雪村は、そのまま目をつぶる。
「化身シュートッ!」
私のつぶやきを聞いたお兄さんは、私を見つめた。しかし、だからと言ってどうすることもできず・・・。
「アイシクルロード!!」
強烈のシュートが、雷門ゴールへ向かう。
―――三国先輩は、どうすることもできなかった。ただ、呆然とするだけだった。
ピ――――ッ!
シュートは当然ながら、雷門ゴールに突き刺さっている。
2-0。点差は2点。
吹雪さんは、気がついたらしい。
―――フィフスセクターが、雪村の中に眠る素質に気が付いていて、それを引き出すために、吹雪さんを白恋から追放したということに。
私は言えない。言えるはずがない。
―――小学校6年生の春、聖帝に連れられて、私は白恋中学校へ行った。そこにいたのは、当時1年生だった雪村だった。
私はすぐに彼の中に眠る、化身の気配に気がついた。まだ1年生なのに、すごいシュートもうっていた。私は化身が使えたし、京介も化身を発動させたばかりだったから、気配なんかが手に取るようにわかった。
“楓、どう思う”
“・・・すごいと思います。あの人には、何かが眠っている。引き出したい”
“そうだな・・・”
“・・・今年は無理でも・・・来年のホーリーロード、私も中1になっているので、彼の力を引き出して、試合がしてみたいです。1年間は、おいていてもいいかと思います”
“勝負は・・・来年だな”
・・・そう、吹雪さんを追放してしまったのは、間接的には私。でも結果、私は試合に出れていないし、吹雪さんは辛い思いをするし、いいことなんてなかった。
間違っていたのだ。でも、今更気がついたって、もう遅い。
―――今はただ、強くなった雪村と―――白恋と戦う雷門の“仲間”を、信じるんだ。
「もう一度やるぞ!」
キャプテンのそんな声で、私は我に返った。そうだった、今は試合中だ。昔のことに、浸っている場合ではない。
そう思いつつも、私は聖帝のいるところを見ていた。―――去年は、私はあそこにいた。
皆はダブルウィングを始める。でも、天馬のままじゃ・・・。
「必殺タクティクス、絶対障壁」
またしても、白恋の絶対障壁が出た。この攻略は、ダブルウィングが未完成な今、大変だ。否、ほぼ不可能といっても過言ではない。
「うわぁっ!?」
やっぱり。ボールの動きが、相手にはわかっている。だから、またもや動きを止められてしまった。
悔しい。絶対障壁を破るのは、不可能なんだろうか・・・!?
フィールドから、雪村と天馬の声がする。
「これがあいつの教えた作戦か。使えないな」
「そんなことない。必ず突破するさ!」
ピッピ――――!!
ここで、前半が終了した。瑠奈や葵たちは動き始める。私も動こうとしたが、足が痛んで動かなかった。この足が、今はとても憎い。
その時、吹雪さんが席を立った。選手の目の前を通り過ぎて、向かったのは雪村のところだった。
「雪村。教えてくれ。なぜ君まで、フィフスセクターに?」
「あんたに勝つためさ」
「フィフスセクターが、どんなサッカーを推し進めているのか」
「知ってるさ!」
お互いの苦しそうな声が、フィールドに響く。
「それならなぜ?」
「フィフスセクターは、絶対に俺を裏切らないからだ」
悲しげな雪村の声。その声は、私の心にも響いた。―――私のせいでも、あるのだから・・・。
吹雪さんは、ショックを受けたように、目を見開いた。
「・・・あんたは俺を裏切った。一緒に強くなろうと、言ってたくせに・・・」
「そうじゃない!あれは、フィフスセクターが仕組んだことなんだ!君の能力に目を付け、僕を遠ざけるために」
「今更いいわけか!?」
「雪村・・・」
呆然とする吹雪さんに、雪村は追い打ちをかける。
「俺はあんたを見返してやろうと、心から誓った!だから雷門を倒し、あんたに勝つ!」
「雷門のサッカーは、君が考えているより手ごわいぞ」
「俺は!俺自身が編み出した必殺技で、雷門をたたきのめしてやる!」
その瞳には、ただならぬものが宿っている。―――それほどまでに雪村の中で、吹雪さんの存在が大きいということだ。
雪村は去っていき、吹雪さんはその場に立ち尽くした。
「楓?どうかしたのか?」
「京介・・・ううん、なんでもないけど?」
急に京介がいて、私はびくっとした。
「顔色が悪かったけど・・・フィフスセクターのこと、忘れられないのか?」
―――半分だけあっている。でも、心配はかけたくない。
「違うわ。足が痛んだだけ。でももう平気。さぁ、後半戦も、しっかりね?」
「・・・あぁ!」
京介はそういうと、ドリンクをもらいに行った。―――心配は、かけないようにしないと・・・ね。
後半開始が迫る。先輩たちは、点差を見て苦い顔。
「2点差か・・・ッ」
「ヤバイですよ・・・」
「絶対障壁を崩さなければ、何としても・・・!」
「でも・・・ダブルウィングは、通用しないド」
「それでも、やるしかないんだ。行くぞッ!」
不穏な空気が漂う中、遠くから声が聞こえた。
「おーい!ちっくとまっとうぜぇ!」
そこにいたのは―――
「錦!」
「間に合ったか!」
―――錦先輩だった。
「遅れてすまんきに!錦龍馬、只今参上ぜよ!」
皆はそっちへ駆けていく。久々の再開、喜ぶ時間がないのはわかっていても、嬉しいことには変わりない。
天馬たちは、目を輝かせている。
「この人が、錦先輩・・・!」
先輩は続けた。
「わしが帰ってきたからには、もう大丈夫じゃきに!」
―――ここにきて、強力な助っ人登場だ。