mix color   作:御沢

9 / 97
笑顔

あの試合から、1週間がたった。

あの試合のことは、学校中で噂になった。楓と2人で、音無とかいう先生に怒られた。その時に、楓とその先生が知り合いだ、ということも察した。

 

 

1週間経つと、大分その波も収まってきた。・・・まぁ、俺が学校で浮いている存在であることには、変わりない。

一方の楓はというと、クラスにも学校にもなじみ、あの憎たらしい松風たちとも、すっかり仲良くなっているようだった。

 

 

今日も、C組の前を通ると、C組のサッカー部が集まって話している。

「楓ぇー、今日部活行く?」

「えぇ、行くわ。・・・3人とも、行くの?」

「あったりまえじゃん!!」

楓は、いつも取り巻きに囲まれていて、楽しそうだ。―――しかし、俺にはわかる。あの笑顔は、作り物の笑顔だ。心からの笑顔じゃない、何かに縛られているような、作った笑顔だ。おそらく楓を縛っているは、罪悪感だろう。

「・・・フン、くだらん」

俺はそう呟き、C組の前から離れる。離れ際、一瞬楓と目があった。楓は、気まずそうに視線をそらした。そのことを察した松風が、楓を心配している。楓は、何でもないと笑ってい見せていた。

―――なんでかは分からない。でも、その笑顔に俺はムカついた。

 

 

弁当の時間になった。俺は、1人で屋上へ行く。屋上には、ほとんど人がいない。否、全くいないに等しい。

しかし、今日は違った。屋上の端っこで、メロンパンを食べている黄髪の少女―――楓がいた。

「・・・楓」

「・・・剣城・・・」

お互いの名前を呼び合い、俺たちは黙って俯いた。先に口を開いたのは、意外にも俺だった。

「あの時は、言い過ぎた・・・すまない・・・」

あぁ、俺はいったい、何を言っているんだ・・・。急に、謝り始めて、楓も混乱しているようだった。

「つ、剣城・・・?」

「ッ!・・・悪ぃ、忘れろ」

俺はそういうと、屋上を去ろうと踵を返す。しかし、楓にズボンの裾をつかまれて、動けなくなった。

「剣城、屋上以外に行くところないでしょ?私は・・・行くあてがあるけれど・・・貴方にはないでしょ?」

なんで、こいつはこんなに鋭いんだ・・・。だが、言っていることはあっているから、俺は仕方がなく屋上にいることにした。

楓は、腰を上げて屋上から去ろうとしたが、なんでかわからないが、俺が今度はひきとめた。

「・・・別に、此処にいていい」

 

 

そして、結局2人で並んで、昼食を食べることになった。

しかし・・・無言のままだ。

「・・・」

「・・・」

キーンコーンカーンコーン・・・

そのまま、休憩が終わった。俺たちは、気まずいまま、屋上から降りた。

 

 

午後の授業は、暇だった。

国語と社会だった。

数日前に、古文の文章を読んだ。書き下し文じゃない、訓読文に近いものだ。今時、そんなものが売っているのだから、驚いた。

しかも、その内容がそのまま、授業で習うことになった。だから暇だ。

社会は社会で、今日の授業は小学校の頃の復習のようなものだった。―――やっぱり、暇だ。

 

 

放課後、俺は部活に行く気はさらさらない。

「・・・兄さんのところに、行くか」

俺は、携帯をいじりながら、校門から出た。道行く人が、俺のことを二度見したりする。正直言うと、少し恥ずかしかった。

行く途中、キャプテンの神童とか言う奴と会った。神童は、俺を見つけるなり、若干涙目になりながら、俺のことを睨みつけた。

しかし、俺はそのままスルー。すると神童は、もっと泣きそうな顔になる。なぜかわからないが、俺の良心が痛む―――ような気がした。

 

 

「兄さん、来たよ」

「あぁ、京介。今さっき、瑠奈からメールがあったよ」

「そうか、瑠奈から」

病院の兄さんの病室にいるときは、本来の俺でいられる。すごくリラックスできるし、なんだか気持がいい。

ちょっと前までは、瑠奈も一緒だったな・・・なんて考える。

「そういや、この前楓ちゃんが来てくれたけど・・・中学校も一緒だったんだね」

“楓”という単語に、俺は肩をビクッと震わせる。俺は、いつから“楓”という言葉に、そんなに反応するようになったのだろうか。

それほど俺の中で、あいつの存在は、ライバルだからかなんでなのかは分からないが―――大きい存在らしい。

「あぁ。楓は・・・サッカー部の練習だ」

「そうか・・・。京介、おまえはいいのか?」

「・・・あぁ、今日はいいんだ」

ウソだ。俺は、練習になんかでない。否、出れないというべきだろうか。でも、そのことは兄さんに入っていない。・・・というか、絶対に言うことはできない。

「京介・・・?」

「ッ!す、すまない・・・今日は疲れていて・・・もう、帰ってもいいか?」

「いいよ、ちゃんと休むんだよ?」

兄さんは笑顔でそう言ってくれた。その笑顔が、俺にとっては辛いものだった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。