「葵、今から瑠奈に電話するから、葵は走って皆のところへ行って」
檻からしばらく離れて、葵の肩をつかんだ私は、葵にいう。葵は困惑した表情だ。
「楓は・・・?」
「私は、まだやることがあるから」
そういうと、私はインカムの電源を入れて、瑠奈に電話をかけた。
prrrrr・・・prrrrr・・・
コール音ののち、瑠奈の声が聞こえた。
『もしもし』
「瑠奈、私よ」
『楓・・・!大丈夫なの!?今どこ!?』
瑠奈に質問攻めにされ、思わず苦笑してしまう。
「大丈夫よ。・・・今から葵が、そっちに行くわ。だからよろしく」
『え・・・あ、檻が開いてる!?』
その瑠奈の言葉に、向こう側がざわめくのがわかる。
「それじゃあ、そういうことだから」
またまた一方的に切り、葵の手を引く。
「楓・・・楓は、シード長なの?」
不安げな葵の声が、私の耳の奥に響いた。
「・・・えぇ」
しばらくの間の後、私は俯いて答える。
「シードなの?なんで?」
私は、葵のほうを向いて、瞳を見つめて、葵にいう。
「ごめんね。でも、誤解しないでほしいの。私は、雷門の仲間。皆の勝利を心から願っているし、なんだってできる。シード長だって、その1つだと思って」
すると葵は、私の瞳を見つめる。
「信じてる」
「っ!・・・ふっ、あなたらしい。ありがとう。ほら、もう着いたわ。このエレベーターを上にあがると、スタジアムよ。此処でバイバイっ!」
私はそういうと、踵を返し、葵に背を向けて豪炎寺さんの待つ部屋へ、全速力で駆ける。
「失礼します、試合は・・・っ!?」
豪炎寺さんのいる部屋に入り、巨大なガラスの奥に見えたのは、ボロボロにされた皆の姿だった。点差は2-3となっていて、きっとシュウか白竜が決めたのだと思った。
「どうする、円堂・・・」
豪炎寺さんが、円堂さんにたいして、つぶやくように尋ねる。返答など、絶対に返ってくるはずがない。
「このままでは天馬たちが・・・」
「見てられないっス・・・」
風丸さんたちも、絶句したようだ。そんな中、不動さんだけがベンチに深く腰掛けている。
「お前らわかってねぇな・・・俺たちがじたばたしても始まんねーだろ・・・これは天馬たちの試合だ!」
その通りだ。でも、こんな皆を見て・・・。
「こんなの絶対に許せない!サッカーが・・・サッカーが泣いてるよ!こんなのサッカーじゃないって・・・泣いてるよ!」
天馬の叫び声が、スタジアムに反響している。
しばらくの間が開いて、円堂さん―――円堂監督が出した答え。それは・・・
「監督として一番大切なこと・・・それは、何があってもチームを守ることなんだ!」
スタジアム中がどよめく。ベンチだってどよめいているようだったが、不動さんが立ち上がりいう。
「やれやれ・・・これだからサッカーバカは困るぜ・・・つきあうぜ、キャプテン!」
その言葉に、ほかの皆さんも同意する。
―――次の瞬間、皆さんの周りが光る。そして、現れたのは―――・・・
「円堂さん・・・否、あれは・・・“円堂くん”?」
・・・―――中学生時代の、皆さんだった。
「天馬、すまん!お前たちの勝負、いったん俺たちにあずからせてくれ!」
「キャプテン!」
春奈さんの声が、此処まで聞こえた。
「お互い6人の選手交代だ。認めてもらうぞ!」
円堂さんは、天馬の前にしゃがみ込む。
「天馬・・・雷門の力、見せてやろうぜ!」
「・・・はいっ!!」
そして、円堂さんが皆に呼び掛ける。
「さぁ、みんな!サッカーやろうぜ!!」
キックオフ早々、ゼロにボールを奪われる。しかし、壁山さんの完全進化した“ザ・ウォール”に阻まれる。
次は、風丸さんの“疾風ダッシュ”。そして、吹雪さんの”エターナルブリザード”。シュートかと思いきや、実はシュートチェイン。
不動さん、風丸さん、お兄さんの“皇帝ペンギン2号”。雷門イレブンは、その息の合った連携に息をのむ。
相手GKの抵抗もむなしく、シュートは決まり、3-3となる。―――さすが、イナズマジャパン。
しかし、ゼロだって負けていない。牙山の必殺技・風林火山デストロイヤーが雷門ゴールに向かう。
その直後、円堂さんが光る。そして・・・
「あれは、マジン・ザ・ハンド!?」
・・・いや、違う。あれは、私も何度か見たことがある。あれは・・・
「ゴットハンドV!!」
―――これが、ゴットハンドの進化系・ゴットハンドVだ。
そのあとも、攻防戦は続く。
霧野先輩が止めに行く。そこにアドバイスしたのは、同じDFの風丸さん。
ゲームメーカーのキャプテンにアドバイスするのは、同じゲームメーカーとして数々の試合を勝利に導いた、お兄さんだった。
DFの信助にアドバイスするのは、壁山さん。
信助からのパスを受けた天馬は、吹雪さんからアドバイスを受ける。天馬なら、風になれるはずだ。
最後は京介。仲間の大切さをある意味一番理解する不動さんが、京介に“仲間の大切さ”をアドバイス。
キャプテンと京介の連携必殺技・ジョーカーレインズが炸裂。ゴールに突き刺さり、4-3。とうとう追い越したのだ。
ベンチに戻った円堂さんが、天馬たちにいう。
「此処からはお前たちの戦いだ・・・お前たちは俺たちの“魂”を受け継いだ雷門イレブンなんだ!」
すると、豪炎寺さんが電話をかける。そして一言。
「もういい。・・・さがれと言っている」
電話を切りおわり、豪炎寺さんは私を見て、笑みを浮かべた。その笑みに答え、私も笑みを浮かべる。
再び本来の雷門VSゼロとなる。
白竜の顔は、とても恐ろしかった。何かに取りつかれたようだけど、逆を返せば、それだけサッカーが好きだということだ。
シャイニングドラゴンを出す。しかし、天馬のペガサスアークに倒されてしまう。そして、天馬にボールが渡り・・・
「ジャスティスウイング!」
「新しい化身シュート!」
「完璧に化身を使いこなしてやがる!!」
「天馬ならやると思ったわ!」
新たな化身シュートにより、さらに点差は開き、5-3。
シュウが何か白竜に声をかける。白竜の顔は、暗くよどんでいるものの、何か恐ろしかった。
―――此処から、次の悪夢が待っている。