そのあと、拓人さんの部屋へ行く。
「京介のお兄さん、また走れるようになるみたいです」
「早く2人が、サッカーできる日が来るといいなぁ・・・!」
すると拓人さんも、幸せそうな顔をする。その笑みの中には、若干の“寂しさ”があった。
「剣城も、やっと心の重荷が取れたんだな」
天馬は笑顔だ。人のことでも、こんなに喜べる天馬だから、皆が革命についてこられたんだと思う。
「悔しいな・・・」
拓人さんは、唐突に笑顔のまま告げる。その顔を見ていると、少なからず胸が締め付けられた。
「いいえ、キャプテンも一緒です!」
天馬が、はっきりと告げた。その言葉に、私は笑顔に、拓人さんは驚く。
「ずっと一緒に戦ってきたんです。その思いは、ずっと胸の中にあります!」
「ッ!あぁ」
拓人さんも、嬉しそうな顔になる。
そして決勝戦当日。
アマノミカドスタジアムにて、ホーリーロード決勝戦が行われる。はっきり言えば、緊張している。
ここで勝てなければ、今までのことはすべて無駄になってしまう。無駄になんか、させない。
革命の成功、レジスタンスの聖帝選挙の成功・・・すべてがかかっているこの試合、私は拓人さんの代わりに、負けず劣らずのゲームメイクをして見せなければ。
試合前、葵が天馬にキャプテンマークを手渡した。この証で、雷門をひっぱっていってほしい。皆の思いのつまった、その証で。
―――聖堂山は、良いチームだ。あの豪炎寺さんのチームなのだから、あたりまえといえばそうだが。
ちゃんと相手の実力を認め、対等に勝負しようとする。アマノミカドスタジアムは、今までのスタジアムと違い、仕掛けも何もない。つまり、実力勝負というわけだ。
「黒裂さん・・・」
「やぁ、楓。今日は勝負だ」
「えぇ、望むところです」
天馬とあいさつし終わった黒裂さんに、挨拶をする。
―――そして、試合が始まる。・・・最終決戦だ。
試合前、円堂さんは言った。
「思いっきり楽しんで来い!お前たちのサッカーを!」
その言葉を聞いて、お兄さんや春奈さん、私は思わず笑みをこぼす。その言葉は、かつてイナズマジャパンのFFIでの決勝戦で、久遠さんが言った言葉だから。
「これは俺たちが昔、久遠監督から言われた言葉だ。その手で日本一をつかみ取るんだ!ドカンと一発、決めてやれ!お前たちの魂のシュートをなっ!」
その眩しい笑顔で言われた言葉に、私たちも自然と笑顔になった。大きな声で返事をして、天馬の気合の言葉が始まった。
天馬が大声を出す。ガッツポーズをして、叫ぶ。
皆もポーズを構える。
「絶対に優勝しましょうーっ!」
声が裏返って、全く気合が入らなかった。皆、ギャフンとなる。でも、それで肩の力が抜けたのは本当だ。
そしてTAKE2。
「絶対優勝するぞーっ!」
『オォーッ!!!』
革命の戦士たちの声が、響き渡った。
今日はMF。FWのま後ろのMFのため、ほとんどFWといった感じだ。
FWは京介と倉間先輩。MFは私、天馬、錦先輩、浜野先輩。DFは霧野先輩、狩屋、天城先輩、車田先輩。GKは三国先輩だ。
聖堂山は、前に4人を配置してきた。その後ろには、スペースがある。天馬もそれに気づいたようだ。まずはそこから攻めるべきか。否、罠の可能性の方が大きい。
でも、攻めなければ始まらない。
―――運命のキックオフ。初めに京介が上がる。そして、天馬がパスを出そうとするものの、拒まれる。やっぱり、罠だったか。
「か、楓!」
天馬からのパスを受け取るが、前には3人が立ちふさがる。どこにパスしても、駄目だ。
「楓!浜野先輩に!」
「え・・・わ、わかったわ!」
正直言えば、浜野先輩に渡したところで、状況は変わらないだろう。でも、動かなければ。
パスを出すも、再び阻まれる。そして、ボールが渡ってしまった。
黒裂さんにわたり、あっという間にディフェンスライン。霧野先輩が止めにかかるも、器用な動きで別の相手にパス。
さすがは聖堂山。しかし、雷門だって負けていない。天城先輩が奪い返したボールが、再び天馬に戻る。
「こっちだ!」
倉間先輩にパスをしようとするも、失敗。仕方がないから、私に戻してもらう。
「天馬ーっ!」
天馬と視線を合わせて、うなずきあう。
私は高くボールをあげ、その下に天馬が回りこむ。・・・しかし、聖堂山は拒んでくる。再び3人でブロック。なんてチームだ。―――パスができなければ、シュートができない。これは、豪炎寺さんだから考えられたフォーメーションだろう。
身軽で早い動き、あっという間にディフェンスライン。雷門にとっては、少し厳しい戦いになるかもしれない。
狩屋も、必死に防ぐ。だが、足はもうちょっとのところで、届かない。
しかし、ここは守護神・三国先輩が止める。
三国先輩のパスは、天馬に。しかし、その前に黒裂さんに奪われる。さすがだ。
「バリスタショット!」
そのシュートは、いとも簡単に雷門ゴールに突き刺さる。先制点は、相手だった。しかし、その瞬間、妙案が思い付いた。
「みなさん、ちょっといいですか?」
―――再びキックオフ。それと同時に、倉間先輩にボールが渡り、サイドワインダー発動。しかし、この距離でシュートするはずがない。それが狙い。
予想通り、黒裂さんはかわせた。しかし、GKに止められてしまう。まぁ、その可能性も考えてはいた。否、この可能性しか考えていなかった。
ここからが、雷門の反撃。
「天馬、錦先輩!」
「わかった!錦先輩!」
錦先輩がボールカット、そして天馬へとパスをつなげる。天馬得意のドリブルで、黒裂さんを抜く。そよかぜステップ発動だ。そしてパスは、私と京介に。
「京介、準備オッケー?」
「あぁ!」
2人で背中合わせに立つと、羽が生える。私はエンジェル、京介はデビルだ。2つの羽が融合して、それぞれ1本ずつになる。そして、ボールが光と闇をまとった瞬間、私たちは飛び上がる。そして、息を合わせて叫ぶ。
『ゴッドバースト!』
強力な威力のシュートは、これまた簡単に聖堂山ゴールに突き刺さる。
京介と2人、ハイタッチをかわす。
「やったね」
「あぁ!」
「2人とも、すごいよ!」
後ろから天馬がやってきて、肩をたたく。―――天馬も、ずいぶんキャプテンらしくなってきたと思う。
「間髪いれずに攻撃、か・・・」
「さすがは、天才少女だ」
「“フィールドの女神”だな」
「剣城も、デビルバーストを完成させていたしな」
「さすがエースだ」
皆がそれぞれを褒めあう。
雷門の雰囲気は、最高潮。このままいけば―――ドラゴンリンクが出てこなければ、いけるかもしれない。
―――そんなこと、ないのだろうけれど。