mix color   作:御沢

75 / 97
特訓の成果

色紙をタイムカプセルに戻し、胸に抱えてゴットエデンに戻る。

掘るのに使ったキャップは、ゴットエデンにいくらでもあるものなので、私はその場に置いてきた。

雨は強くなる一方で、足場も比例するように悪くなる。スニーカーを履いているものの、とても走れそういなかった。

「試合は、どうなっている・・・?」

私はそう思い、葵の携帯にインカムからかける。携帯くらい、葵だって奪われていないだろう。

 

 

prrrrr・・・prrrrr・・・

『はい?』

しばらくコールする音が聞こえ、葵の透き通った声が聞こえた。

「私、楓よッ」

走りながらのため、息は荒くなる。

『楓!ごめんね、逃げ切れなくて・・・茜さんのカメラが、落ちちゃってそれで・・・』

「大丈夫、私が何度でも助けだすからッ」

『楓・・・』

葵の声を聞けば、どれだけ心細いかがわかる。“ごめんね”と言いたいのを抑え、今はとにかく試合展開を知ることにした。

「試合はどう?」

『キックオフから攻めてたけど、すぐに相手キャプテンに取られちゃって、それからはずっとゼロのペース。パスだけで、雷門を翻弄してる。しかも、スピードも速いの。それで“神のタクト”も破られちゃって、ディフェンスも破られちゃった。そして、開始3分で1点入れられちゃった・・・。キャプテンの化身も破られちゃったよ。ゼロのキャプテンの化身に・・・。剣城君も、天馬も・・・。DFも全く歯が立たない。そして、化身技であっさり2点目。今はそんなところ 』

「0-2ね・・・勝気はあるわ。あきらめちゃだめね。雷門も葵も、私も・・・ッ」

そう言い終えたところで、私は前方に、人影を見つけた。

「ごめん、葵。切るわね」

そういって、私はインカムの電源を切る。

―――試合は不利だけど、勝てると私は思う。でも、あの人影は・・・?

 

 

走っていくと、その人影の正体がわかった。

「・・・翔・・・なんで、此処に・・・?」

「久々だな、楓」

―――そこにいたのは、河原翔だった。私と立場は似ているけど、それはあくまで“公ではない”ということだけ。

彼は、理事長にフィフスからの命令を伝える役職だ。もちろん、聖帝―――豪炎寺さんの、真の目的なんて、知る由もない。

翔の実力は、はっきり言えば微妙。化身も使えないし、必殺技だって威力はそこそこ。もちろん、ゴットエデンに来れるはずがない。なのに、なぜ・・・?

「なんで此処にいるの?」

翔は、気取った笑い方をする。

「フィフスからの命令だ。山吹楓を、捕まえろとのなァ」

「そう・・・フィフスの・・・」

此処で言うフィフスは、千宮路のことだ。間違いない。

「楓、何をする気だ?」

「あんたには関係ない。そこをどけ」

翔を睨みつけ、タイムカプセルを抱き寄せて、私は走った。

 

 

眼鏡もいつの間にか落ちていて、帽子をかぶっていなかったから、外出禁止を破ったことがばれたようで、私は翔から逃げた後も、しばらく追いかけられた。

それを逃れ、私は再び豪炎寺さんの待つ、あの部屋へと戻る。

「すいません・・・」

「大丈夫か?河原に追いかけられたのだろう?」

「はい・・・」

泥だらけのジャージ姿で、泥だらけのタイムカプセルを抱え、息切れする私。自己中心的な行動をしたのに、心配してくれる豪炎寺さんは、優しすぎる。

「それは・・・?」

「白竜と京介と私の・・・思い出の品です。思い出してくれればいいと思ったんです」

試合をしている2人を見て、私は豪炎寺さんにいう。

豪炎寺さんは、私の姿を見て、苦笑しながら言う。

「とりあえず着替えてこい。試合なら、部屋でも見れる」

私は一礼して、自室へと戻った。―――ここらへんだと、もう一部の立場の高いものしか入れず、追いかけられることなどない。

 

 

泥だらけ、雨にまみれたため、私はお風呂に入る。急いで入って、髪を乾かしたため、10分で上がれた。

元の服装に戻り、ジャージは洗濯機に放り込み、シュシュもバラのものに変えて、部屋のソファに座り、TVをつける。

―――試合は、ゼロが圧倒的優勢だった。見たところ、点差は0-2のままだが、何より雷門のダメージが大きい。

悔しくなって、思わずTVから目をそむけると、視界に入ってきたのは、クローゼット。たくさんの服が入っているが、確かこの中に・・・。

反対側を向くと、ビニール袋に入ったタイムカプセル。クローゼットと見比べ、私はニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべる。

「いい子と思いついちゃった♪」

 

 

私は着替え終わり、部屋から出て、2階まで階段を駆け降りる。途中で出会った人が、声をかける。

「早く行けよ?もう試合は、始っているぜ?」

「あぁ、わかっている」

―――今の私の恰好は、中級者上くらいと同じ、あのグレーの服。黄髪は目立つから、お団子にして、茶髪のセミロングのウィッグをかぶった。目にはおかしなカバーも付け、変装完璧。

―――この状態なら、あの観衆の中にまぐれ込んでも、誰も気がつかないだろう。

ギィィィィ・・・と重いドアを開け、私はスタジアムに入る。

タイムカプセルはしっかり抱え、最前列へと歩みを進め、椅子に座る。

真下のベンチに、雷門がいた。今、前半が終わったところだ。

「皆・・・ッ」

 

 

「監督!このままじゃ、俺たちに勝ち目はありません!」

傷ついたキャプテンが、円堂さんにうったえる。円堂さんは、いたって冷静で、

「確かに奴らの力はすごい・・・だが、チャンスはある。なぜなら、お前たちはまだ、特訓の成果を出していない」

「特訓の成果・・・」

怪訝な顔のみんな。でも、私も確かに、円堂さんのいうことに賛成だ。あんなに頑張っていたんだから、まだまだ“眠っている力”があるはずだ。

一方の白竜は、雷門を馬鹿にしたように発言した。

―――その発言通りにはいかず、なかなか雷門は力を発揮できず、後半早々、白竜の化身―――聖獣シャイニングドラゴンが発動される。皆がひるむ中、天馬が化身を発動する。

「魔神ペガサス!」

「天馬!」

「俺が止めます!!」

天馬の勢いをみて、シュウが天馬に呼び掛ける。

「もう諦めたほうがいい!キミの力では、どうすることもできない!」

「だからって逃げられない!」

そうよ、天馬。このゴットエデンの自然は、貴方達に教えてくれたはず。どんな困難でも、立ち向かうことをやめなければ、乗り越えられるんだ、ってことを・・・!

「さらに高く舞い上がる!天まで届け!」

天馬がそう叫ぶと、ペガサスが変形する。

「魔神ペガサスアーク!」

「・・・ペガサスが、進化した!?」

 

 

―――此処からだ、雷門の反撃は・・・!

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。