準々決勝は、幻影学園。
幻影学園って言ったら・・・確か・・・
―――私、楓は、曇る空を見つめる。
幻影学園には、幸恵さんがいる。確か、天城先輩の知り合いだったはず。
幸恵さん―――香坂幸恵さんは、幻影学園の3年生で、サッカー部のマネージャーさん。
小学校が一緒で、一緒に児童会をしたこともあった。でも・・・幼馴染の真帆路さんとか、天城先輩とか、いろいろあったみたいで・・・。
関係は持っていたものの、疎遠になりつつあった。そのまま忘れればよかったけど・・・。
この前、メールが来た。幸恵さんからだった。
“楓ちゃんへ
久しぶり。元気だった?
そういえば、ホーリーロードが始まってるよね。
雷門と、幻影学園が・・・ぶつかるよね。
お互いに頑張ろう!
私は、2人を元に戻したいし・・・。
じゃあね!
幸恵”
久々のメールは、うれしかったものの、内容が内容だった。
「敵・・・なのよね」
家の庭のバラ園の中に、小さな小屋がある。ベルサイユ風な感じ。そこに今、私はこもっている。することもなかったからだ。
窓から見える、小雨の降る灰色の空。気分が落ち込む。
でも、どうしようもない。それに、“敵”じゃない。“相手”だ。
「頑張ればいい話・・・か」
1人で笑って、小屋のベットに横たわる。
―――幻影学園戦となった。
スタジアムは、ピンホールスタジアム。変なスタジアムで、まるでピンホールの中にいるよう。
変なスタジアムは、今に始まったことじゃないけど、相変わらず厄介だ。
そして、天城先輩は真帆路さんとの間に、確執がある。幸恵さんは、2人の中を心配している。皆にとって、大切な試合だ。
試合開始。
パスをしながら試合を進めて行くと、突然、スタジアムの特殊機能が作動する。せり上がってきたバンパー。パスしたボールが、バンパーにはじかれる。
今度は、突出したポールに、倉間先輩がぶつかってしまう。ボールだけじゃなく、選手まで阻むなんて・・・恐るべし、ピンホールスタジアム。
「何か指示・・・」
そう思って、お兄さんのほうを向く。すると、茜さんがカメラを向けている。お兄さんは、検討中か・・・。キャプテンも、わかっていないようだ。というよりは、考える余裕はないだろう。
そして、相手が動き出した。
―――真帆路さんが、“マボロシショット”を打ってきた。このシュートは、かなりの威力を誇り、なによりも動きが読めない。
天城先輩が、必殺技でとめようとした。でも、シュートは決まってしまう。
1-0。雷門は、先取されてしまった。
―――試合中、天城先輩と真帆路さんは、何度か話していた。
聞こえた内容の1つに、こんなものがあった。
「かなわない相手には、従うしかない」
その言葉には、ちょっとわかるものがある。私も、そう思っていた時期が・・・なくもなかったから。
基本、努力と結果は比例する、と思っているけど、一時期自暴自棄になったこともあった。ゴットエデンでの日々は、最初のほうは辛かったし。
そして、再び真帆路さんのシュートが炸裂。
天城先輩の横をすり抜けて、やっぱりあっさりゴール。
どうすれば・・・バンパーもポールも、邪魔だ。動きが読めないシュートに、障害物。
「厳しい試合だな・・・」
京介のつぶやきに、私は無言でうなずく。
そして、前半が終了した。
私は幸恵さんに呼び出された。
「楓ちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです、幸恵さん」
優しく笑ってくれる幸恵さんの瞳は、ちょっとさびしげだった。やっぱり、解決していないからだろう。
「その後、どうですか?」
「どうもこうも・・・何も無いの・・・」
悲しそうな幸恵さん。努力は、実るはず・・・だけど・・・。
「どうすればいいのかな・・・」
悲しそうな幸恵さんに、私は告げる。
「どうするも何も、正直言えばいいじゃないですか?」
でも、幸恵さんは首を横に振った。
「真帆路君がね・・・」
―――幸恵さんは、昔からこういう人だった。優しくて、人のことを思いやられるそんな人だ。
「そうですか・・・でも」
私は、幸恵さんをまっすぐ見詰めた。
「私は、言うべきだと思いますよ」
「楓・・・ちゃん・・・?」
幸恵さんは、動揺しているのが丸わかり。私は、わかっているのを隠す。
「やっぱりいうべきですよ。だって・・・真実を告げつことは、悪いことじゃないですから!」
すると幸恵さんは、優しく微笑んだ。
「そうかもね・・・そうね、ありがとう」
ベンチへ帰ると、皆が集まっていた。
「お兄―――鬼道監督?」
「楓か」
私が来たのを確認して、お兄さんは話し始めた。
「バンパーやポールには、タイムラグがある。それをうまく使うんだ」
「・・・なるほど、了解です」
私たちはうなずくと、皆とともにピッチへと駆けて行った。
後半戦が始まった。
天城先輩は、きっと幸恵さんから聞いたのだろう。真帆路さんを見る目が、優しげで・・・。
仕掛けが作動する。その一瞬をついて、京介が必殺技を発動。
その必殺技―――デスドロップは、見事にバンパーをすり抜けて、見事ゴールした。
「さぁ、此処からです!」
天馬のそんな声が、雷門の雰囲気をよくする。