「天馬!見てみろ」
そう言われて、改めてボロボロになった皆を見るのは、やっぱり辛い。自分のせいで、皆はこんなことに・・・。
「これが、お前のやりたかったサッカーか?」
「俺の、やりたかった・・・」
・・・違う。俺のやりたかったサッカーは、皆が笑顔になれて、試合中も自由で楽しそうで、一生懸命になれる、そんなサッカーだ。
「俺がしたいのは・・・!」
そして、円堂監督の方を向く。
「わかったな」
「はい!」
監督に返事をして、皆の方を向く。
そして、深々と頭を下げる。
「すいません!俺、間違っていました!本当のサッカーを取り戻すには、俺たちが本当のサッカーをしなくちゃいけなかったんです!いつも通り・・・。だから!」
その時だった。
「いつも通り、ねぇ・・・」
倉間先輩が言う。俺も皆も、先輩の方を向く。
「やろうぜ、キャプテン!」
先輩は、笑顔でそう言ってくれた。俺も、自然と笑顔になる。そのあとに続くように、楓が言った。
「天馬、さっきも言ったけど、私は勝ちたい!だから、本気のサッカーやろうよ、キャプテン!皆さんもでしょ?」
その問いかけに、霧野先輩が答える。
「全員答えは決まっている」
その言葉が、とてもうれしい。俺を認めてくれたみんなが、とてもうれしい。
「俺たちの革命は、そういう気持ちから始まったんだからな」
「気持ち・・・」
そうか、そういうことか。
―――キャプテン、そういうことですね。俺、わかりました。
その思いとともに、キャプテンの方を向くと、キャプテンは笑ってくれた。俺は、笑顔でうなずけた。
俺は、気持ちで皆を引っ張るキャプテンになるんだ・・・!
再びキックオフ。
俺たちの本当の戦いは、ここからだ・・・!
点差は2点・・・。だけど、俺たちは本当のサッカーで、絶対に、絶対に・・・
「勝つんだっ!」
確かに雷門は、ドラゴンリンクにおされ気味だ。それでも、あきらめなければ何とかなるんだ。何とかしてもらうんじゃない。何とかするんだ!
雷門のみんなは、“天馬”についてそれぞれ考えた。
僕―――信助は、入学式のとき、何度も弾き飛ばされて、それでも立ち上がる天馬を見て、一緒にサッカーするって決めたんだ!
ちゅーか、一生懸命になって、どうするんだ?って感じだったけど、気付けば俺―――浜野も熱くなってたんだよね。
行かなきゃいいのに、立ち向かっていく天馬君を見て、僕―――速水の体も動いちゃうんですよね。
やっぱいいな、本当のサッカー。俺―――車田の体が、喜んでやがる。
お前のまっすぐな思いが、俺―――霧野の親友の神童を、サッカーに向き直らせてくれたんだ!
お前と一緒にると、俺―――天城にあきらめない力があふれてくるド!
天馬君なら、俺―――狩屋、信じてもいいかもって、思うんだよな。
DFは、身を呈して協力して、ゴールを守る。
僕―――輝まで皆でつないだこのボール―――
わし―――錦は無駄にはしないぜよ!
輝のシュートは、化身を突破した。
しかし、威力としては不十分だ。それはわかりきっていたことだ。
―――そこに回り込んできたのは、楓だ。これは、彼女へのパスだった。
天馬のこと、最初は面倒くさいと思ってたけど、いつの間にか私―――楓、放っておけなくなってた。
「天馬っ!京介っ!決めろぉ!!」
楓の叫び声とともに、ボールは2人のもとへつながる。
俺―――剣城がここにいられるのは、松風、お前がいたからだ・・・いや、お前だからだ!
「天馬ぁッ!」
剣城の叫び声とともに、2人の動きは見事にシンクロして、華やかで鮮やかなシュートとなって、ゴールに突き刺さる。
『ファイアトルネードDD!!』
2人のこの集大成のシュートに、千宮路はおされる。このシュートには、雷門・・・否、革命にかかわった皆の思いが、つまっているのだ。
その思い事、シュートは千宮路を押し倒して、ゴールへと突き刺さった。
―――点差は、3-4となった。
私―――楓は、京介と天馬に抱きつく。
「やったぁっ!」
2人は、驚いて私を受け止める。2人の努力の成果が、実を結んだのだった。最高難度のこの技を、この土壇場で成功させるなんて、大したものだ。
その瞬間、緊張がほぐれたのだろうか。速水先輩と天城先輩が倒れこんだ。
私は苦笑気味に、ベンチに向かって手を振る。すると同じような苦笑が、ベンチからも帰ってきた。
「速水先輩、天城先輩、交代です」
私がそう呼び掛けると、2人はたちあがってベンチへと向かった。代わりに入ってきたのが、青山先輩と一乃先輩だ。
皆がポジションに入ってからの試合は、雷門ペースだった。雷門は徐々に力を見せ始めていた。
パスが錦先輩につながり、伝来宝刀が決まる。これで同点。
そして最後は―――
「輝君っ!拓人さんのポジションに入って!」
「え!?」
「霧野先輩、行きますよ?」
「あぁ!」
かつて見たことのある、軽やかな指笛と、黄色のペンギン―――
「皇帝ペンギン・・・」
『アルティメット!!』
強烈なシュートが、ゴール・・・ではなく、京介に向かって飛んでいく。
「京介、頼んだわ!」
「あぁ!任せておけ!」
そしてさらに、京介がデスドロップを放つ。勢いがさらに加わる。
そしてさらに、そのボールを天馬がマッハウィンドで蹴る。3つの必殺技のパワーの加わったこのボール、止められるはずがない。シュートチェインからのシュートチェインだ。
案の定、大和は止められず、雷門はとうとう逆転した。
―――ここで試合終了。雷門は、試合に勝ったのだ。―――革命は、大成功したのだ。
天馬は、拓人さんのところへ走る。
「キャプテン!俺、雷門に入ってよかったです!キャプテンと、円堂監督と、皆と出会って!サッカー出来てよかったです!」
「天馬・・・」
2人の瞳から、きれいな涙が流れた。拓人さんが、最初の方に流したあの涙ではない。“悔しい”のではなく、“嬉しい”涙だ。
「キャプテーン!また一緒に、サッカーやろうぜー!」
こぶしをつきだす天馬に、拓人さんもこぶしを突き出していた。
トロフィーをもらって、天高く突き上げる。
「よかったわね、天馬」
「あぁ、楓のおかげだよ!」
「そんなこと・・・でも、とってもいい試合だった!」
「うん!サッカーも喜んでる!」
その言葉に、倉間先輩が口をはさむ。
「まーたそれか」
「だって、絶対喜んでますって」
「はいはいわかったー」
「喜んでますっ!ねっ、剣城?」
すると京介は、顔をそむける。
「おっ、俺に聞くな」
・・・ツンデレだと思う。そんな本来の京介を出せるようになれたのも、天馬のおかげだ。
そして、私たちは天馬を胴上げした。―――本当に楽しい試合だった。
聖帝選挙の結果、響木さんが聖帝となって、フィフスセクターは解散された。
ベンチの方では、円堂さんと豪炎寺さんが話していた。ようやく2人も、和解しあえる日が来たんだと思うと、嬉しくなった。
「サッカーは、平等なものじゃない、か・・・。さすが、響木さん」
「そうだな」
横で京介と話していると、天馬が言う。
「俺、少しだけわかった気がする。化身って、必殺技って何か、って。化身も必殺技も、サッカーが好きだ!って気持ちが、ギュって固まったものだと思うんだ!俺たちが勝てたのは、その気持ちが勝っていたからじゃないかなぁ?」
その言葉に、私たちは微笑んで、そしてうなずいた。
「かもな」
「きっとそうね」
天馬は空を見上げて、つぶやくように、しかしはっきり言った。
「サッカー、見ててくれたかな、俺たちのこと」
私の髪を、あの日―――天馬のやってきた入学式の日と同じ風が、優しく揺らした。
これで、イナゴは終了です(>_<)
また新たに、イナクロを作ります(^^♪
ありがとうございました<m(__)m>