―――ピッピ―――ッ!!!
試合終了を告げる笛が、スタジアムに鳴り響く。
ホイッスルの音とともに、雷門、ゼロコールが響いている。
この試合は、本当に素晴らしいものだった。世界代表選だって、これほどいい試合はないだろう。
非公式の、最高の試合―――・・・。
ガラス越し、輝くフィールドを見下ろしていると、豪炎寺さんが私に言う。
「楓、お疲れ様。さぁ、行ってもいい」
「豪炎寺さん・・・ありがとうっ!すっごく、いい試合だった!」
思わずタメ口気味でいってしまったが、もうそこは気にしない。
私はドアを開け放ち、フィールドに全速力で走った。
観客席は、すごい熱気に包まれていて、きっと耳をふさいでもこの声は聞こえるだろうなと思った。
どんなにクーラーをつけても、この熱気は消えないだろうなと思った。
「皆-っ!」
叫びながら、私は階段を駆け降りた。ミュールが邪魔になり、結局裸足になったけど、それも関係ない。飛ぶように走れる。体が異常に軽いみたい。
「楓っ!」
最初に気づいたのは、意外にも白竜だった。隣にいた京介もやってきて、3人で話す。
「タイムカプセル、約束守れなかった・・・ごめんね?」
私がそう謝ると、白竜は笑う。
「いや、今こそ最高のタイミングだった。・・・試合中、ゴットエデンを駆け回ったんだろ?」
「え・・・なんで、知ってるの?」
私は、白竜が知っていることに驚き、京介は、私が走り回っていたことに驚いた。
「走り回ったって・・・?」
「あ・・・うん、いろいろあったの。本当、いろいろ・・・走り回って」
「そうか。お疲れ」
「ん。ありがと」
京介が頭を撫でてくれる。柄じゃないけど、ちょっと気持ち良かったり。
「・・・で、なんで白竜が知ってんの?」
すると白竜が、超小型インカムを指差す。
「雨が降る中、エンシャントダークの森に行っただろ?そして、タイムカプセルを掘り出してきた。―――その途中、翔とかいう奴と会ったんだろ?その前に、とらえられていた青い髪の女と話していた。そこからの内容が、実は全部聞こえていたんだ。その女を救出したり、その前にいろいろ鍵が何が正しいのか、推理したりするのも、すべてな」
「そ、そうなのっ?」
驚いた。そして、ふと思い出す。
「・・・ってことは、私が最後のほうに叫んだ、あの言葉・・・聞こえないと思っていたのに、もしかして・・・?」
「あぁ。ばっちり聞こえていた」
その事実を知った瞬間、顔がみるみる赤くなるのがわかった。
―――白竜に聞こえなくてもいい、そう思いつつ、無意識のうちに“白竜のインカムが、もし電源が入っていたら・・・”なんて考えて、あの言葉を叫んでいた。でも、本当に聞こえていたら、ちょっと恥ずかしい・・・!
“白竜!此処での特訓は大変だけど、頑張れたのはだれのおかげっ!?私は、京介や白竜やシュウ・・・青銅やカイたちのおかげよっ!貴方と仲間で・・・ライバルだったから、サッカーが好きでいられたの!貴方とのサッカー、楽しかったわ・・・!”
「っ!もうっ!!」
そっぽを向いた私を、京介がわけのわからない、という顔で見つめる。
「何を言ったんだ?」
「・・・京介は、知らなくていいっ!!」
「気になるだろ?教えろよ?」
「いーやっ!」
こんなやり取りをしながら、昔に戻れたようで、とっても嬉しかった。でも、これは昔じゃない。思い出じゃない。
―――“今”なんだ―――・・・。
「楓ーっ!」
白竜と京介と話していると、後ろから天馬がやってきた。私は、天馬に一言言いたかった。
「天馬、グリフォンすごかったわ!・・・ただ・・・」
「ただ・・・?」
天馬の顔が曇る。私は、此処最近よくやる、いたずらっ子のような小悪魔のような笑みを浮かべた。
「・・・直列つなぎはないわ。うまい、と思っちゃったけど・・・さすがに・・・白竜たちのは、天馬と同じような気がするけど・・・?並列なの?」
天馬は、苦笑いをする。
私の視線は、天馬の横のシュウに向けられる。否、シュウに吸い込まれた、と言った感じだ。
「シュウ・・・よかったね」
「あぁ」
とても優しい顔をしているシュウ。きっとこれで、妹さんのところにだって、幸せに行けると思う。
村のみんなだって、シュウのことを許してくれると思う。
“そうだね、ありがとう”
心の中に、そんな言葉が響いた。はっとシュウを見ると、ニコニコ笑っていた。私は、あえて口に出していった。
「また会えるよね」
―――それはつまり、成仏したって、シュウは神様に違いないから、ゴットエデンに来れば、いつだって会えるよね?という意味・・・。
シュウは、最高の笑顔で言ってくれる。
「当り前だよ。また会おうね」
私と京介と白竜とシュウと天馬は、拳を作って、真ん中に集めた。何の打ち合わせもしていなかったけど、いう言葉は1つだった。
『サッカーやろうぜ!』
そのあと、私は白竜に抱きあげられて、大声で叫ばれた。
「この試合の本当の選手は・・・楓だっ!」
私は、大きく頭を縦に振って言い放った。
「そうかもねっ♪」
そのあと、温泉に入りに行ったりした。
基本、やっぱり白竜と京介と行動したけど、この2人、前の関係に戻った途端、ライバル“すぎる”ようになってしまった。
なかなか風呂からあがりたがらなくって、めんどくさかった。でも、幸せな気持ちになれた。
島で久々にのんびり過ごしたのは、とても楽しかった。
京介は久々に自分の部屋に行くことが出来た。京介の部屋は、とてもシャープでおしゃれだった。
ちなみにジャージは、私は黒地にピンクのライン、白竜は白地に金色のラインだったが、京介は黒地に紫のラインだった。久々に見たけど、似合っていた。
また、ジャージの下から見えるTシャツは、私はピンク、白竜は金、京介は赤だ。
また、私や白竜の部屋にも行った。私の部屋は普通の反応だったのに対して、白竜のあの部屋は、あからさまにいやな反応をした京介だったり。
あっという間に過ぎて、もうゴットエデンを去る日になった。
此処から去れば、またホーリーロードの日々が始まる。この試合は、確かにある意味合宿だったのかもしれない。円堂さんが、何をしているのかもわかった。―――元から知っていたけど。
円堂さんたちは、まだゴットエデンに残るらしいけど、私たちはだからこそ、ホーリーロードを勝ち抜かないといけない。
“楓”
またあの―――シュウの声が聞こえた。心の中で話しかける。
“天馬に伝えて”
“えぇ、わかった”
しばらくシュウの声が途切れ、優しいシュウの声が響いた。
“天馬とサッカー出来て、楽しかった・・・ありがとう・・・天馬・・・”
“・・・わかった。ちゃんと伝えとく”
“それと―――”
間髪いれず、シュウの声がまた響いた。
“楓も―――ありがとう。これで、心の交流は終わりだ。また会おうね”
私は、胸に手を当て、シュウに呼びかける。
“うん、またね”
―――それ以降、シュウの声は聞こえてこなかった。
途切れた瞬間、天馬がゴットエデンを振り返り、つぶやくのが聞こえた。
「さよなら・・・シュウ・・・」
私は天馬の横に立って、笑いかけた。
「また会えるわ・・・ね?ありがとうって・・・言ってるわ」
天馬は、ちょっと不思議そうな顔をしたけど、やがて笑ってうなずいた。
船の甲板に立ち、天馬、京介、私、キャプテンは大きな夕日を眺める。
「サッカー、楽しいです!」
私たち3人は苦笑する。
「何をいまさら・・・」
「わかりきったことを・・・」
「ふふっ、天馬らしいけど」
そして、天馬が大声で叫ぶ。
「サッカー!!ありがとう!!」
―――神の楽園での、短くて長い数日間・・・。
いろいろあって、頭がこんがりそうだったけど、とても楽しい数日間だった。
白竜風に言ったら、
―――究極の神の楽園で手に入れた、“究極の絆”って感じかしら?
グリフォン編終了です♪
次は、木戸川清修ですー☆