mix color   作:御沢

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ダブルウィング

「錦さん!はじめまして」

私は錦先輩に対して、大声で叫んだ。先輩は、不思議そうな顔をした。まぁ、電話でしか話したことがないのだから、あたりまえといえば当たり前だ。

「おまんは・・・?」

「私は、山吹楓です。お会いするのは、初めてです」

錦先輩はおぉ、とか言った。

「楓って、おまんか!師匠と一緒に写っちょるのは、小さいころの写真じゃきに、わからんかったぜよ」

私は笑いかけた。そして、錦先輩は皆に言う。

「ドーンと、大船に乗ったつもりでおったらいいぜよ!」

天馬と信助はというと、もう目が輝き過ぎている。眩しいくらいだ。

「なんか頼もしい感じだね」

「うん!」

 

 

後半が始まった。

キックオフ早々、倉間先輩がボールを奪う。

「頼むぞ錦!ダブルウィングだ!」

「おうよ!」

天馬に変えて、錦先輩と京介で、ダブルウィングをやってみるらしい。成功するか否か。

「必殺タクティクス、絶対障壁」

「必殺タクティクス!」

「「ダブルウィング!」」

2つの必殺タクティクスがぶつかり合う。はたして・・・!?

―――失敗だ。またしても、ボールの動きを見極められてしまっている。

「あちゃー、やっぱFWじゃ、勝手が違うぜよ」

その錦先輩の言葉を聞いて、私ははっとした。そういえば、染岡さんが言っていた気がする。

確か、錦先輩って・・・。

「え?」

一方、そんなことは知らない皆は、疑問符を頭に浮かべる。

 

 

「皆、すまんぜよ。実はのぅ、わしゃ向こうでMFに転向したがじゃ」

皆の驚きの声が、そこら辺に響いた。そりゃあそうだろう。まさか、自称“点取り屋”がMFになっているなんて。

「転向って・・・」

「どうやらわしは、FWよりMFがむいとるらしいんじゃ。向こうでそう言われたきに」

皆、今にもマンガのように、崩れ落ちそうだ。

「マジかよ?」

「まっことぜよ!グッハハハ!!」

そんな豪快な笑い声が、フィールドに響いた。私も崩れ落ちそうだったが、今はそれよりダブルウィングだ。

錦先輩が駄目となると、残るは・・・。

私は、ちらっと横にいる輝君を見る。

「このままでは難しいな・・・」

お兄さんのそんな声が、耳元で響いた。私は、一か八かの賭けに出た。

「円堂監督、鬼道コーチ、私に考えがあるんです」

「ん?なんだ?」

私は大きく息を吸い、はっきり言い放った。

 

 

「輝君を、投入してください」

 

 

「え・・・えぇぇぇぇ!?」

輝君の叫び声が、ベンチに響いた。お兄さんと円堂さんは、不思議そうな顔を私に向けた。

「なぜ、影山なんだ?」

「輝君には、秘めた才能があります。最初の練習、見たでしょう?見よう見まねで、あれほどのシュートができるんです。つまり、輝君なら、可能性があります」

円堂さんは、輝君の方を向いた。

「輝、お前はどうだ?」

輝君は戸惑っていたが、やがて決意したように、円堂さんの瞳をまっすぐ見つめ、言った。

「出来る気がします!」

「よし、行け!輝!」

「はい!」

これがラストチャンス。これが成功しなければ、ダブルウィングの完成は不可能。でも、私は何か“確信”出来るものがあった。

―――おじいちゃんの甥だもの。絶対に、勝負には強いはず。

 

 

輝君のプレーは、圧巻だった。

いきなり氷のフィールドのコツをつかみ、見事にボールをキープ。そして、倉間先輩にパスを出す。

「行くぞ!ダブルウィングだ!」

キャプテンのそんな声とともに、ラストチャンスは始まった。

皆の目の前には、大きな氷の塊。さぁ、両サイドからの新風、これをかわせるか否か。

「影山!」

「はい!」

京介と輝君が、ボールをけりあう。そのスピードとパワーは、さすがFW同士、とでも言ったところだった。

「必殺タクティクス!」

「「ダブルウィング!!」」

するとどうだろう。相手の反応が変わった。見極められていない。よし、いける・・・!

氷が左へ動く。―――しかし、あたりは右だ。

「やった・・・成功よ!!」

思わず声を張り上げる。ラストチャンスを、見事ものにしたのだ。

そしてそのまま、輝君はゴールを奪った。まったく・・・初心者だとは思えない。さすが、おじいちゃんの甥っ子。―――私のお母さんのいとこ。

 

 

勢いに乗った雷門は、白恋を攻めていく。ダブルウィングは、もうものにしている。

「はぁぁぁぁぁ!剣聖ランスロット!ロストエンジェル!」

京介のシュートで、見事同点に追い付く。しかし、白恋も黙っていない。

選手交代をしてきた。グリズビーの異名を持つ、力強いプレイの持ち主だ。そして、交代早々、ラフプレイともとれるようなプレイをしてきた。

―――三国先輩の上に落ちてきたのだ。先輩は地面にぶつかり、肩をゴールポストで強打。

ベンチに戻ってきたが、晴れていていたそうだ。GKの続行は、不可能だろう。

私はすぐさま、円堂さんに言う。

「天馬、交代よ!あんたしか、GK経験者はいないもの!」

「え・・・俺!?」

天馬は驚いて、戸惑っていたが、すぐに決意を固めた。ペガサスを出した時のように、天馬なら出来る。

「天馬ならやれる!がんばって!」

信助の励ましに、皆がうなずく。天馬はユニフォームを変えて、GKとなった。

 

 

天馬の蹴ったボールは、早々相手に奪われた。奪われた相手は、石―――グリズビーだ。

ここで出てきたのが、霧野先輩。ザ・ミストでボールを奪おうとする。しかし、はねのけて猛進する石。このままじゃ、天馬に・・・。

「行かせるかぁ―――!!」

そう言いながらボールを奪ったのは、車田先輩だ。何とか、GKまでいくのは抑えられた。今、雷門の空気はいい。

白恋がまた攻め込む。しかしこれは、いつの間にかディフェンスに戻っていた輝君と錦先輩のおかげで、守り切れた。

―――皆でゴールを守る。最初の雷門からは、想像もできなかった。でも、今の雷門は、最高に素晴らしいチームだ。勝てる、絶対に・・・!

神のタクトも発動。相手の雰囲気も悪化してきた。もしここでよくなったとしても、勝てるだろう。

ボールはゴール前。ここまで上がってきていたキャプテンにボールが渡り、

「奏者マエストロ!ハーモニクス!!」

ついに、3-2で逆転だ。

 

 

そして白恋側にも変化が。

フィフスセクターのサッカーではなく、自分たちのサッカーに目覚めたのだ。これで、本気のサッカーができる。雪村と吹雪さんも、和解できたようだ。

今度は雪村がゴール前。

「がんばれ!雪村!」

吹雪さんが、雪村に声援を送る。和解しきれたみたいだ。本当に、よかった・・・。

「豪雪のサイア!アイシクルロード!!」

雪村が最後のシュート。そのシュートは・・・

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!魔神ペガサス!!」

狩屋のハンターズネットで威力が弱まり、天馬の化身でシュートを打ち返す。その瞬間、試合終了の笛が鳴り響いた。

 

 

―――雷門は、勝ったのだ。

 

 

 

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