木戸川清修の試合は、俺―――天馬から見れば、あーだこーだ、って感じだった。
まずフィールドが、ウォーターワールドスタジアムって言って、ピッチダウンしたりする。
まぁ、相手が仕掛けを知らなかったのは、幸いだったのかな。
楓は、もうわかると思うけど、今回の監督も知り合いだったみたい。本当、楓は顔が広いよなぁ・・・。
すごくきれいな顔立ちの、女性の監督だった。・・・いや、男性だったっけ?
まぁ、いいや。
とにかく、その監督も、鬼道監督並みに頭が切れる監督だった。そして思った。
「ねぇ、楓」
「ん?何、天馬?」
「楓のゲームメイクって、木戸川清修の監督と、鬼道監督を足して2で割った感じだよね」
「あー・・・そうかもしれない。2人とも・・・私にとって、大切な人だから」
楓はそういうと、走って行って、かばんの中から何かを取りだした。
「これって・・・?」
「アルバム」
小さな紫色のアルバムだった。楓の細い指が、アルバムのページをめくっていく。
「これって・・・」
「えぇ」
そこに写っていたのは、幼いころの楓だった。見た目は、今の楓を幼くした感じ。今が美人、って感じなら、この楓は、可愛い感じだ。
ほかにも、円堂監督や鬼道監督たち、雷門イレブンもイナズマジャパンも写っていた。
「すごい・・・!」
「・・・とても素敵な思い出」
優しくて、悲しそうな瞳で、楓はただ写真を見つめる。―――なんとなくだけど、楓はただの中1じゃない、と思う。理由なんてないけれど、抱え込んでいる者の量が、莫大だと思う。
「あ、これって・・・」
しばらくめくっていると、相手監督らしき人がいた。
「えぇ。アフロディよ。このころから彼は、いろいろ孤立してたけど・・・優しかった」
「そうなんだ・・・」
そこに写る2人は、今より当然幼いけれど、とても優しくて楽しそうに笑っていた。
―――そんな2人が、敵にいる。それも、2回目。
「楓」
「何?」
俺は、最高の笑顔で言った。
「困ったことがあったら、俺も手伝うからね」
「ッ!」
その時の楓の顔は、最近はよく見せる、驚いた顔。ちょっと前の楓は、常にポーカーフェイスだった。
「さ、もうすぐ後半だ!頑張ろう!」
「・・・えぇ!」
ドリンクを飲みほして、俺たちはピッチへと駆けて行こうとした時だった。
「久々だな」
低い声が聞こえ、俺たちは振り返る。楓は、すぐに駆けだした。
「染岡さんっ!久しぶりです!」
「お前は・・・楓か!大きくなったな!」
そういうと、彼―――染岡さんは、楓の頭をくしゃくしゃ撫でた。そして、やがて錦先輩に向き合う。
「ほいよ」
サッカーボールに赤い印をつけて、染岡さんは錦先輩に渡す。錦先輩は、ボールをける。
俺は、思わず声を上げる。
「すごい!真ん中だ・・・!」
印は、木の節の真ん中についていた。それを見た染岡さんは、満足げに笑い、錦先輩に何かを渡す。
染岡さんが渡したのは、握り飯。それを錦先輩は、美味しそうに食べる。
「錦先輩もね、いろいろあったみたい。でも、乗り越えたのよ」
楓が横で、俺に言う。―――やっぱり、楓は知っていることが多い・・・。
木戸川清修の問題は、滝兄弟だった。
お兄さんと弟の、ちょっとした兄弟喧嘩。俺も、姉ちゃんとケンカすることはあるけど・・・試合には、持ち込まない。
「総介も快彦も、ケンカはしないほうがいいわよ」
「はぁ?後輩のくせに・・・」
「フィフスセクター内では、私のほうが上よ」
楓は、滝兄弟とも知り合いらしい。ま、それはいいとして。
―――雷門は最高になっていた。錦先輩は自信をつけ、見事ゴール。“戦国武神ムサシ”という化身も発動したんだ!
錦先輩は、同点ゴールも決めたんだ。
一方、滝兄弟は・・・。
快彦を投入してきた。俺にだって、何か考えがあることは分かる。
―――予想的中、というのだろうか。“問題点”だった兄弟は、“鍵”へと変わった。変わった木戸川清修は強かった。
・・・でも、雷門だって負けていないわけで。
狩屋と信助は、“かっとびディフェンス”を成功させる。錦先輩に至っては、ハットトリックだ。
―――雷門の猛攻は止まらず、結果、雷門が勝利した。
「やったねーっ!」
「本当だよ、天馬ぁ!」
いつものように、信助と、葵と喜んでいる。この2人といると、とても幸せな気持ちになれる。もちろん、楓も剣城も、輝も狩屋も、先輩もだけど。
「ねぇ、葵、信助」
「ん?なぁに?」
俺は、2人に向かっていった。
「サッカーって、最高のスポーツだよね!永遠不滅だよっ!」
2人は、ニコニコ笑ってくれた。
「そうだね」
「きっとそうね」
「だろ?」
―――次はいよいよ、準々決勝。