まぁしかし、準々決勝の相手が、簡単に撃破できるわけもなく。
ラフプレーもしてくる。かなりの強敵な上、天城先輩にとっては集中できない試合。
「笑わないストライカー・・・ね」
私はただ、冷静に真帆路さんを見て、感じた。
「笑いたくても、笑えないストライカー・・・かもしれないわ」
浜野先輩は、いったんベンチへと戻り、マネージャーに手当てをしてもらっている。結構いたそうだ。
お兄さんが、フィールドを見つめて言う。
「笑わないストライカーが、感情を見せ始めたか」
「笑わないんじゃなくて、笑えないんです」
私はお兄さんに聞こえないような声で、つぶやくように言った。
試合が再開。
雷門のスローインは、呆気なく幻影側へと渡る。そして、あっという間に真帆路さんへ。全国クラスのストライカーなら、化身を発動できないわけがない。
「幻影のダラマンガラス!」
クールでミステリアスな女性化身。女性化身だからと言って、侮れないのがサッカーの化身。雪村だって、サイアは女性化身だった。
でも、プレイヤーが優秀ならば、そんなのは気にならない。
「戦国武神ムサシ!」
錦先輩が止めにかかる。しかし、ダンシングゴーストが炸裂。強力威力のこのシュート、一体どうしたものか。
錦先輩が破られて、目の前に天城先輩が立ちふさがる。
「雷門の反撃を終わらせるんだ!」
怖く冷徹な瞳の真帆路さんは、天城先輩にも容赦なかった。
狩屋も破られたが、これでボールの威力は弱まったのだろう。三国先輩はとめてくれた。そして、車田先輩が外に出す。
―――ここで、私は気づいた。
「浜野先輩っ!大丈夫ですか!?」
「ちゅーか、膝に力が入んなくて」
浜野先輩は、さっきの真帆路さんのラフプレーにより、怪我を負っていたのだ。そのことを知ったお兄さんは、青山先輩と輝君を投入。流れが、どう変わるか、否か。
青山先輩も、見事なボールさばき。でも、輝君はもっとすごい。
エクステンドゾーンで、雷門は同点になる。ここでの同点は大きい。
「さすがね!」
「ありがとう!」
輝君とハイタッチ。よく見れば、治りきっているが、まだ傷跡が見える。たくさん練習したのだろう。
「反撃、頑張ろッ!」
「うん!」
もう一回ハイタッチをして、各ポジションへと戻る。
しかし、相手だって黙っているわけもない。
GK交代だ。確かあいつは、化身使いだったはず。正GKじゃなかったなんて、雷門もずいぶんなめられたものだ。
そして、真帆路さんがまた攻め上がる。そして、天城先輩が止めようとする。しかし、天城先輩のディフェンスもむなしく、幻影学園の勝ち越し点。
しかも、真帆路さんに至っては、ハットトリック。
・・・でも、雷門だって負けるはずがない。あきらめの悪いのが、雷門のいいところでもあるんだから。
「錦先輩!」
私のボールは錦先輩にわたり、そして伝来宝刀発動。見事に決まり、再び同点。
―――これなら、このままだったら、いけるはず・・・!
―――その時だった。
信助が呼ばれ、そして何とGKが三国先輩から、信助へと。信助に、GKの才能があるのは知っている。彼は身軽だから、動きやすいだろう。でも、公式試合で急になんて・・・。
「未来へつなげるための交代だ!」
その言葉に、皆は説得されて、信助も一抹の不安を抱きつつ、ゴールへと向かった。
・・・そして、やっぱり凄い。緊張しているのはありありとわかるけど、必死にゴールを守る。雷門は点を入れられることもない。
信助のGKに、雷門は勢いづく。私の化身必殺技、クールハニーも決まり、雷門は逆転。
鬼気迫る真帆路さんのドリブル。その顔は恐ろしかったけど・・・。
「フィフスセクターのサッカーは、間違っているんだド!」
天城さんのその言葉で、一瞬ひるんだのがわかった。わかってるんですよね、真帆路さんは。幸恵さんの話じゃ、とてもいい人ですし。
天城先輩は、小学校のころを思い出してほしいと必死になる。そして、新必殺技の、アトランティスウォールで、マボロシショットを防ぐ。
―――そして、真帆路さんはただ笑った。
試合も終了して、雷門は見事準決勝へと駒を進めた。
「幸恵さんっ!」
試合が終わって、私は幸恵さんのところへ行く。
「楓ちゃん!真帆路くん、天城君と仲直りしてくれたの!」
そういう幸恵さんの顔は、とてもうれしそうで。―――そして、天城先輩と真帆路さんが、ちょっとだけ私と京介と似て見えたり。いや、京介と白竜か?
「よかったです」
私まで笑顔になれた。友達は、一生もの。仲間は一生もの。どんなに嫌いでも、どんなに苦手でも、一生ついて回るもの。
だからこそ、出会いを大切に、友情を大切にすることの大切さを学んだ気がする。
「また試合をするときは、笑顔のストライカーで」
「楓ちゃん・・・そうね、ありがとう!」
幸恵さんは、とても幸せそうな顔をして、そして私の前から去った。
「また3人、仲良くなれるといいですね・・・」
―――そう、私と京介と白竜みたいに・・・仲良く・・・。
玄関付近へ行くと、天馬が誰かと話していた。
電話中だったので、静かに離れるつもりだったのだけど、天馬のしゃべる単語の中に、“太陽”という言葉があって、立ち止ってしまった。
―――雨宮太陽。10年に一度の天才で、豪炎寺さんの考えも、少なからず知っている。
もともと身体が弱く、サッカーは禁じられていた。でも、太陽はサッカーが大好きだら、サッカーを続けた。
「太陽か・・・今日、ちょっとお見舞いに行こうかしら。ついでに、伝えたいこともあるし・・・」
―――10年に一度の天才、雨宮太陽は、実は孤児。私と似たような、似ていな酔うような境遇。
そして、太陽は、私の親友で、サッカー部マネージャーの、空野葵の―――双子の兄でもあったりする。
太陽だけは、妹の記憶がうっすらと残っていた。妹―――葵に至っては、全く覚えていないといっても、過言ではないらしいけど。
太陽は、そんな妹との再会を、ずっと待ち望んでいる。その姿は、とても健気で、私は支援することにした。そして、山吹財閥の力を使って、探して探して・・・ようやく見つけたのは、近くにいる葵だった。
最初は驚いた。まさか、2人が同じ遺伝子だなんて・・・。でも、本当のようで。
よくよく思えば、確かに2人とも健気で、何事にも一生懸命で、ひたむきなところは似ているといえるだろう。
双子は、当然ながら似るものだ。京介と瑠奈だって、容姿も似ているし、性格だって大人っぽいのに、どこか子供っぽいのは似ている。
「双子・・・兄弟・・・お兄ちゃん、か・・・」
私は、腕に付けたミサンガを強く握りしめた。
―――私にも、双子ではないものの、1歳上の兄がいた。
でも、母が亡くなってからあっていなかったのだけど・・・この雷門に来て、変わった。
私のお兄ちゃんは・・・河原翔。