第4章 初めての休日の約束
雨の日から数日後の昼休み。いつもの中庭。
あなた
「よし」
エイシンフラッシュ
「?」
あなた
「決めた」
エイシンフラッシュ
「何をでしょう」
あなた
「今週末暇?」
彼女の動きが、完全に止まった。
エイシンフラッシュ
「……はい?」
あなた
「暇?」
エイシンフラッシュ
「意味は理解しています」
あなた
「じゃあ答えを」
彼女は少し考える。
エイシンフラッシュ
「午後であれば」
あなた
「よし」
エイシンフラッシュ
「?」
あなた
「出掛けよう」
⸻
彼女は今のあなたの言葉を理解するのに数秒要する
エイシンフラッシュ
「……私とですか?」
あなた
「他に誰がいる」
エイシンフラッシュ
「なぜ私なのでしょう」
あなた
「なぜ?」
エイシンフラッシュ
「はい」
あなたは少し考えた。
あなた
「楽しいから?」
エイシンフラッシュ
「疑問形ですね」
あなた
「楽しいから」
⸻
今度ははっきりと言い直す。
あなた
「話してて面白いし」
エイシンフラッシュ
「……」
あなた
「嫌?」
彼女は慌てたように、首を横に振った。
エイシンフラッシュ
「そうではありません」
あなた
「じゃあ決まりだね」
エイシンフラッシュ
「少々待ってください」
あなた
「うん?」
エイシンフラッシュ
「どこへ行くのですか」
あなた
「まだ決めてない」
エイシンフラッシュ
「決めていない?」
あなた
「うん」
エイシンフラッシュ
「……」
あなた
「?」
エイシンフラッシュ
「計画性がありません」
⸻
あなた
「今から2人で考えるつもりだったんだよ」
彼女は頭を押さえた。
エイシンフラッシュ
「なるほど」
あなた
「その反応やめて」
しかし、少しだけ彼女は笑っているようにみえた。
その日の放課後。
寮へ戻ったエイシンフラッシュは机へ向かっていたが、参考書を開いてもページが進まない。
理由は分かっていた。
"週末にあなたと出掛ける"
ただそれだけ。ただそれだけのはずなのに、彼女は妙に落ち着かなかった。
彼女はスケジュール帳を開く。
土曜日の午後の予定は、現時点で空白。
そこへ小さく『外出』と書き込む。
数秒後、さらに『○○と一緒に』と書き足した。
そして、なぜかその文字を見ていると、少しだけ笑みが浮かんだ。
エイシンフラッシュ
「……非効率です」
誰もいない部屋で呟く。
しかし、スケジュール帳に記入した文字を消そうとは思わなかった。
そして土曜日の待ち合わせ場所。
約束の時間の三十分前には、エイシンフラッシュは到着していた。
当然だった。
"予定時刻に余裕を持って着く" それが彼女の流儀だ。
だが、問題があった。
エイシンフラッシュ
「早すぎましたね」
あなたはまだ待ち合わせ場所に来ていない。
彼女は早く到着しすぎたのだ。
ベンチに座り、時計を見る。
まだ二十七分前。
エイシンフラッシュ
「……」
落ち着かない。
本を開いても内容が頭に入ってこない。
なぜだろうと不思議に思っていた時、
あなた
「早っ」
聞き慣れた声に、彼女は顔を上げる。
あなたがいた。
エイシンフラッシュ
「!」
あなた
「まだ二十分前だぞ」
エイシンフラッシュ
「あなたもです」
あなた
「楽しみだったから」
さらりと言う。
エイシンフラッシュ
「……」
胸が少しだけ跳ねた。
あなた
「フラッシュ?」
エイシンフラッシュ
「いえ」
慌てて立ち上がる。
エイシンフラッシュ
「行きましょう」
あなた
「話逸らした」
二人が向かったのは大型書店だった。
あなた
「本好き?」
エイシンフラッシュ
「好きです」
あなた
「やっぱり」
エイシンフラッシュ
「なぜでしょう」
あなた
「似合う」
彼女は少し困った顔になる。
エイシンフラッシュ
「それは褒め言葉ですか?」
あなた
「もちろん褒めてる」
エイシンフラッシュ
「最近そればかりですね」
あなた
「だって本当だし」
彼女は視線を逸らす。
彼女はまだ気付いていない。
褒められるたびに少し嬉しくなっていることを。
数時間後。
とあるカフェに2人で入り、窓際のテーブル席に向かい合って座る。
紅茶を飲むエイシンフラッシュ。
あなたは思った。
(やっぱり絵になる)
あなた
「似合うな」
エイシンフラッシュ
「何がでしょう」
あなた
「紅茶」
エイシンフラッシュ
「紅茶が似合うという概念は理解しかねます」
あなた
「東洋諸国には、昔からあるんだよ」
エイシンフラッシュ
「本当ですか!初耳です」
彼女は興味を持って、カバンからメモを取りだし、あなたの話を詳しく聞こうとする
あなた
「ごめん。適当に言った」
あなたは、彼女が真面目な性格だったことを忘れており、すぐに訂正する
彼女はため息をつき、メモをカバンにしまう。
しかし、似合うと褒められた彼女の少しだけ頬が赤いことに、あなたは気付いていなかった。
あなた
「さっきの書店は楽しかった?」
エイシンフラッシュ
「はい」
即答だった。
あなた
「おお」
エイシンフラッシュ
「予想以上に」
あなた
「本当?」
エイシンフラッシュ
「はい」
少し考える。
エイシンフラッシュ
「あなたといると」
あなた
「うん?」
エイシンフラッシュ
「予定通りにならないことが多いです」
あなた
「悪口?」
エイシンフラッシュ
「違います」
彼女は首を横に振る。
エイシンフラッシュ
「予想外が多いのです」
あなた
「へぇ」
エイシンフラッシュ
「ですが、悪くありません」
あなた
「それって君の中では、結構な高評価?」
エイシンフラッシュ
「ええ、かなり」
あなた
「やった」
彼女は少しだけ笑った。
その瞬間。
あなたは思った。
(最初に会った頃より、よく笑うようになったな)
そして、エイシンフラッシュも気付いていた。
最初に会った頃より、あなたと話す時間が楽しみになっていることに。
まだそれを恋とは呼べないが、確実に二人の距離は縮まり始めていた。
そして次第に、エイシンフラッシュは「昼休みにあなたが来ないと落ち着かない」ことを自覚し始める。
それが友人としての感情なのか、それとも別の感情なのか、
それはこの時点ではまだ彼女自身もよく分かっていなかった。