絶対障壁―――
この必殺タクティクスのことについて、ミーティングルームで、吹雪さんが話し始めた。
「絶対障壁とは、中央に選手を集中的に配置することで、極限までDF力を高めた、必殺タクティクスなんだ。テレビで見させてもらったけど、君たちのアルティメットサンダーも、おそらくは通用しない」
「そんなのに、どうやって対抗すればいんですか?」
速水先輩が、不安げに尋ねる。皆も、同じような顔をして、同じような質問をする。
吹雪さんは、続ける。
「絶対障壁を破るためには、より強力な、必殺タクティクスが必要なんだ」
「1つだけ手がある」
お兄さんが、思いついたようにいう。
「絶対障壁は、中央に選手を集めるから、必然的に両サイドは手薄になる」
「そうかっ!そこをつけば、勝機は十分にあるわ!」
「そうだ、よく気づいたな、楓」
―――そう、右サイドへ行けば、左サイドが、左サイドへ行けば、右サイドが、必然的に手薄になってしまう。そこを突けば、絶対に攻略はできるだろう。
吹雪さんがうなずく。春奈さんが、明るい顔になって言う。
「絶対障壁を破るための、必殺タクティクスね!」
お兄さんがうなずく。そして、私を見る。私も、お兄さんを見ながら言う。
「楓、もう1つ聞く。このタクティクスには、必要不可欠なものは、一体何か?」
「はい。絶対障壁を突破するだけの俊足と、決定力を兼ね備えた選手が、2人、必要です。それが、絶対障壁を破る―――カギです」
「剣城と天馬がいるだろう。こいつらは足も速いし、何よりも化身が使えるだろう」
倉間先輩が、案を出す。それに、すぐに賛成の声が上がった。
「あぁ、確かに」
「そうですね、天馬と京介なら・・・いけると思います」
「でも、お前はどうすんのよ、倉間」
倉間先輩は、にやりと笑う。
「おとりになる。DFを中心に引きつければ、こいつらも攻めやすくなるだろう?」
天馬は、顔を輝かせる。
「倉間先輩・・・!」
「勘違いすんな。勝つためには、それが一番いいと思っただけだ」
―――倉間先輩は、ツンデレだ。
でも、私はひそかに思う。
“京介はいいけれど・・・天馬は、どうもしっくりこない・・・。足は速いけど・・・決定力にかけている・・・”
「絶対障壁を破るための必殺タクティクスを、決勝までに完成させるぞ!」
円堂監督の掛け声で、皆の練習が再開する。
私は、ただ黙って、練習を見ている。見ていることしか、出来ない―――。
あの後、狩屋が謝りに来た。
“えっと・・・ごめん、1人にして。瑠奈ちゃんを守るため、とはいえ・・・楓ちゃんを、1人にしたから・・・”
私は、また強がった。
“いいのよ。だって、好きな子を守るのが、男の子の役目。狩屋は、それを守っただけ”
“強がんなくていいよ”
―――え・・・?びっくりして、声が出なかった。
“だから、無理しなくていいよ・・・って言ってるんだよ/////それに、結果として、怪我したわけだし・・・”
私は、狩屋のまじめな姿を、悪いと思いつつ、やっぱり面白いと思ってしまい、吹き出してしまった。
“な、なんだよ!?/////」
“ご、ごめん・・・でも、だって、狩屋・・・まじめでっ・・・!”
―――狩屋との件も、とりあえず一件落着だ。
・・・でも―――・・・
「試合に出れなくて、悔しいなーっ・・・って感じ?」
「あ、葵・・・!」
私の心を読んだように、横に葵がやってきた。
「どう、して・・・」
「わかるよ、親友だもん。だからさ、無理しないで」
葵の言葉は、心の深くまでしみ込んだ。私は、心からの笑顔で
「ありがとう」
フィールドでは、天馬と京介が、新必殺タクティクス完成に向けて、練習をしていた。
京介から、天馬へパスが渡る。しかし、天馬はピッチより外に出てしまう。
「もう、天馬!駄目じゃない!外に出てる!」
「あっ!本当だ・・・ありがとう、楓!」
私は、小さくつぶやいた。
「もう・・・ありがとうは、完成させてから言いなさいよ・・・」
天馬は、大きな声で言う。
「でも、乗り越えられない壁はない!」
―――そう、そのいき。
このタクティクスは、難しい。それは、私も見ていてわかる。でも、あなたたちなら、絶対に完成させられると思う。・・・思いたい。
「「がんばって・・・」」
葵とハモって、くすくす笑いながら、また叫んだ。
それから、晴れの日も、雨の日も練習が続いた。
晴れの日に、なぜかサッカー塔内でしたり、雨の日になぜか外のグラウンドでしたり、おかしなこともあったけど・・・
皆は、必死に練習に励んだ。
何とか形らしくなったが、シュートがちゃんとした態勢でなかったりもした。
まだまだ練習が、必要だろう。
そんな時だった。
春奈さんに、皆に渡して、と1通のエアメールをもらった。