春奈さんからもらった、エアメール。
2年生の先輩に渡して!と、お願いされたけど・・・
「春奈さん、これって・・・?」
「たぶん・・・錦君ね」
「錦・・・君・・・あ、イタリアに留学されている・・・」
―――錦君こと、錦龍馬さん。
染岡さんが、イタリアで面倒見ている、2年生の先輩。
染岡さんから、メールなどで何度か、話を聞いたことがある。自分の実力に、限界を感じていたけれど、染岡さんと出会って変われたって・・・。
「あら、知ってるの?」
「あ、はい。染岡さんから、少々・・・」
「茜さん、これ、渡してきてください♪」
私は、松葉づえをつきながら、茜さんの元へ向かった。
「・・・なんで私?」
「だって・・・キャプテンのこと、好きですよね?」
その瞬間、茜さんの顔が、リンゴのように真っ赤になった。
「そ、そんなことぉ・・・/////////」
「茜さん、かわいいです。だから、そんなことを、そんな顔で言われたって、無駄ですよ?」
「じゃ、じゃあ・・・楓ちゃんも・・・ね?」
・・・ということで、私たちは、屯する2、3年生のところへ向かった。
私たちが来る前に、水鳥さんが来ていた。
「俊足と、決定力の両立か・・・」
「はいよ、これ飲んで元気だしな」
「あ、ありがとう」
キャプテンは、そのドリンクを受け取った。私は、茜さんとキャプテンの目の前へ行った。
「これも」
「ん?」
「エアメール」
「イタリアの龍馬さんから、みたいですよ?」
「エアメール?リョウマさん・・・?」
皆は、集まって手紙を開ける。
「リョウマ・・・あぁ、錦か!」
「何っ!?錦!」
さらに、続々と人が集まる。私たちも、輪の中に加わった。
「皆の衆、まっことご無沙汰ぜよ。錦龍馬じゃ、だってよ」
すると、水鳥さんが、なつかしむような目で言った。
「相変わらず、ぜよぜよ言ってんのかよ、あいつ」
霧野先輩が、驚いたようにいう。
「錦を知っているのか?」
「龍馬とは、1年のとき、同じクラスだったんだ」
すると、浜野先輩が茶化した。
「龍馬だってぇ~♪ずいぶん親しげぇ~」
「そ、そんなんじゃねぇよ!」
「え~?」
「は~まの~ッ!」
そこから、2人の追いかけっこが始まった。
隣にいた霧野先輩は、呆れかえった顔をしている。私もおそらく、同じ顔をしているだろう。
「あの、誰からの手紙なんですか?」
天馬が、好奇心たっぷりの瞳で、先輩たちに尋ねる。
「ちょっと待ってくれ」
キャプテンは、立ち上がってバックへと向かった。
そういえば、と霧野先輩が、私に尋ねる。
「龍馬さんって、楓、錦とも知り合いなのか?」
「えぇ。ちょっと知るつてがあって・・・あ、よく水鳥さんのこと、話してますね」
「仲いいんだな~」
霧野先輩と、しみじみ話していると、キャプテンが戻ってきた。
「俺たちが、新入部員だったころの写真だ」
その写真に写る先輩たちは、真っ白なセカンドチームのユニフォームを着ていて、初々しい、なんて思ってしまった。
「そして、こいつが錦龍馬。去年まで、うちの部にいたストライカーだ」
「才能を認められて、イタリアにサッカー留学したんだよ」
「「サッカー留学ぅ!?」」
今この場にいた、私、天馬、信助、葵、輝君、キャプテン、霧野先輩のうち、天馬と信助が、一斉に叫んだ。
「うるさい・・・」
「あ、ごめん、アハハ」
葵が、苦笑いを笑顔に変え、言う。―――さすが、なんて思ったのは秘密。
「へぇ~、すごい人なんですね・・・」
三国先輩たちも、集まってきた。
「とてつもないキック力の持ち主でな、あいつのシュートには、何度痛めつけられたことか・・・」
「自分のこと、雷門の点取り屋って言ってたっけ」
「そういえば、足も速かったよな」
「ついていくのに苦労したド~」
「ボールキープも、うまかったですよ~。奪ったボールは、消して渡しませんでしたから」
龍馬さん―――錦先輩は、本当にすごい人なのだろう。いいところを言い始めたら、皆止まらなくなっている。
「本当にすごい人だったんですね、錦さんって・・・!」
天馬が、いつものキラキラした瞳で言う。
「アイツがいれば、このタクティクスも完成したのかなぁ・・・」
「あぁ!」
浜野先輩と、速水先輩が言う。それを、キャプテンが静めた。
「いないやつのことを言っても始まらない。休憩は終わりだ!やるぞ、皆!」
この声で、皆グラウンドへと駆けて行った。
―――またベンチは静かだ。マネージャーたちは、ドリンクの片付け。先生も監督もいないから、私1人きり。
「・・・今の私にできるのは、応援することね・・・。勝ってもらわなきゃ、私や京介―――他のシードたちが、かわいそうになるんだから!」
小さな声で、自分に喝を入れ、大声で叫んだ。
「絶対に、完成させるのよっ!じゃないと、許さないから、私!」