アップをしている最中も、天馬は太陽が気になるみたい。
―――天馬は、太陽の病気、知ってるんだよね・・・。
太陽は、サッカーが大好き。太陽の命は、サッカーがつないでいるようなもの。だから、豪炎寺さんも許可を出した。
―――この試合は、太陽の強い思いもこもっている。
・・・天馬、動揺しないでくれるといいんだけど。
試合が始まった。
スターティングメンバーは、FWに京介と倉間先輩、MFに天馬、キャプテン、錦先輩、私、DFに霧野先輩、狩屋、信助、天城先輩、GKは三国先輩といった感じだ。
私も瑠奈も、FW一筋だった京介と違い、基本FWだが、GKも含め、どのポジションでもできる。
現に私は、クールハニーも含め、シュート技が皇帝ペンギンアルティメット、エンジェルバーストと多いものの、DFの技のシャイニングチェーンも使える。
完成はしていないものの、MF技のドリブル技やGK技も練習しているし、技がなくてもそこそこ出来る。
そして注目すべきは、やっぱり太陽。10年に一度の天才なだけでなく、1年生ながらキャプテンも任されている。
「太陽は、手ごわいわね」
驚く皆をよそに、私は事情を知っているからか、少なからずわくわくする。太陽の体が心配じゃない、と言えばウソだけど、太陽の意思を尊重するのも大事だと思う。
そこで、ようやく春奈さんが、太陽が10年に1人の天才だと気づく。
世界クラスの実力を、病院で身につけるんだから、本当にすごい。
―――そういえばこの試合は、千宮路親子も見ているはず。負けられない。
雷門キックオフで試合開始。
とたんに、地面が動き出す。このフィールドは、砂がランダムに動く仕組み。足を取られないよう、計画を練ることも重要になる。
この流砂のせいで、倉間先輩はフィールドから出てしまい、新雲ボール。
すぐに太陽が奪い、キャプテンから奪う。皆が唖然とする中、天馬が立ちふさがる。しかし、2人のたつところで流砂発生。
すると太陽は、誰もいないところへボールをけり、流砂を利用して再び自分ボールにする。さすが、天才。とっさの判断力に優れている。
そのボールは、まるで踊るようにみるみるDFをかわし、キーパーと1VS1。本当に早く、流れるような動きだった。
そして化身“太陽神アポロ”をだして、見事ゴール。あたりまえと言えばそうだけど、やっぱり凄い。雷門DFは、GKと一体とならなければね。
「まだ1点だ。取り戻すぞ!」
キャプテンの声に、皆で返事をする。まだ1点、されど1点・・・といったところか。
新雲は太陽が攻撃の、太陽中心のサッカー。
雷門は、連携で迎え撃つ皆で中心となるサッカー。実力なら、確かに太陽の方が上だけど、皆で考えるサッカーだ。だから・・・
「信助は10番をマークだ!」
「はい!」
―――2度目のシュートは、止めることができた。
いつだったか、お兄さんに聞いた話がある。
“チーム全体を見渡すゲームメーカーと、DFを指揮するGK―――サッカーには、2人の司令塔がいる。守備のかなめだからこそ、キーパーは守護神と呼ばれるんだ”
今の雷門は、キャプテンと三国先輩が、そのポジションにいる。ちゃんと、2人の司令塔がいるわけだ。
しかし、砂のフィールドはなかなか手ごわい。
砂に足を取られて、思うように動けない。そんなとき、信助がひらめいたようだ。天馬からボールを受け取り、宙を舞う。
「“スカイウォーク”!」
「確かにこれなら、足を取られないで済むっ!」
そのボールはキャプテンにわたり、キャプテンがフォルテシモを打つ。しかし・・・
「鉄壁のギガドーン!」
佐田が化身を出したため、残念ながら止められてしまう。準決勝の相手だ。強くないはずがない。
再び太陽にわたったボール。そして、再び出る太陽の化身。
化身シュートの“サンシャインフォース”が炸裂。狩屋のハンターズネット、天城先輩のアトランティスウォールも破られ、ゴールに突き刺さる。
2-0。再び点差が開く。しかし、その代償は大きい。
「太陽・・・?」
天馬の声がする。―――太陽の体は、ここまでじゃないのかと思う。化身を出して、大丈夫な体じゃない。
そんな時だった。
「キーパー、三国に代わって西園!」
お兄さんの声が、フィールドに響く。いよいよ、信助の初陣だ。皆がさまざまな気持ちを抱く中、試合は続行される。
信助がGKになったことで、私がDFに下がる。そして、私のいたMFには浜野先輩が入る。
「先輩、信助は任せてくださいね」
「頼もしいな、楓。頼んだぞ!」
「はいっ!」
DFは慣れないけれど、きっと何とかなる。信助だって、慣れないけれど、がんばるんだから。
試合が再開する。新雲は、砂の動きを使うようになった。
ボールは太陽へと渡り、天馬と太陽の一騎打ち。太陽は、息切れが激しい。顔なんて見えないけれど、思わず聖帝のいる部屋を見つめる。
一方天馬も、同じ気持ちなのだろう。全然楽しそうじゃない。太陽の体ばかり考えて、気持ちは考えられてない。
そりゃあ心配だけど、今は試合中。気持ちの問題だ。
太陽が天馬を抜いた。
―――瞬間、京介の顔がゆがむ。きっと京介も、気付いたんだろう。気付くに決まっている。あんないい加減なサッカー。
DFを抜いた太陽が、私の目の前に立ちふさがる。
すると、苦しそうな顔をして、味方にパスを出した。皆はフェイントだと思ったかもしれない。
しかし、これは違う。体力が、持たなくなっている。体が、限界になっている。
小声で、囁くように尋ねる。
「太陽・・・?」
太陽は、汗だくの顔で笑う。
「大丈夫」
私たちはあくまで、太陽の意思を尊重する。
「無理はしないで、真剣勝負ね」
「あぁ」
一方、信助の守るゴールの前に、相手はいた。
信助、止めてね・・・!
「化身で止める!」
・・・しかし、化身は出なかった。出たばっかりのころは、そういうものだ。
「信助!パンチングだ!」
三国先輩の言葉で、信助はパンチング。何とかシュートを防ぐけど、今度は化身を出してきた。
「“海帝ネプチューン”!」
信助は、再び化身を出そうとする。しかし、なかなか出ない。
「集中だ信助!あの特訓を思い出すんだ!」
ベンチで叫ぶ三国先輩の声が、信助に届く。
信助は集中モードに入り、そして・・・
「雷門のゴールを守るのは・・・僕だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
大声で叫ぶと、後ろから化身が出た。
そして、見事ボールをキャッチ。頼もしい、新守護神の登場だ。
天馬の顔も、他のみんなの顔も、明るくなる。信助は、とても喜んでいる。
「よし!反撃だ!」
波に乗る雷門。
一体この後の試合展開は、どうなるのやら―――。