ミニゲーム開始。
倉間先輩からボールを受け取り、まっすぐ進む。しかし、前から相手もやってくる。ここは、ドリブルで抜くしかないだろう。
相手を翻弄して、抜いたはいい。
しかし、天馬との連携がうまくいかない。私が指示を出す前に、天馬が指示を出してしまう場合もあって、そこら辺があやふやだ。
「霧野先輩!車田先輩に!」
「天馬っ!?」
―――難しい立ち位置にいる同士、パスは出しあえない。わかっていても、思うようにできないのだろう。
「天馬、大丈夫?」
「うん・・・俺、キャプテンやっていけるのかな・・・楓にも、迷惑かけっぱなしだし」
落ちこんでいる天馬。思うようにフォローができない。
セカンドチームの連携は、昨日同様さすが。
雰囲気も良く、次々とシュートを打っていく。三国先輩が、何とかしのいではいるものの、ファーストチームは圧されている。
天馬の落ちこみ具合を見て、円堂さんにバツサインを送る。円堂さんはうなずいて、立ち上がって叫ぶ。
「よぅし、今日の練習はここまでだ!」
結局、連携もうまくいかず、大変な感じになってしまった。
その時、円堂さんの携帯が鳴った。会話の内容からして、久遠さんのようだった。
「楓ー!行くぞ!」
円堂さんに呼ばれ、私はユニフォームのまま、円堂さんの後をついて行った。
―――まぁ、事情は大方知っているのだけど。
レジスタンス本部にいたのは・・・
「やっぱり、2人だったのね」
「気付いていたんだね」
「さすがだよ。俺たちが一目置くだけある」
「そりゃどうもです。ヒロにぃ、リュウジにぃ」
そこにいたのは、ヒロにぃとリュウジにぃこと、吉良ヒロトさんと緑川リュウジさんだった。
少し前のパーティーの帰り、お酒に酔ったヒロにぃを抱えて帰ったリュウジにぃが、レジスタンスに協力している、みたいなそんなことを言っていたのを覚えている。
だから、予想はついていた。
ヒロにぃは、お日さま園のみんなにサポートされて、かなりのやり手になっている。・・・お酒に弱いのだが。私は、何度も被害にあった。
久遠さんの話によれば、2人はフィフスセクターの財務状況を洗っているらしい。これで、千宮路もばれるだろう。奴は、ところどころ法を犯している。
ばれるのは、時間の問題。2人には、慎重に進めてもらいたい。
そのあと、お兄さんが家まで送ってくれると言ったのを断って、豪炎寺さんと京介のところへ行った。
「お疲れ様です」
「楓か・・・一緒にやるか?」
「いいえ、私じゃなくて、もっとふさわしい人がいますから」
豪炎寺さんに笑いかけて、倒れこんでいる京介のもとへ向かう。
「大丈夫?」
「か、えで・・・。あぁ、大丈夫だ」
「・・・はい、ドリンクよ。元気を出して。がんばりなさい」
「あぁ」
少し心配だったけど、きっと京介ならできるだろう。
練習が終わって、京介とともに天馬の家まで向かう。
天馬は、何かうれしそうに上を見上げていた。そのせいで、家を通り過ぎるという天然をしていたが、そっちの方が都合がいい。
「松風」
「剣城!それに、楓!どうしたの!?」
「天馬、貴方にはある技を京介とともに特訓してもらうわ。―――ファイアトルネードDDよ。ファイアトルネードをもとに、さらに威力を高めた合体技よ」
「ファイアトルネード!?それって、豪炎寺さんの必殺技・・・!?」
驚く天馬。あたりまえだろう。それでも、これは天馬にしかできない。
「なんで剣城や楓が・・・?」
その質問は無視する。そのうち、わかることだから。
「この必殺技が、勝利のカギを握るわ。皆には秘密で、特訓して。私はサポートするから」
「うん、わかった!」
そのあと、河川敷へ移動して、天馬と京介の特訓が始まった。
しかし、豪炎寺さんの技は難易度が高く、なおかつDDは2人の息が合わなければいけない技―――つまり、2人が完璧にシンクロしないといけない技だ。
何度やってもうまくいかず、失敗してばかり。ボロボロになる2人、それでも決勝までに完成させようと、やめようとしない。
河川敷の上に、黒塗りのリムジンが止まって、除いた顔を見て血の気が引く。―――千宮路大悟だ。
すぐに通り過ぎて行ったものの、動悸が止まらない。彼がいる。つまり、ドラゴンリンクの登場も近い、というわけだ。
私たちが、がんばらないと・・・。
翌日、再びミニゲーム。
天馬は昨日、何かあったのだろう。やる気に満ちていて、私とチームとの連携も、うまくいっている。
練習が終わって、天馬と京介が隅で話している。円堂さんが不思議そうな顔をしたが、私はそれに気づかないふりをして、2人のところへ向かった。
その翌日も、練習。天馬もチームをつかんだようで、大分まとまりが出てきた。私も、チームの特色をつかんだため、ゲームメイクをしやすくなった。
「ディフェンス、行ったわ!」
ディフェンスが止める。DFも安心できる。
「ナイスクリアっ!」
グットサインを出して、狩屋と霧野先輩に見せる。すると、狩屋は恥ずかしそうに顔をそむけた。4そんな狩屋を、私と霧野先輩は、苦笑気味で見る。
―――この2人も、いい先輩と後輩になったと思う。
練習が終わって、円堂さんがコメントを述べる。とうとう明日が、決勝戦だ。ここで、ドラゴンリンクの正体もわかるだろう。
明日が決勝、ということは、ファイアトルネードDDも、今日がラストチャンスというわけだ。
「行こう、剣城、楓!完成させよう!」
私たちは微笑んで、そのまま河川敷へと向かった。
今日もなかなか成功しないけど、きっと今日こそはできると思う。―――入学当時、あんなに敵対していた2人が、今となっては、合体必殺技を作れるほどになった。
自然を笑みがこぼれる。
「ふふっ」
そんな私を見て、怪訝な顔をした2人。かなりボロボロで、疲れているようだった。
急いでタオルとドリンクを渡しにいく。
「大丈夫?」
「・・・あぁ。なんで・・・笑ってたんだ?」
息も絶え絶え、京介が尋ねる。私は、とりあえず2人をベンチに座らせて、話をする。
「2人は、ちょっと前まで、敵対していたじゃない?それが、こんな短期間で仲良くなれて、合体必殺技を作れるなんて・・・と思ったの」
すると天馬が、嬉しそうな顔になる。
「そうだね!・・・でも、なんで俺だったんだ?楓でもよかったんじゃないのか?」
今度は京介が、優しげに瞳を開き、夜空を見上げる。
「お前が、俺にサッカーへの道を示してくれた」
「京介・・・」
京介が、ここまで本音を言うなんて、珍しい。天馬のことを、これほど信頼しているのだと思う。
天馬も嬉しそうな顔になって、空を見上げる。私も、空を見上げる。
その時だった。京介の電話が鳴った。
「はい?あぁ、瑠奈か」
相手は、瑠奈だったよう。
「あぁ・・・あぁ・・・はぁ!?今から病院に!?」
京介があわてて鞄を持つ。私たちも続くようにして、稲妻総合病院へと向かう。
―――優一さんは、リハビリ室にいた。先生と瑠奈も一緒だった。
「瑠奈っ!」
「京介!お兄ちゃんが・・・!」
仕事終わりだったようで、髪の毛もきれいに整えられている。しかし、額には汗が浮かんでいた。
「兄さん・・・!」
京介と瑠奈が、優一さんのもとへ向かう。
天馬がついていこうとしたが、私が服をつかんで制止した。私が首を振ると、天馬もその場に立ち止まった。
「何かあったの?マネージャーさんが、病院から連絡もらったって・・・!」
「俺は、瑠奈から・・・」
「京介、瑠奈、俺、手術を受けられることになったんだ」
『え・・・?』
2人の瞳が見開かれる。私と天馬も、驚いた。
「だれかは分からないが、支援金を集めてくれた人がいてね。優一君の手術に使ってほしいそうだ」
「じゃあ、兄さんの足は治るんですね!?」
「あぁ。手術後、リハビリを続ければね」
先生が、笑顔で2人に告げる。その瞬間、瑠奈が京介に抱きついた。
「やったよ、京ちゃん・・・っ!」
「瑠奈・・・っ!」
隣で天馬が、驚いたように
「きょ、京ちゃん・・・!?」
なんて言ってる。
「瑠奈はね、本当に安心したときとか、京介のことを“京ちゃん”って呼ぶのよ」
「そうなんだー、へぇ・・・」
まぁ、今は感心している場合じゃない。
瑠奈も京介も瞳に涙を浮かべて、その場にしゃがみこんだ。
優一さんは、ずっと自分を責め続けた京介に、とても優しい言葉をかけてあげていた。
私と天馬は、こぶしを合わせてウィンクをしあった。
―――京介、瑠奈、本当によかったね・・・。