mix color   作:御沢

76 / 97
再救出

天馬の化身―――魔神ペガサスアークは、白竜の化身、あの大きくて立派な、聖獣シャイニングドラゴンを、一撃で倒す。

「キャプテン!」

天馬のボールは、キャプテンにわたる。

 

 

―――キャプテンは確か、風丸さんとともに、巨大な葉っぱを飛び移る訓練をしていたはずだ。

その時に身に付けた、反射神経。どこを通って、どこを避ければ、安全に行けるかどうか、この特訓で身につけたはずだ。

「奏者マエストロ!!・・見えた!」

キャプテンには、しっかりとボールのルートが見えたらしい。そうだ、その調子だ。

「ハーモニクス!!」

化身シュートに見せかけ、そのボールは京介へ。そして、今や京介の十八番となりつつある、あの技がさく裂。

「デスドロップッ!!」

ドカッという音とともに、ボールが蹴られる。ゴールに向かう、強力な力を持つボール。

しかし、雷門の力は、此処で終わるものではない。

天馬がボールの前に滑り込み、ハーモニクス、デスドロップのパワーのこもったボールを、化身を出したまま蹴りこむ。

相手キャプテンは抗うが、それもむなしく、天馬の蹴りこんだボールは、ゼロゴールに突き刺さる。

 

 

その瞬間、スタジアム中が動揺する。当たり前だ。此処は、ほとんどがゼロの見方だ。観客だったら、私くらいしか雷門の味方はいないだろう。

「やったー!!決めたぞーッ!」

天馬の声が、スタジアムに響く。その声につられ、私も思わず立ち上がってしまう。

「やったっ!光が見えたッ!!」

その声に、お兄さんが振り返る。

「楓・・・?」

お兄さんたちには、この変装だって通用しなかった。

「あ・・・お兄さん・・・皆さん・・・こ、こんにちわ・・・あはは・・・」

乾いた笑い声が、私たちの周りに響いた。怒られるだろう、軽蔑されるだろう、そう覚悟していた。

しかし、現実は違っていた。

「無事だったんだな。安心した」

「お兄さん・・・ありがとうございます」

今謝ると、キリがない。私は、とりあえず礼を述べ、そして“希望”を託すことにした。

 

 

「お兄さん!これを・・・京介に・・・」

私が渡したのは、あのタイムカプセル。タイムカプセルの中には、サッカーボールと色紙、それに今さっき書いた、私から京介と白竜に対した、ミニレターが入っている。

「これは・・・?」

「京介に渡せばわかります。この試合、絶対にカギの1つになります」

まっすぐに瞳を見つめ、私はお兄さんに託した。お兄さんは戸惑い気味だったが、すぐに力強くうなずいた。

 

 

私はお兄さんに託し、私は豪炎寺さんのところへ向かった。

「失礼します」

私がそういって入ると、豪炎寺さんはスマホを眺めていた。

「千宮路だ。“終わりにしろ”とな・・・」

「そう、ですか・・・」

私はそういうと黙りこむ。豪炎寺さんは、牙山に電話をかける。―――終わりにする、という電話を・・・。

「仕上げに入る!」

しばらくして、白竜の声が聞こえた。そして、一気にまぶしくなるフィールド。

「化身・・・」

フィールド上には、シャイニングドラゴンを中心に、化身が5対出ている。前半にも、同じ展開があったらしい。

「化身を使える時間は限られている!此処は何としても抑え込むんだ!」

キャプテンの発言を、白竜は馬鹿にする。

「それを分かっていたところで、どうにもならないんだよ!」

「ならば連携して迎え撃つ!」

天馬、京介、キャプテンの化身が出る。5-3、ちょっときついかもしれない。それに・・・化身使いはまだいる。

 

 

―――その時だった。霧野先輩が、急に飛び出した。

「ディフェンス!神童たちをサポートする!俺たちにしかできないことがある!!」

そういうと、雷門DFの4人は、それぞれの技で計2体の化身を抑え込む。これで対等。でも、本当にこれだけ・・・?シュウの化身は、まだ出ない・・・?

そのことだけが、頭に浮かぶ。もうそろそろ、シュウだって化身を出してくる。

そんな考えを覆すように、雷門は化身を使いこなし、ボールを奪った。そのボールはキャプテンにわたり、輝君にわたる。そして、エクステンドゾーンでボールをける。

・・・が、それはフェイント。雷門にだって、もう1人、化身使いがいるのだ。

「いくぜよ!戦国武神ムサシ!!武神連斬!!」

錦先輩の化身シュートは、見事ゼロゴールに突き刺さる。とうとう、2-2。雷門は、ゼロに追いついたのだ。

 

 

その時だった。―――白竜が言っていた。“大人だって、試合に出れる”と・・・。

その言葉の通りになる。牙山たちが、”教育”の名のもとに、試合に出ることとなってしまったのだ。

「馬鹿な!」

「シュウ!本当にこれでいいの?これがキミの求めるサッカーなの!?」

選手に続き、お兄さんたちも反撃する。

「こんなことが許されるわけがない!!」

しかし、牙山の態度は変わらない。

「あなた方は、立場を理解するべきではないかな?」

―――そうだった。葵が、まだ捕まったままだった。

私は椅子から立ち上がり、豪炎寺さんに一礼すると、インカムをつなぐ。

 

 

prrrrr・・・prrrrr・・・

『もしもし』

「葵!楓よ!今助けにいくから、檻の入口の近くにいて頂戴!」

『え?楓、大丈夫なの!?』

葵の心配そうな声が聞こえる。

「大丈夫よ。シード長をなめないのね」

『シード長?』

葵の不思議そうな声を聞きつつ、それはあえて無視。急いで1階まで駆け降りて、鍵を借りることにした。

「それじゃあ、すぐ行くから!」

そういうと、私は一方的に電話を切って、全速疾走する。

「何度だって、助け出してみせる・・・!」

ロビーでは、人なんてほとんど来ないのに、ちゃんと女性が制服を着て対応する。

「楓さま、どうされたのですか?」

「左のカギ、全部貸してください!」

ダメもとで頼む。ダメでも、強行するつもりだった。しかし、意外と簡単で。

「いいですよ。でも、何に使われるのです?」

私は悟った。―――受付嬢には、何も伝えられていないのだ。私は笑顔をつくり、急いで駆けあがる。

 

 

檻のカギは、全部で20種類。すべて試していては、気付かれる可能性がある。

―――考えないと。まず、最新式が多い中、確か古くから使われていた形だったため、くの字型はありえない。すると、7種類にまで絞られる。そして、下と上に空きスペースがある穴のため、下にしかない奴、および横にある奴は除外。すると、残るは3種類。

鍵穴のさび具合からして、2つは古く、1つは新しい。あの檻は、見た目は新しかった。つまり、1つに絞られた。

「これねっ!」

正解のカギを握りしめ、私は檻に向かって走る。そして、鍵穴にカギを差し込む。―――ガチャリ。

「開いた・・・っ!」

扉を開けると、瞳に涙を浮かべた葵がいた。扉が開くなり、私に抱きつく葵。

「ちょ、葵・・・っ!?」

「楓・・・怖かったよぉ・・・!」

私は葵をなでて、すぐに手をつなぎ、スタジアムに向かった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。