そして、先程の霧野先輩のように、皆が目を見開く。そして、ざわざわと声が上がる。
「楓、どうしたんだ?」
その質問には答えず、楓は
「新入部員が先ですよね?」
と笑顔で言い切る。さすが、楓・・・。
「輝です!」
元気よくいいきる、その少年。
京介は、どうやら知り合いらしい。学年も、同じように見える。
「名字は?」
先生にそう言われると、その少年は、おどおどし始めた。そして、意を決したように言う。
「か・・・げやまです。影山輝です」
皆は普通の顔で、先生を見つめた。でも、音無先生、鬼道コーチ、円堂監督、そして楓は、驚いたように、その場に立ち尽くした。
音無先生はバインダーを落とし、楓はその場に崩れ落ちた。そんな楓を見て、その少年―――影山君は、目を見開いた。
「楓・・・ちゃん?」
楓は、顔をあげた。そして、不思議そうな顔をした。影山君は、楓に近寄った。
「やっぱり・・・初めてあったね!写真で、何度か見たことあったけど!」
「えっと・・・」
困惑を深める楓。影山君は、あっと思いだしたように言う。
「そっか、楓ちゃんは知らないんだよね・・・」
下を向き、自分の世界に行きそうだった影山君に、音無先生が言う。
「影山って・・・」
影山君は、急にまじめな顔になり、先生の質問に答える。
「はい、影山零冶は、僕のおじです。おじが、サッカー界に多大なる迷惑をかけたことは知っています。でも、サッカーを愛した人だとも聞きました。でも、迷惑ですよね・・・」
儚げなあきらめたような顔をして、帰ろうとした。しかし、円堂監督が聞く。
「サッカーは好きか?」
影山君は、はっきりと
「はいっ!」
と言いきった。すると、笑顔になっていった。
「入部を認める!」
続くように、鬼道コーチが言う。
「あの人のやったことは許されることではない。でも、サッカーを愛していたからな」
―――しかし、私たちにはまったく理解できない。
―――それから数分後。
「楓、大丈夫?」
「えぇ・・・」
まだ困惑気味の楓が、鬼道コーチや円堂監督の近くに座った。
「輝君なんて・・・知りませんでした」
「当り前だろう」
鬼道コーチは、楓の頭に手をのせて、落ち着かせた。そして、謝った。
「気が付けなくて、すまなかった・・・」
昨日のことだろう。そして、京介に対して
「ありがとう」
と礼を述べた。そして、詳しい話を聞いた。
―――昨日、電話を切った後に、崖から落ちてしまったこと。
―――どうしようか、もう助からないんじゃないかと思っていた時に、京介がたすきに来てくれたこと。
―――病院に連れて行ってもらい、太ももを7針縫ったこと。
―――次の試合には出れそうにないこと。
鬼道コーチは、罪悪感のあるような顔をする。楓は、ほほ笑んでいった。
「気にしちゃダメですよ?」
コーチは、はっとしたように笑った。
「ねぇ、楓。影山零冶って・・・?」
落ち着いたころ、私は気になることを聞いてみた。楓は、また表情を暗くした。
「私の・・・私の、実のおじいちゃん」
「え・・・?」
楓は、つまり・・・影山君の親戚?
私の顔が、動揺を隠せていなかったのだろう。楓は、またほほ笑んだ。
「ちょっと複雑なんだけどね・・・瑠奈には、離しておかないとね・・・いいですよね、お兄さん?」
楓は、鬼道コーチのほうを向き、尋ねた。鬼道コーチは、黙ってうなずき、
「円堂も聞いておけ。春奈は・・・知ってるよな」
そういい、楓の話が始まった。
「私の名前は、山吹楓。・・・でも、この名前を遣い始めたのは、6歳の時からなの。私の、6歳までの名前は・・・光山楓。否、ちゃんとしたのは、影山楓かな。名前を聞いてわかるし、さっきも言ったように、私は影山零冶の孫。ただ1人の孫」
円堂監督は、驚いたように言う。
「影山に、子供なんていたか?」
楓は、ほほ笑んだ。
「はい、表はね・・・。裏っていうか・・・隠し子がいたんです。それが、私の母・影山零佳です。でも、母はおじいちゃんのことを嫌っていたから、名前を変えた―――偽名を使ったんです。それが、光山灯。そんな母は、私の実の父親と恋に落ちました。でも、父は私が出来たことを知ると、母とおなかの中にいた私を捨て、どこかへ逃げました。そこから、母は仕事をしつつ、私を育ててくれました。母が仕事のときは、お日さま園に預けられていました。だから、ヒロにぃとかと知り合いでした。―――しかし、3歳のとき、母は突然の飛行機事故で亡くなりました。そして、お日さま園に引き取られたんです。そして、イナズマジャパンの皆さんとであった。そこで、円堂さんや春奈さんとも知り合いましたよね?お兄さんは、真帝国の試合のときに、一度会ったことがあった見たいです。でも、私自身覚えていなくて・・・。―――そのまま、3年の月日が経ちました。私が6歳のとき、1人の女性と会いました。山吹桜子―――今の私の母です。私は、彼女に引き取られました。そして、そのまま過ごし・・・今、此処にいます。―――輝君は、私の実母の従弟ということになります。輝君は、私のことを知っていたみたいですけど・・・私は、知りませんでした。これが、私のことです。ちなみに、養母の桜子さんは、お兄さん―――鬼道さんのお父様の妹です」
驚きで、声が出なかった。
それを聞いていたのは、私、円堂監督、音無先生、鬼道コーチ、そして楓自身だけだ。
楓は、やっぱりいろいろ強い。
そのことを、痛感した。