「本気のサッカーは、俺たち雷門のサッカーだ!」
確かに本気のサッカーは、雷門のサッカーだ。
しかし、今の天馬がそれを名乗る資格はない。だって、本気を出していないから。
DFで止めにかかる。
「狩屋、楓、止めにかかるぞ!」
「わかってますって!」
「了解!」
しかし、太陽はそんなのものともしない。あっという間に抜き去り、ゴール前。
再び天馬と1VS1だ。
「天馬!」
「太陽っ!どうして君みたいなプレイヤーが、フィフスセクターに?」
天馬の不思議に思うポイントは、そこにもあったらしい。確かに怪訝に思うだろう。狩部監督も、そういう監督ではないし。
「そうか・・・君は知らないんだね。フィフスセクターの・・・否、聖帝の本当の意思を」
「えぇ?」
天馬の気が緩んだすきに、太陽が抜ける。心理戦まで使うとは、さすがだと思う。
「だけど、今はフィフスセクターも聖帝も関係ない。全力で戦い、そして勝つ!それだけだ!」
太陽が、完全に天馬を抜き切った。
そして、信助と1VS1。
太陽がシュートを打つ。信助の予想しやすいルートだ。しかし、ここは天才。一筋縄ではいかないだろう。
案の定、そのボールには強烈なスピンがかかっていた。いったん止まったボールは、もう一度けられてゴール。並大抵の技術ではない。
そして、天馬に何か話しかける。
天馬は、自問自答をし始める。
「これが、太陽のサッカー・・・」
そしてここで、ようやく気付いたようだ。
「そうか、そうだったんだね。俺、わかった気がする・・・」
さて、天馬。貴方の本気、見せてみなさい。
再びキャプテンにわたったボール。どうするかキャプテンが悩む中、天馬が突っ込む。
「キャプテン!俺にボールをください!」
「天馬!」
「俺が、太陽を飛び越えて見せます!」
天馬の瞳には、強い光が宿っていた。ここにきて、ようやくといった感じだ。
キャプテンの前には、相手が立ちふさがる。
「天馬、任せたぞ!」
そのボールは大きな弧を描き、天馬の足もとに収まった。
そして、得意のドリブルで次々相手を抜いていく。
しかし、何度目かわからないくらいの光景が待ち受ける。―――太陽との1VS1。
太陽はいきなり化身を出してくる。
―――天馬の化身は、魔神ペガサス。でも、ゴットエデンでの特訓も思いだしてほしい。
シュウの手助けもあって、天馬は高く飛べた。それこそ、きっと太陽も越えられるはず。
今こそ、“魔神ペガサスアーク”を使うときだろう。
「天まで届け!これが、魔神ペガサスアークだ!」
予想的中。天馬は、ペガサスアークも使いこなせるようになったようだ。天馬がアークを使えるようになった。雷門も、最高の雰囲気だ。
きっと、この試合、勝てる・・・!
そのまま天馬は太陽を超え、シュートを放つ。そして、見事ゴール。
しかし、新雲が黙っているとは、到底考えられない。
太陽の性格からしても、ペガサスアークと戦いたくて仕方がないはず。しかし、太陽の体はもう・・・。
私の頭に浮かんだのは、とある1つの案。―――“化身ドローイング”。
ゴットエデンで、白竜の行っていた行為の1つ。化身を半永久的に持続できる、恐ろしいものだ。
新雲学園のムードだって、決して悪いものではない。むしろいい方だ。
だったら、ドローイングもできてしまうかもしれない。
キックオフと同時に、キャプテンが飛び出す。
「行くぞ!」
『キャプテン!』
「戻ってッ!」
もし、化身ドローイングをするのであれば、かなりの威力となる。そのため、中学生の男子なんか、飛んで行ってしまう可能性もある。危険すぎる。
しかし、私の声は届かなかった。
ボールを奪い、太陽に迫っていくキャプテン。やばい、危険すぎる。
―――この配置を見て、天馬は太陽の体が限界だ、と考えたようだった。でも、それは違う。この配置を見て、私はすぐに化身ドローイングを行うとわかった。
案の定、すごいパワーが発生し、キャプテンは飛ばされた。頭を押さえていたけれど、また立ち上がれたようだった。
巨大な太陽神アポロ。
雷門、黙っているわけじゃないよね?
皆が動揺するなか、私の声が響いた。
「ゴットエデン出のこと、思い出すのよ!たくさん学んだはず!」
その言葉に、天馬が笑顔になる。
「太陽、さすがだよ。なんて高さまで飛ぶんだ!でも、俺たちだって負けていない!俺たちも、化身の力を1つにしましょう!」
その言葉に、キャプテンと京介もうなずく。
「向こうが並列つなぎなら、こっちはやはり直列つなぎだな」
「やるか!」
そして、3人が化身を出した瞬間だった。3人が、光に包まれた。
―――一方、太陽はサンシャインフォースを繰り出す。
そのボールが3人へと向かう。その瞬間だった。光が晴れた。
そして、見えたあの神々しい化身―――
『魔帝グリフォン!!』
3人の合体化身、魔帝グリフォン。
アポロとグリフォンの1vs1。どっちが勝つか否か。
「貫け太陽!」
新雲の声が響く。雷門だって、黙っていない。この化身は、3人だけの化身じゃない。雷門皆の希望の化身・・・。
「がんばれ、3人とも・・・ッ!」
声がかれるくらい、皆で声を出す。その成果か、雷門のパワーは大きくなっていく。
そして、とうとう蹴り返した。
佐田が、急いで化身を出すも、及ぶはずがなかった。はっと気づいて、電光掲示板を見る。―――雷門の逆転だ。
そのまま試合終了。雷門の勝利だった。
―――その瞬間、太陽が倒れこんだ。天馬が急いで駆け付ける。
「太陽ッ!」
「はははっ・・・全力を出し切った。もうこれ以上動けないや。・・・知らなかった。こんなに楽しい試合があるなんて」
太陽は笑っていた。その顔に、少しだけ安心。
「本当にありがとう、みんな!最高の試合だったよ、天馬」
その言葉に、天馬が笑顔になっている。
「君たちと戦えて、本当に良かった。もう、思い残すことはないよ」
「太陽・・・」
「思い残すことはないはずなのに・・・天馬、どうしよう。サッカーがやりたいよ・・・サッカーがやりたいんだ!」
その真剣なまなざしは、やっぱり輝いていた。それでいて、とても震えていた。
「太陽・・・出来るよ絶対!全力を尽くして、あれだけ戦えたんだ!きっと元気になって、もう一度フィールドに戻れるよ!全力を尽くせば、どんな困難だって飛び越えていける。それを教えてくれたのは、太陽じゃないか!」
「天馬・・・!」
「そしてまた、一緒にサッカーしよ?俺、太陽が戻ってくるのを、ずっと待ってるから!」
「・・・わかった、天馬。病気になんて負けない!練習を積んで、僕は必ず戻ってくるよ!」
2人のプレイヤーのその友情に、会場が沸く。私だって、感動しそうだ。
「約束だよ、太陽」
「あぁ!」
私は京介のもとを離れて、キャプテンと霧野先輩のところへ来ていた。
「良い試合でしたね」
「あぁ!」
「そうだな・・・」
「次は決勝戦か・・・」
「なんか、信じられませんよね」
「そうだな。がんばろう。取り戻すんだ、俺たちのサッカーを!」
霧野先輩と並び、ベンチへ戻ろうとした時だった。
バタン―――後ろから、鈍い音がした。はっと振り返るとそこには・・・
「神童・・・?」
「拓人さん・・・?」
―――フィールドに倒れ、意識を失っている拓人さんがいた。