「栄都学園と、練習試合・・・ですか?」
「あぁ」
俺―――松風天馬が、部室に入ろうとした時、そんな話が聞こえてきた。栄都学園・・・って、どこだ?
俺は、そんなことを考えていた。そのまま、ドアの前でうろうろしていたが、センサーが反応してしまい、ドアが開いた。
まだ、皆俺のことを受け入れてくれない。楓のことは、皆受け入れてくれている。なぜなら、今は、楓は先輩方に味方しているからだ。・・・そう、今は。
「天馬か・・・」
部室の雰囲気は、暗くよどんでいる。
辛いなぁ、この雰囲気。俺は、明るい雰囲気が大好きだから、こういうのには、どうにもなれられないんだよ。
「こ、こんにちわ!」
それでも、俺は明るく対応する。俺は、馬鹿だから、皆さんを不快にさせてるかもしれないけど、それでも自分のしていることが、間違ってるとは思っていない。
「天馬、今度試合があるんだ。栄都学園というところだ。天馬、人数の関係上だ、試合に出てもらう」
「ほ、本当ですか!?」
俺は、うれしくて仕方がなかった。話によると、信助も出れるらしい。うれしいよ、本当にうれしい!・・・でも、俺は知らなかったんだ。この試合の勝敗は、すでに決まっているということを・・・。
試合当日。
「わぁぁぁぁ!!!楽しみですっ!本当に、試合に出れるんですよね・・・!」
「天馬っ!頑張ろうねっ!!」
俺たちは、盛り上がっている。しかし、盛り上がっているのは、俺たちだけみたいだった。楓は、欠席。もちろん、剣城も欠席だった。
若干だるそうな、むなしそうなキャプテンの声が、響いた。
「頑張るぞ」
俺は、もう少しで、なぜこんな態度なのか、知ることとなる。
試合が始まった。―――なのに、先輩たちは、本気のプレーをしない。それどころか、シュートを打たせている。なんで、どうして!?
「何でですかッ!?」
休憩中、俺は叫んだ。先輩方は、黙ってうつむいた。マネージャーと俺たち1年生だけが、状況を理解していないみたいだった。
「・・・この試合の勝敗は、すでに決まっているんだ」
「・・・え・・・?」
目の前が、真っ白になった。―――ショウハイハ、キマッテイル・・・!?
「ど、どういうことですか!?」
「この試合は、俺たちが負けるよう、指示してあるんだ・・・」
先輩たちの話によると、この試合の勝敗は、フィフスセクターが、すでに定めているらしい。今回は、俺たち雷門の負け・・・。
「そんなの・・・ないですよ・・・」
後半戦が始まった。
俺は、やっぱり理解できなかった。勝敗が決められているなんて、絶対におかしい・・・!
・・・俺のところに、ボールが回ってくる。チャンスだと思った。でも、俺はシュートが打てないに等しい。だったら・・・
「キャプテンっ!!」
「っ!?」
俺は、とにかく、ただひたすら、キャプテンにパスを出す。でも、キャプテンは、一向にシュートを打とうとしない。ただ、無視し続ける。それでも俺は・・・!
「キャプテンっ!」
「キャプテン!!」
「キャプテンっ!!」
ただひたすら、パスを出し続けた。そして、とうとうキャプテンの真正面に、俺のけったボールが届いた。
キャプテンの瞳が、動揺したように揺れた。そして、俯いたまま、シュートを打った。―――やったぁ・・・!キャプテンが・・・シュートを・・・!
俺は、ただうれしかった。でも、キャプテンは“罪悪感”でもあるのだろうか、暗い顔のまま、うつむいていた。しかも、結果は俺たちの負け。
でも、この1点は、俺たちにとって大切な1点なんだ・・・!
俺は、そう思った。
試合が終わり、俺たちはキャラバンに乗り込む。
俺と信助だけが、喜んでいる。負けたのに、シュートをしてはいけなかったのに・・・やっぱり、それは場違いだったみたいで、ほかの先輩たちは、暗い顔のままうつむいていたり、うつろな目で外を眺めている。中には、俺たちのことを、怖い顔でにらんでいたりする人もいる。
「なんか、大変だったね・・・」
「葵・・・うん」
学校に着くと、皆無言のまま、部室へと戻って行った。無言のままサッカー塔に向かい、ドアをくぐり・・・部室に行こうとした時だった。かすかだったが、部室ないから、物音がした。
皆が、歩みを止める。そして、自動ドアから死角になるところに、皆で身を隠した。
数分後・・・部室から出てきたのは、剣城と―――楓だった。
先輩たちや信助、マネージャーたちは、頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。
「あの2人・・・どうして・・・?」