mix color   作:御沢

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信助の決意

俺―――天馬は、昨日、ちょっと悩んだ。

廃校についての話だ。自分の責任だと、自分を責めた。

すると、キャプテンがうちへ来た。キャプテンは、意味深な言葉を言う。

“聖帝は、天馬を応援しているのじゃないか?”

―――確かに考え方を変えれば、そう取れなくもない。それともう1つ、気になったことがある。

「楓は、聖帝のこと、他にも知っているんだろうな・・・」

しかし、そんなことを考えていてもしょうがない。

俺は、遠くに見えた信助のところへ向かった。

 

 

信助は、少し暗い顔をしていた。

「葵から聞いたよ。もしかして、キーパーのこと?」

「うん・・・。僕に雷門のGK出来るのかな・・・」

「出来るよ!三国先輩も言ってたんだろ?」

「うん・・・」

やっぱり信助の顔は、落ち込んでいた。雷門には、GKは三国先輩しかいないし・・・。ううん、本当に三国先輩だけ?そういえば・・・

俺は、遠くにいた楓を呼ぶ。

「楓ーっ!聞きたいことがあるーっ!」

楓は、一緒にパス練習をしていた剣城に一言言って、俺たちのところへとやってきた。

 

 

「何?何か?」

「楓、瑠奈ってサッカー、出来たよね?」

「あ、うん。ポジションは、基本FWだけど―――」

「GKもできる、よね?」

楓は、俺の勢いに押されたように、後ろにのけぞり気味でうなずく。

「え、えぇ。瑠奈なら、今日は雑誌の撮影後に来るらしいけど・・・」

俺は思わず、ガッツポーズ。これで、信助も考えられるかもだ!

―――と、楓が制止する。なんでだろ?やっと、考えられたのに・・・。

「円堂さんを目標にすればいいじゃない」

「それは、大きすぎるよ・・・」

信助が、暗い顔でびっくりしたように楓の方を向く。そして、楓はしばらく考え込んで、やがて頭に豆電球を浮かべたように、明るい顔になる。

そして、ちょっと待っててね、といって音無先生のところへと、飛んで行った。

 

 

―――そして、練習はあっという間に終わった。

信助は、まだ残って練習するらしい。俺は心配だったけど、キャプテンや楓が、放っとくように言われたから、放っておくようにする。

それが、今の信助に対して、最大限の優しさだと思うから。

「楓、一緒に帰ろーっ!」

「いいわよ。でも、拓人さんとか霧野さんも一緒だけど」

楓は微笑んで、うなずいた。―――きっと楓も、昨日の俺や、信助のように、葛藤したことがあったのだろう。じゃないと、これほどうまい選手にはなりえないからね。

 

 

 

 

 

学校からの帰り道。

私―――楓は、昼間に春奈さんに頼んだ事が気になって、春奈さんにメールを送る。その返信は、すぐに帰ってきた。

「天馬、信助、GKがんばるみたいよ」

「本当!?」

なんで楓が知っているの?と言わんばかりに、怪訝そうな顔をする先輩2人だったけど、そんなことよりも、天馬は喜びの方が勝っているみたい。

友達のことを、何よりも考えられるなんて、やっぱり天馬らしい。

・・・と、今度は着信音が鳴り響く。

「はい」

『楓、私だ』

「あ、こんにちわ」

“聖帝”なんて単語、ここでは言えるはずがないから、ぐっとこらえる。

「どうしたんですか?」

『今から雨宮のところへ行く。一緒に来るか?』

「はい、もちろんです。すぐまいります」

電話を切って、3人に謝って、私は病院へと急ぐ。―――太陽には、葵のこと、いつ話そう・・・。

 

 

聖帝が入ると、太陽は顔を輝かせる。

私が入ると、笑顔になる。彼にとって、この狭い個室空間に来てくれるのは、限られた人なのだろう。だから、輝けるし、笑顔にもなれる。

「元気そうだな」

「はい、元気です!」

太陽のその声からも、元気だと言えることはわかる。

「検査の結果は良好だ。退院の許可が出た」

その言葉を、太陽はどれほど待ち望んだのだろう。目がみるみる輝きを増す。

しかし、聖帝の声のトーンはおちる一方。私も、さっき聞いたから知っている。なぜ、暗くなるのかが。

「じゃあ、次の試合は出られるんですね!」

「そのことで、担当医と話した。残念だが、次の試合は見送ろう」

太陽の人もは、みるみる沈む。サッカーが大好きなだけなのに・・・。

先生の話によると、治療に専念しろ、という話だそうだ。しかし、太陽はあきらめていなかった。

「いやだ。サッカーだけなんです。辛くても不安でも、グラウンドに立っていれば忘れられる。サッカーが、僕の命をつないでいるんだ!」

「太陽・・・気持ちはわかるけど・・・」

「わかんないよ!楓にはっ!」

私は、後悔していた。中途半端な同情はいらない、これはよく聞く言葉だ。それは、本当のことだ。

中途半端な同情ほど、人を傷つける行為はない。

「・・・試合に出られないなら、僕は死んだと同然です・・・」

くらい太陽の顔を見るのが辛くなって、私たちは部屋から出た。

 

 

「あ・・・虎丸さん・・・」

「楓ちゃん、久々だね」

病室の外には、虎丸さんがいた。優しい微笑みを返してくれたけど、瞳の奥は険しかった。

虎丸さんは、ちゃんと事情を理解している。そのため、太陽を試合に出させることに反対らしい。

私は・・・わからない。太陽に無理はしてほしくないけど、サッカーをしてほしいのも事実で・・・。

―――話し合った結果、医療班を設置することでまとまった。太陽は、試合に出させるつもりらしい。

聖帝―――豪炎寺さんは、太陽を見ていると、一兄を思い出すと言っていた。

一兄―――一之瀬一哉さんは、サッカーが大好きなのに、思うようにサッカーができなくて・・・。確かに、似ているところが多いように思う。

 

 

翌日、天馬とともに登校する。

天馬もあの後、結局先輩2人と別れ、小さい子たちがサッカーをやっている所へ行ってきたらしい。そこで、変わった人に会ったらしい。ピンク色の髪の、白いスーツの男性。

その容姿を聞いて、思わず身震いしそうになった。―――千宮路大悟だ。

しかし、今は伝えられる段階ではないので、聞き流す態度をとっていた。すると、後ろから声が聞こえた。

葵たちマネージャー4人と、狩屋だった。狩屋はなぜいたのかはともかくとする。そのあとすぐに、元気のいい声が聞こえた。

「おはよ、信助」

「おはよー!楓ちゃん!」

―――信助は、すっかり回復したようだった。そして、放課後に特訓した話を聞いた。私が信助のことを春奈さんに相談すると、春奈さんは立向居さんを呼んでくれたらしい。

しかし、信助は覚えていないようで、思わず苦笑してしまう。

 

 

放課後の練習、私と天馬が、信助のGK練習に付き合っていた。

ボールを何度も蹴っていると、後ろから強いボールが飛んできた。そこにいたのは・・・

 

 

 

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