「え!?錦が!?」
「錦君が・・・!?」
「龍馬さn―――錦先輩が・・・?」
皆が、口々に信じられない・・・と言わんばかりのコメントを、次から次に言う。
「えぇ。さっき空港に着いたんですって。今こっちに、向かっているそうよ」
キャプテンが、微笑みながら言う。
「驚いたな、突然帰ってくるなんて」
速水先輩も、笑っている。
「彼がいれば、心強いです」
ガッツポーズしながら、三国先輩も言う。
「あぁ!またあの力強いシュートで、ゴールを奪ってくれるぞ!」
天馬と信助は、初めて会う錦先輩に、わくわくしているらしい。
実のところ、私もあったことはない。電話などで、話したことはあるのだが・・・。
「イタリアで鍛えたプレーが、見られるんだね!」
「うん!わくわくするよ!」
横では、円堂さんが春奈さんに言う。
「春奈、追加の選手登録は可能か?」
春奈さんは、満面の笑みでうなずく。
「えぇ」
「よし、頼む!」
「はい!」
一方で、お兄さんが、私に尋ねる。
「楓は、このタクティクス・・・完成したと、思えるか?」
私は、天馬と京介を交互に見詰め、やがてうつむいた。
「言いにくいけど・・・完成したとは、思えません。決定力不足・・・とでも、言ったところです」
お兄さんも、難しい顔をしてうなずく。
「そうだな・・・楓のほうが、俺よりもチームを見ているな。円堂よりも・・・な」
「そんな・・・でもまぁ、チームメイトだから」
私はそういうと、ファイルを葵から受け取った。このファイルには、お兄さんの書いた、皆のデータがある。
パラパラとページをめくると、1人1人丁寧にまとめられている。
「さすが・・・やっぱり、お兄さんもよく見てるわ・・・」
―――とうとう試合が始まった。
氷のフィールド、攻略方法は、いまだに見つけられていない。
「雷門のホーリーロードは、今日で終わりだ」
相手キャプテンのつぶやきが、聞こえてきた。俺―――剣城は、むかつく。
シードだからといって、なんでも許されるわけは、ないに決まっている。
―――俺には、そんなことを言う資格、ないかもしれないが。
「ぶっ潰す」
吹雪さんが、さっき見つめていた藍色の髪の男が、そう呟いた。
―――潰させてたまるものか。
「潰されてたまるか」
キャプテンも、同じ考えらしい。
「俺たちは、最後まで戦い抜く!」
皆の顔が、一気に真剣なものとなる。
俺は、ふとベンチの楓を見つめた。楓は、ファイルを見つめていたが、こちらの視線に気がついたのか、俺を見て微笑んだ。
その瞳には、“絶対に勝て”という、強い思いがこもっていた。
ピ―――――――ッ!
大きな笛の音とともに、キックオフ。
俺が蹴ったボールが、倉間先輩にわたる。
一気に上がる。しかし、氷のフィールドは、動きにくいことこの上ない。滑ってしまう。
倉間先輩が、パスを出す。しかし、パスミスだ。
「しまった!」
ボールは、白恋側にわたる。
白恋は、氷のフィールドに慣れている。滑ることも、ないのだろう。
「くっそぉ!」
ボールをすかさず奪い返す。
とりあえず、ピッチアウトだ。
相手のスローインで、試合が再開した。
キャプテンがボールを奪うが、ボールはうまいように渡らない。
―――また、ピッチアウトだ。
うまくいかない。どうすればいいのだろう・・・。
今の雷門は、プレーがちぐはぐだ。
松風がドリブルで上がる。しかし、相手は速い。そして強い。
「取られるもんか!」
そういった瞬間、松風は滑る。そして・・・
「もらった!」
相手に、ボールが渡ってしまう。
速水先輩をかわして、上がっていく相手を、何とか霧野先輩がおさえた。とりあえず、ピッチアウトだ。
その後も、雷門は防戦一方。
氷のフィールドの攻略方法も、いまだ見につからない。
滑ったり、パスミスやドリブルのミスが目立つ。
難しい試合になる。
松風も、奪おうとしてこけた。相手は、軽々と松風をよける。
「行かせるもんか!」
そう言って、攻撃を食い止めた。そして、キャプテンにパス。
「渡すものかぁ!」
空中でのヘディング、そのボールは俺へ渡る。しかし、フィールドになれないため、俺は滑り、ボールは相手にわたってしまう。
「甘いんだよ!」
そして、そのまま上がる。皆ディフェンスに戻れず、遅れる。そのため、相手は楽々通り過ぎる。
ゴール前。相手はシュートを出してきた。
「パンサーブリザード!!」
強烈なシュートだ。GKの三国先輩は、フェンス・オブ・ガイヤで止めにかかるが・・・
「ぐわぁ!?」
―――シュートは、決まってしまった。