フラッシュさんとの恋愛日記   作:ココアポタージュ

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真面目な少女との出会い①

第1章 春風と統計学

 

春。

 

桜が咲き始めた四月のある日の午後。昼休みを少し過ぎた頃だった。

 

学園の中庭には新入生や在校生が入り混じり、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。

 

ベンチで昼寝をしている者、友人同士で談笑する者、雑誌を読んでいる者。

 

そんな中、あなたは中庭の端にあるベンチへ腰掛けていた。

 

特に理由はなく、ただ授業と授業の間の空き時間を潰していただけだった。

 

本を読んでいたわけでもなく、スマホを見ていたわけでもない。

 

ただぼんやりと人の流れを眺めていた。

 

すると視界の端に、一人のウマ娘が映る。

 

黒髪に整った横顔で綺麗な青い瞳の持ち主の少女だった。

 

机代わりに膝へノートを広げ、何やら熱心に書き込んでいる。

 

周囲が賑やかなのに、その空間だけ静かに見えた。

 

あなたは少し気になった。

 

なぜなら彼女は周囲を一切見ていなかったからだ。

 

まるで学園全体が存在していないかのように。

 

黙々とひたすら紙と向き合っている。

 

あなた

「勉強?」

 

声を掛ける。

 

反応はなかった。

 

聞こえていないのかと思ったが、違った。

 

数秒遅れてゆっくり顔が上がる。

 

エイシンフラッシュ

「……私ですか?」

 

あなた

「他にいないだろ」

 

彼女は少しだけ首を傾げた。

 

エイシンフラッシュ

「そうですね」

 

あなた

「何やってるの?」

 

彼女は手元の資料を見る。

 

エイシンフラッシュ

「データの整理です」

 

あなた

「今?」

 

エイシンフラッシュ

「今です」

 

あなた

「せっかくの昼休みだぞ」

 

エイシンフラッシュ

「データは昼休みを待ってくれませんので」

 

あなた

「なるほど分からん」

 

ほんの少しだけ。

 

彼女の口元が笑ったように動いた気がした。

 

だが次の瞬間には真顔へ戻っていた。

 

エイシンフラッシュ

「そういうあなたは何をしていたのですか?」

 

あなた

「何も」

 

エイシンフラッシュ

「何も?」

 

あなた

「ぼーっとしてる」

 

エイシンフラッシュ

「それは有意義なのですか?」

 

エイシンフラッシュは不思議そうに首を傾げている

 

あなた

「たぶん」

 

彼女は本気で理解できないという顔をした。

 

エイシンフラッシュ

「目的は?」

 

あなた

「ない」

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

あなた

「どうしてそんな顔をする?」

 

エイシンフラッシュ

「少し不思議です」

 

あなた

「君は真面目だなぁ」

 

エイシンフラッシュ

「そうでしょうか」

 

あなた

「そうだよ」

 

彼女は考える。そして数秒後自信を持って答える。

 

エイシンフラッシュ

「当然のことをしているだけです」

 

あなた

「それを真面目って言うんだよ」

 

風が吹き、桜の花びらが舞う。

 

その瞬間、彼女の資料が一枚浮き上がった。

 

エイシンフラッシュ

「!」

 

紙が宙を舞う。

 

あなたは反射的に立ち上がり、手を伸ばす。

 

あなた

「危なっ」

 

ギリギリで紙をキャッチする

 

もう少しで池に落ちるところだった。

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

あなた

「はい」

 

資料を差し出す。

 

エイシンフラッシュ

「ありがとうございます」

 

あなた

「どういたしまして」

 

受け取った彼女は紙を揃える。

 

その仕草が妙に丁寧だった。

 

角を揃えて、順番を確認し、慎重に閉じる。

 

あなた

「性格出るなぁ」

 

エイシンフラッシュ

「?」

 

あなた

「絶対几帳面だろ」

 

彼女は少し考えた。

 

エイシンフラッシュ

「否定はしません」

 

あなた

「やっぱり」

 

再び沈黙。

 

普通ならここで会話は終わるが、今回はなぜか席を立つ気になれなかった。

 

あなた

「ねぇ、名前を聞いていい?」

 

エイシンフラッシュ

「エイシンフラッシュです」

 

あなた

「ああ」

 

成績優秀。努力家。理論派。

 

そんな評判を聞いたことがあった。

 

あなた

「なるほど」

 

エイシンフラッシュ

「?」

 

あなた

「噂通りだ」

 

エイシンフラッシュ

「どのような噂でしょう」

 

あなた

「真面目」

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

あなた

「怒った?」

 

エイシンフラッシュ

「いえ」

 

そう言って彼女は僅かに微笑んだ。

 

エイシンフラッシュ

「初対面でそう言われたのは初めてです」

 

あなた

「マジで?」

 

エイシンフラッシュ

「もっと別の評価が多いので」

 

あなた

「例えば?」

 

エイシンフラッシュ

「堅い、怖い、近寄りがたい」

 

あなた

「はは」

 

エイシンフラッシュ

「笑い事でしょうか」

 

あなた

「いや」

 

あなたは少し笑う。

 

あなた

「たぶんみんな損してるな」

 

エイシンフラッシュ

「?」

 

あなた

「話してみると普通なのに」

 

その瞬間、彼女の瞳が少し揺れた。

 

風が吹き、桜が舞う。

 

午後の光が差し込む中庭の静かな時間。

 

この何気ない会話がこれから先、結婚へと繋がる、長い物語の始まりだったことをこの時はまだ2人とも知らなかった。

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