色紙をタイムカプセルに戻し、胸に抱えてゴットエデンに戻る。
掘るのに使ったキャップは、ゴットエデンにいくらでもあるものなので、私はその場に置いてきた。
雨は強くなる一方で、足場も比例するように悪くなる。スニーカーを履いているものの、とても走れそういなかった。
「試合は、どうなっている・・・?」
私はそう思い、葵の携帯にインカムからかける。携帯くらい、葵だって奪われていないだろう。
prrrrr・・・prrrrr・・・
『はい?』
しばらくコールする音が聞こえ、葵の透き通った声が聞こえた。
「私、楓よッ」
走りながらのため、息は荒くなる。
『楓!ごめんね、逃げ切れなくて・・・茜さんのカメラが、落ちちゃってそれで・・・』
「大丈夫、私が何度でも助けだすからッ」
『楓・・・』
葵の声を聞けば、どれだけ心細いかがわかる。“ごめんね”と言いたいのを抑え、今はとにかく試合展開を知ることにした。
「試合はどう?」
『キックオフから攻めてたけど、すぐに相手キャプテンに取られちゃって、それからはずっとゼロのペース。パスだけで、雷門を翻弄してる。しかも、スピードも速いの。それで“神のタクト”も破られちゃって、ディフェンスも破られちゃった。そして、開始3分で1点入れられちゃった・・・。キャプテンの化身も破られちゃったよ。ゼロのキャプテンの化身に・・・。剣城君も、天馬も・・・。DFも全く歯が立たない。そして、化身技であっさり2点目。今はそんなところ 』
「0-2ね・・・勝気はあるわ。あきらめちゃだめね。雷門も葵も、私も・・・ッ」
そう言い終えたところで、私は前方に、人影を見つけた。
「ごめん、葵。切るわね」
そういって、私はインカムの電源を切る。
―――試合は不利だけど、勝てると私は思う。でも、あの人影は・・・?
走っていくと、その人影の正体がわかった。
「・・・翔・・・なんで、此処に・・・?」
「久々だな、楓」
―――そこにいたのは、河原翔だった。私と立場は似ているけど、それはあくまで“公ではない”ということだけ。
彼は、理事長にフィフスからの命令を伝える役職だ。もちろん、聖帝―――豪炎寺さんの、真の目的なんて、知る由もない。
翔の実力は、はっきり言えば微妙。化身も使えないし、必殺技だって威力はそこそこ。もちろん、ゴットエデンに来れるはずがない。なのに、なぜ・・・?
「なんで此処にいるの?」
翔は、気取った笑い方をする。
「フィフスからの命令だ。山吹楓を、捕まえろとのなァ」
「そう・・・フィフスの・・・」
此処で言うフィフスは、千宮路のことだ。間違いない。
「楓、何をする気だ?」
「あんたには関係ない。そこをどけ」
翔を睨みつけ、タイムカプセルを抱き寄せて、私は走った。
眼鏡もいつの間にか落ちていて、帽子をかぶっていなかったから、外出禁止を破ったことがばれたようで、私は翔から逃げた後も、しばらく追いかけられた。
それを逃れ、私は再び豪炎寺さんの待つ、あの部屋へと戻る。
「すいません・・・」
「大丈夫か?河原に追いかけられたのだろう?」
「はい・・・」
泥だらけのジャージ姿で、泥だらけのタイムカプセルを抱え、息切れする私。自己中心的な行動をしたのに、心配してくれる豪炎寺さんは、優しすぎる。
「それは・・・?」
「白竜と京介と私の・・・思い出の品です。思い出してくれればいいと思ったんです」
試合をしている2人を見て、私は豪炎寺さんにいう。
豪炎寺さんは、私の姿を見て、苦笑しながら言う。
「とりあえず着替えてこい。試合なら、部屋でも見れる」
私は一礼して、自室へと戻った。―――ここらへんだと、もう一部の立場の高いものしか入れず、追いかけられることなどない。
泥だらけ、雨にまみれたため、私はお風呂に入る。急いで入って、髪を乾かしたため、10分で上がれた。
元の服装に戻り、ジャージは洗濯機に放り込み、シュシュもバラのものに変えて、部屋のソファに座り、TVをつける。
―――試合は、ゼロが圧倒的優勢だった。見たところ、点差は0-2のままだが、何より雷門のダメージが大きい。
悔しくなって、思わずTVから目をそむけると、視界に入ってきたのは、クローゼット。たくさんの服が入っているが、確かこの中に・・・。
反対側を向くと、ビニール袋に入ったタイムカプセル。クローゼットと見比べ、私はニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「いい子と思いついちゃった♪」
私は着替え終わり、部屋から出て、2階まで階段を駆け降りる。途中で出会った人が、声をかける。
「早く行けよ?もう試合は、始っているぜ?」
「あぁ、わかっている」
―――今の私の恰好は、中級者上くらいと同じ、あのグレーの服。黄髪は目立つから、お団子にして、茶髪のセミロングのウィッグをかぶった。目にはおかしなカバーも付け、変装完璧。
―――この状態なら、あの観衆の中にまぐれ込んでも、誰も気がつかないだろう。
ギィィィィ・・・と重いドアを開け、私はスタジアムに入る。
タイムカプセルはしっかり抱え、最前列へと歩みを進め、椅子に座る。
真下のベンチに、雷門がいた。今、前半が終わったところだ。
「皆・・・ッ」
「監督!このままじゃ、俺たちに勝ち目はありません!」
傷ついたキャプテンが、円堂さんにうったえる。円堂さんは、いたって冷静で、
「確かに奴らの力はすごい・・・だが、チャンスはある。なぜなら、お前たちはまだ、特訓の成果を出していない」
「特訓の成果・・・」
怪訝な顔のみんな。でも、私も確かに、円堂さんのいうことに賛成だ。あんなに頑張っていたんだから、まだまだ“眠っている力”があるはずだ。
一方の白竜は、雷門を馬鹿にしたように発言した。
―――その発言通りにはいかず、なかなか雷門は力を発揮できず、後半早々、白竜の化身―――聖獣シャイニングドラゴンが発動される。皆がひるむ中、天馬が化身を発動する。
「魔神ペガサス!」
「天馬!」
「俺が止めます!!」
天馬の勢いをみて、シュウが天馬に呼び掛ける。
「もう諦めたほうがいい!キミの力では、どうすることもできない!」
「だからって逃げられない!」
そうよ、天馬。このゴットエデンの自然は、貴方達に教えてくれたはず。どんな困難でも、立ち向かうことをやめなければ、乗り越えられるんだ、ってことを・・・!
「さらに高く舞い上がる!天まで届け!」
天馬がそう叫ぶと、ペガサスが変形する。
「魔神ペガサスアーク!」
「・・・ペガサスが、進化した!?」
―――此処からだ、雷門の反撃は・・・!