第10章 恋の自覚
その日の夜。あなたは自室のベットの上で天井を見上げていた。
あなた
「……」
眠れない。理由は分かっている。
今日のことだ。
駅前での待ち合わせ。
楽しそうに笑うフラッシュの少し照れた顔。
そして。
『最近思うんだけど、フラッシュといる時が一番落ち着く』
自分で言った言葉。
あなた
「……」
昔なら何とも思わなかったが、最近は違う。
昼休みになると会いたくなる。
面白いことがあれば話したくなる。
休日に出掛ける約束があると楽しみになる。
そして、彼女が他の誰かと話している姿を見ると、少しだけ落ち着かない。
あなた
「……あー」
布団へ顔を埋める。
あなた
「そういうことか」
ようやく答えが出た。
(自分はエイシンフラッシュのことがどうしようもなく好きなんだ)
同じ頃。
エイシンフラッシュの部屋。
彼女も眠れなかった。
机の上には開かれたノートがあるが、何も書かれていない。
エイシンフラッシュ
「……」
いつものように分析し、整理して、結論を出す。
だが、今回だけはどれだけ考えても感情が先に動く。
あなたが笑うと、嬉しい。
あなたの姿を見ると、安心する。
あなたがいないと、寂しい。
あなたに褒められると、胸が高鳴る。
これは、完全に恋だった。
エイシンフラッシュ
「……」
顔を覆う。認めるしかない。
(私は、あなたのことがどうしようもなく好きなんだ)
翌日。
昼休みのいつもの中庭。
今日は二人とも妙に静かだった。
あなた
「……」
エイシンフラッシュ
「……」
沈黙。
あなた
「今日静かだな」
エイシンフラッシュ
「そうですね」
あなた
「珍しい」
エイシンフラッシュ
「ええ」
また沈黙。
そして二人は頭の中で全く同じことを考えていた。
『どうやって告白しよう』
それから数週間。
距離はさらに縮まった。
一緒に過ごす時間が増えたのだから不自然ではなかった。
今の2人は誰が見ても友達以上に見えた。
ただ、当人達だけが最後の一歩を踏み出せていない。
ある日の夕方の中庭。
あなた
「なあ、一つ聞いていいか」
エイシンフラッシュ
「どうぞ」
あなた
「もしさ」
あなたは少しだけ緊張していた。
あなたの様子にいつもと違うとエイシンフラッシュも気付く。
あなた
「好きな人ができたらどうする?」
⸻
あなたが意を決して質問したその瞬間、彼女の呼吸が止まる。
エイシンフラッシュ
「……」
あなた
「フラッシュ?」
エイシンフラッシュ
「どうもしません」
あなた
「えっ」
彼女の言葉にあなたは呆気に取られる
エイシンフラッシュ
「いえ」
彼女は、少し考えて正直に答えた。
エイシンフラッシュ
「後悔しないように相手に気持ちを伝えると思います」
あなた
「そうか」
エイシンフラッシュ
「はい」
あなた
「もし断られたら?」
エイシンフラッシュ
「それでも後悔するよりは何倍もましかと」
あなた
「……」
彼女のまっすぐで力強い答えが、あなたの背中を押した。
あなた
「フラッシュ」
エイシンフラッシュ
「はい」
あなた
「今度の日曜日」
エイシンフラッシュ
「?」
あなた
「桜、見に行かないか」
彼女は少し驚く。
あなた
「ちょうど見頃らしい」
エイシンフラッシュ
「……行きます」
あなた
「ありがとう」
エイシンフラッシュ
「こちらこそ」
二人はまだ知らない。
そのお花見の日。
満開の桜の下で、長かった友人関係が終わり、2人が恋人になることを。
そして、エイシンフラッシュが人生で初めて、計画も分析も忘れて涙ぐむほど幸せな瞬間を迎えることを。