それぞれ時間は流れ、試合を明日に控える。
―――私の部屋は、ゴットエデンの最上階だ。白竜の部屋は、そのいくつか隣。
フィフスセクターの中で、特に実力のあるものがゴットエデンにやってくる。そのゴットエデン内で、さらに実力のあるもの―――すなわち、フィフスセクター内のトップクラスのものは、最上階に住んでいる。
実をいえば、京介の部屋も此処だった。あとほかにいるのは、青銅とカイと鬼塚、木屋がいた。シュウの部屋もあるが、いつもどこかへ行っているため、部屋にいるところを見れたら、ラッキーなことが起こる、何て噂が出来た。―――まぁ、守り神なんだから、森を離れるわけにはいかないだろうけど。
最上階から見えるのは、ゴットエデンのすべて。森や滝も見える。そして、そこで特訓する雷門イレブンも。
ちらほら見える、背の高い影は、おそらく円堂さんたち。金山が言っていたことも、丸々嘘ではなかったみたいだ。
シュウは皆の特訓に付き合ってくれている。私が頼んだことだ。女の子の姿も見えることから、瑠奈や葵たちは、無事に着いたみたいでほっとした。
コンコン
ドアが鳴ってすぐ、聞き慣れた声がした。
「白竜だ。いいか?」
「えぇ」
短く答えるとすぐ、白竜は私の部屋に入ってくる。毎度のことだが、白竜のジャージは、インパクトが大きすぎる。思わず、目をそむけたくなってくる。
まぁ、本人は気が付いていないのだけど。
「白竜・・・ありがとう。昨日は、本当助かった」
「いや、楓のためだからな。それより・・・此処には、一体だれが来ているんだ?」
白竜にそう尋ねられ、私も考えさせられた。そういえば、誰が来ていたんだっけ?
私は、指を折りながら数えた。
「キャプテン―――拓人さんに、霧野先輩、龍馬さん、一乃先輩、青山先輩、三国先輩、車田先輩、天城先輩、輝君、狩屋、信助、天馬、京介、葵、瑠奈、水鳥さん、茜さん、お兄さん―――鬼道さん、春奈さん・・・あと、此処にいたみたいなのは、円堂さん、吹雪さん、不動さん、風丸さん、壁山さんね」
すると白竜は俯き、考え込む。
「うむ・・・意外と多いな・・・大人だって、試合に出れないわけではないんだ・・・」
あぁ、そういうことか。私は納得した。―――明日の試合、交代がたくさんいる雷門は、ゼロにとってそういう面でも、強敵なのだろう。
そして、何か思いついたように立ち上がった。
「どうしたの?」
「・・・剣城に、宣戦布告だ」
「・・・まったく、そんなことをしても・・・。でも、付き合うわ。あなたは、私の敵だけど、敵じゃない。だけど、仲間」
私も立ち上がった。白竜は自室に戻って着替えてくるそうだ。だから私もジャージを脱ぎ、クローゼットの中に入っていたグレーのかぼちゃパンツと、フリルのついたブラウスと、ベージュのセーターを着た。
白竜もやってきて、私たちは崖の上へと向かう。私の部屋から、京介がそこで練習しているのが見えたからだ。
案の定、京介はそこにいた。
何の躊躇もなく、冷たい瞳のまま、白竜は京介の元へむかう。その姿は、もう昔の“温かさ”なんてなくって、ちょっと悲しくなった。
「あのような軟弱なチームに入っているとは、お前も変わったな・・・」
「・・・白竜・・・何しに来た・・・」
にらみ合う2人。そんな2人の間に、私は入った。
「ちょっと、2人とも・・・にらみ合わないで」
「楓・・・」
「楓・・・ッ!」
違うニュアンスで、私の名前を言い合う2人。そして、京介は驚いたような、悲しいような顔をして、私に言う。
「あの放送はなんだ。お前・・・シード長って・・・」
「・・・黙っててごめん。このことは、白竜とシュウにしか言ってなくて・・・言おうと思ってたけど、タイミングがなかったの。そして、今がタイミングでもない。・・・いつか、必ず話すから、今は許して」
私はそう一気にいうと、白竜の後ろへ回った。白竜はと言えば、上から京介を睨みつけたままだ。
「昔のお前は、誰にも心を開かない一匹狼だった・・・それが今では仲間とつるんで、仲良しこよしか・・・そんなことで“究極の存在”を目指してきた俺には、遠く及ばないだろう・・・。明日が楽しみだ・・・お前を潰せるからな・・・」
京介も、私たちをにらむ。私の視線は、京介に注がれる。
「行くぞ」
小さく白竜につぶやかれ、私はその場を去った。去り際、上からこっそり紙を落としたことに、白竜は気が付いていない。京介は、気がついたらしく、ウィンクする私と目を合わせてくれた。
―――その紙には“今日の夜、天馬と神童先輩を連れて、エンシャントダークの森に来て”と書いてあった。
私は、自分のことを・・・すべて、話すことにした。
皆の元に戻って、京介は一体、どんな感じだったのだろう。
私のことは言ったのだろうか?皆、幻滅したのだろうか?私を、敵だと思ったのだろうか?
―――それでも、私は行くしかない。
夜になり、私はいつものジャージ姿で、エンシャントダークの森へと向かった。
サッカーの守り神のお地蔵様の前―――シュウの目の前に、天馬、京介、神童先輩はいた。この3人は、今回の戦いで、大きな戦力となるだろう。私も、3人には信頼が置ける。
―――もっとも、向こうがどう思っているかは分からない。
「楓・・・」
私にいち早く気がついた天馬が、名前をつぶやく。
「・・・話とはなんだ?なぜ、フィフスセクターにいる?まだ、何かあるのか?」
「・・・初めにいいます。私はシード長です。フィフスセクターにも所属しています。でも、私はシードであって、シードでない。そのことは、天馬には昔、話した気がする・・・。私は、今は・・・皆さんの・・・て、敵・・・かもしれません。明日は、試合には出たくても出れないし・・・」
あぁ、止めたいのに、涙があふれてくる。興奮気味になって、しゃべるのもままならなかった。
「“出たくても出られない”?」
京介に尋ねられ、私は素直にうなずく。もうこれ以上、何も隠したくなかった。
「聖帝のお気に入りだから、聖帝の本来の意思でしか、私は動いていないの。つまりシードだし、あと、エンシャントダークのキャプテンでもあった。ゴットエデンにも、ずっといたし、シード長だし。ほかにもたくさんある・・・言いたいことも、ほかにも・・・でも、でも・・・!」
「もういいよ!楓、大丈夫だから!」
―――天馬がそういってくれなかったら、私は壊れていた気がする。今は、千宮路のことは言えない。
「・・・明日、私もどこかで見てる・・・」
そうとだけ言い残し、私はゴットエデン本部へ戻る。白竜に無断で出てきたから、早く帰らないといけない気がする。もっとも、シュウが知ってるから、なんとかしてくれている気もする。
そしてとうとう、この日がやってきた―――。